第5話 入学式とホームルーム
「~~~~♪」
パッヘルベルのカノンを歌いながら、髪を結う。
三つ編みおさげ。
ついで伊達眼鏡。
前髪はちょっと顔を隠す感じで。
そして、泰山高校の制服を。
黒のセーラー服だ。
男子は学ラン。
私は、女子なので、前者。
「よし」
モブな陰キャの出来上がりだ。
これなら高校では目立たないだろう。
「深窓の令嬢。文学少女」
「イモだぞ」
「お兄ちゃんは黙ってて」
キッ、と睨む。
「アンチ高校デビューかぁ」
「アンチ反乱軍とか、ダブル反乱軍みたいなノリだね」
「然りだ」
「送ってくれる?」
「構わんぞ」
そんなわけで、登校は車になった。
軽自動車。
生活。
お兄ちゃんは大学生で、免許も持っている。
自動車もバイクも。
いつもはソレで、大学に通っていた。
都会から少しズレた地域なので、足は必要だ。
私は度々便乗する。
お兄ちゃんもイヤな顔はしなかった。
「というか」
「うへへ。陽子とドライブ……」
若干キモかった。
どんだけシスコンだよって話。
そんなわけでこんなわけ。
私は、時間通りにこれから三年間お世話になる、泰山高校に辿り着く。
入学式だ。
祝辞に謝辞。
これは中略で良いだろう。
クラスは特進。
若干目立っていた。
もともと学則は厳しいと聞く。
黒の学ランとセーラー服も、その一環だ。
茶髪の私は、浮いていた。
けれど、それ以上に、
「…………」
別の女子が、浮いていた。
「うわお」
黒のセーラー服。
金髪の髪。
若干、卒業休みに見たパパ活の少女がよぎったけど、雰囲気が違う。
金髪の見た目に反してモブキャラだ。
眼鏡をかけていて、長い前髪で顔を隠している。
普通なら、ヘアピンとかで纏めるところだ。
今のモブキャラ陽子さんには言われたくないだろうけど。
それに私の茶髪も、存分に目立ってはいるしね。
「それじゃホームルーム始めるぞ」
特進クラスの担任と副担任が現われる。
「わお」
また驚く私。
副担任はキラキラしたイケメンだった。
ていうか凜ちゃんだった。
此方に気付くと、
「…………」
悪戯っぽく笑われた。
モブ眼鏡は、似合わないかな?
しばらく高校生活の是非を問われ、自己紹介と相成る。
私はスマートに挨拶した。
「どうも。有栖川陽子です。趣味は読書。特技は無し。よろしく御願いします」
端的に述べて、席に着く。
後ろの席の、金髪さん。
「……えと……春人=アンデルスです。……趣味は読書で……特技はありません。……それから……一応……男です」
おずおずと爆発物を炸裂させる。
さすがに私も吹いた。
金髪の美少女の愛らしさよ。
本当に男?
金髪ショートで、前髪と眼鏡で顔を隠している。
これは、他者のことを言えた義理では、ないけども。
それにしても……。
「では」
スッと私の後ろの席に戻るアンデルス。
ハーフなのだろう。
それなら金髪も頷ける。
かくいう私も茶髪なので、色合い的には目立っている。
地毛の辛い処よ。
他のクラスメイトは、全員黒色。
しばらくして、自己紹介は終わった。
副担任の凜ちゃんが、こっちにむかってウィンクした。
「後で話がある」
ということだろう。
どうせスマホで連絡してくるんだろうけど。
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