Schicksal-運命

Krieger

第1話

目の前で母が泣いている姿を見た時、初めての感情が溢れ、柊 佑斗(ひいらぎ ゆうと)の頬に涙が伝う。


初めてだった。

これまで身内の誰かが死ぬという哀しみを23歳になるまで経験せずにきた。


両親や姉の友人達が棺を囲み、哀しみに暮れているのを俺は隅で見守る。まだ、姉が死んだということを受け入れられていなかった。


棺の中には花や思い出の品が姉を飾っており、俺は本当の最後の別れの前に恐る恐る姉の頬を撫でる。



"……冷たい。"



人はこんなにもひんやりと冷たくなるのかと感じた瞬間、胸が締め付けられるように苦しくなり今まで抑えていた蓋が弾けるようにして涙がこぼれ落ちた。




もう、笑ってくれないのか。

もう、元気な声で呼んでくれないのか。






"姉は本当に死んだんだ。"










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Schicksal-運命 Krieger @bokunosekai

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