4-3 間接的な性暴力表現

 間接的な性暴力表現とは、直接性暴力を描いたものではないが、扱いによっては性行為や性暴力に対する誤った信念を強化することとなり、直接的な性暴力表現と同じような機能を果たす可能性のあるものである。


 この最も典型的で、かつ争いのない例の1つは、電車内での痴漢を必ずといっていいほど冤罪であるかのように描くものである。実際には、電車内の痴漢の大半が冤罪であるという事実はなく、またそれを示す根拠もない。


 このような描写は、レイプが被害を訴える女性による捏造であるというレイプ神話を強化することになる。レイプ神話とは、性犯罪に関する誤った信念のことである。


 レイプ神話の強化という点でもう1つ例を挙げるとすれば、いわゆるラッキースケベ的な表現、つまり何らかのトラブルによって男性キャラクターが女性キャラクターと性的な接触を持つ表現もこれに該当するだろう。


 このような表現においては、大抵の場合、被害に見舞われた女性キャラクターは、男性キャラクターをさほど強く責めず軽く流す、あるいは少々恥ずかしがる程度で済まし、場合によっては喜ぶという反応を見せることもある。


 このような反応は、レイプ神話に典型的にみられる、女性はレイプを望んでいるとか、女性はレイプされるうちに感じるといった信念を強化することにつながりかねない。


 さらにもう1つ例を挙げれば、性行為において、男女が明白な同意を取らないままに好意に突入するような描写も問題がある。

 このような描写は、明白な同意を取るのはダサいであるとか、いやよいやよも好きのうちであるといったレイプ神話を強化しかねない。


 これらの表現は直接的に性暴力を描いているわけではない。また、公になりやすい一枚絵で表現されることも少ないので、ゾーニングの要求によって直ちに公から追放すべきであるというところまでは求められないかもしれない。


 だが、間接的に性暴力を助長する表現であることには変わりがない。そのため、表現された場所や内容によっては、明らかな性暴力表現と同様に批判の対象となりうる。

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