第8章 規制であるもの、規制でないもの

8-1 不毛な指摘

 さて、ここから先はいささか不毛な議論である。いや、すでにここまでの議論も十分不毛であったと思う方もいるかもしれない。が、ここから先の議論はより不毛である。


 というのも、ここから先の議論では、ゾーニングに、というか、表現の自由議論にありがちな誤解を解いていくからだ。その誤解は、極めて初歩的で、通常であれば誤解しようもないレベルの話である。


 が、この手の誤解は尽きず、議論が発生するたびに何度も何度も投げかけられることとなる。

 「はじめに」で述べたように、本論はネット上の議論で「使用」されることを前提としている。であれば、初歩的な誤解であっても、頻繁に登場するものであるならば、丁寧に論じておく必要があるだろう。そうすれば、もう二度と言葉を費やす手間はない。


 以降で扱う誤解は2つある。

 1つは、ゾーニングもまた規制であるというものである。後述するように、規制とは権力によってなされるものである。故に、ゾーニングであってもその命令主体が権力であれば規制であるという主張には一理ある。が、大抵の場合、ゾーニングは規制であると主張がなされる場面で言及されるゾーニングは権力が命令するものではなく、故に規制ではありえない。


 どころか、ネット上の議論では、民間人による抗議であるとか、単なる批判さえも規制であると主張する向きがある。当然これは誤りであることを、以降で論じる。


 もう1つの誤解は、規制にせよゾーニングにせよ、少しでも認めると全てが規制されるというものである。しかし、少なくとも本論におけるゾーニングであれば、「無限後退」ということはあり得ない。


 ではなぜ、そのような誤解が生じるのか。この点に関しては第9章で述べる。

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