第3章 将来への人権侵害としての性暴力表現
3-1 性暴力表現の未来への侵害
前の章では、性暴力表現がもたらす「現在」の権利侵害について述べた。
この章では、性暴力表現がもたらしうる「未来」の権利侵害について述べる。
そもそも、未来の権利侵害とは何だろうか。それは、性暴力表現が、それを受容した者を性暴力へ走らせる可能性のことである。
詳しくは後で述べるが、心理学の知見はおおむね、性暴力表現が将来の加害行為について「限定的な」悪影響をもたらすことを示している。
ここで重要なのは、悪影響が「限定的」であるという点だ。これはつまり、少なくとも悪影響はあるが、性暴力表現を受容した者が全員性暴力に走るわけではないことを意味する。
もし仮に、性暴力表現の悪影響が甚大であり、受容した者が全員性暴力を犯すというのであれば、話は単純である。性暴力表現は速やかに全て焼かなければならない。ポルノは麻薬と同じように規制されるだろう。
逆に、何ら悪影響がない場合も話は単純だ。少なくとも、将来の悪影響を理由とした規制は一切不要ということになる。
だが、ここでは「限定的な」悪影響があるのである。つまり、最小限の制約という前提に立てば、角材を振り回す暴漢を目の前にした警官のような微妙さがある。なんの対処もしないというわけにはいかないが、やりすぎれば過剰な権利侵害となる。
本論では、まずポルノの悪影響に関する心理学的知見を概観し、限定的な悪影響があることを確認する。その次に、巷で言われている「ポルノが性犯罪を抑制した例」が全て、そうは解釈できないことを確認する。最後に、ポルノの悪影響からどのような対策が妥当なのかを論じる。
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