第42話 魔法の言葉
デートが終わって家に帰りついた。
夕食を食べ、お風呂に入る。
後は寝るだけなんだけど、何故か俺の部屋にジャスミンとリリアーネ嬢がいる。
「ぐはー! つっかれたぁー! 眠ーい!」
ジャスミンが俺のベッドにうつ伏せに寝転んで、枕に顔を押し付け、両足をバタバタさせている。
クンクンと匂いを嗅いでいるのは気のせいか?
「でも、今日はとても楽しかったです」
リリアーネ嬢はベッドの端に座っている。
二人とも可愛らしいネグリジェに身を包み、大胆に素肌を晒している。
腕とか素足もギリギリまで露わになっている。肉付きの良い綺麗な太ももが眩しい。
下着もチラチラと見えている。
お年頃の俺は魔法も使いつつ密かに眺めている。
ふむ。ジャスミンは清楚な白か。リリアーネ嬢は…なんと! 過激な黒!
貴族の令嬢が異性に肌や下着を見せたらダメなんだけどなぁ。
でも、二人ともとても可愛らしいです。心にグッときます。眼福です!
「楽しかったのならよかったけど、二人ともなんで俺の部屋にいるの?」
「えっ? ここで寝るからだけど」
「デートは夜一緒に寝るまでがデートではないのですか?」
ジャスミンとリリアーネ嬢がキョトンと首をかしげている。
リリアーネ嬢はわかるけど、ジャスミンまで!?
これは本気で思っている様子だ。
俺は思わず頭を抱えた。
「………それってどこの誰に教えてもらったんだ?」
「「お母様と家の侍女!」です!」
う~ん。間違いではないけど、俺と二人の関係なら間違いだと思う。
一応婚約者でも何でもないからね? そこのところちゃんとわかっている?
外堀をもう埋められているけどさ!
ちっ! 一国の王が二人の味方だと外堀があっさりと埋まってしまう!
今度復讐しておこう。
ジャスミンが枕から少しだけ顔をのぞかせ、ボソッと呟いた。
「据え膳食わぬは男の恥。それでも食わぬは女の恥」
「ジャスミン様? それはどういう意味ですか?」
「んっ? わかる人にはわかる秘密の言葉」
真っ赤になりながらジャスミンは言葉を濁す。
ちっ! 全力で狙ってきてるな! 既成事実狙いか!
ここで俺はジャスミンを抱かなかったら俺以上にジャスミンは恥を受ける。
自分は覚悟を決めたのに、それでも男に抱かれない。それは女の魅力がないと同義だ。
《
呪われた女とか、服で隠れた部分は焼け爛れているとか、子供が作れない身体とか、ありもしない噂を立てられ、一生女として扱われなくなるだろう。
貴族の悪しき風習だ。
ジャスミンは裏で手を回していたな? 俺の部屋に使い魔が誰もいないし!
あいつら面白いことが大好きだからなぁ。密かにジャスミンも気に入っているし。
「もう逃げ場はないわよ」
ジャスミンが両足をバタバタさせて、枕で顔を隠しながら言った。耳まで真っ赤になっている。
「これでいいのか? ムードとか考えなくて」
「もうなりふり構っていられないのよ! どんな手でも使ってやるわ!」
「開き直ったな」
「もう! やっぱり私の気持ちを知っていたのね! 知っていて気づかないフリをしていたのね! このバカ! アホ! 死ね!」
ジャスミンがベッドの上で暴れている。脚だけじゃなくて腕もバタバタさせている。
いいんですか? 白い下着が見えていますよ?
はぁ…もう避けられないのか? このまま二人と……。
俺が諦めかけたその時、バタンッと勢いよく寝室の扉が開かれた。
「シラン君! お洋服出来たよ! ついでに下着も!」
両手に服を大量に持った十代後半の少女が勢いよく入ってきた。
胸は残念な黒と赤のメッシュの髪の少女が両手いっぱいの服をベッドの上にドンッと置いた。
ジャスミンは慌ててベッドから起き上がる。
赤黒メッシュの少女は、ふぅー、と息を吐いて額を拭った。
俺は思わず嬉しくなって少女にサムズアップする。
「ナイスタイミングだ!」
「シラン君、何がナイスタイミングなの? あれっ? ジャスミンじゃん! なんでシラン君のベッドの上にいるの?」
「えっ? えっ? なんで私の名前を……」
「なんでってシラン君のお気に入りだから。ベッドの上にいるってことはシラン君の女になった? ついにやっと? いやーおめでとー! ボクたちもいつ関係を持つか、賭けながらずっと待ってたよ! 唆してもシラン君って意外とヘタレでさ! でも、そうかそうか! とうとう結ばれたか! シラン君のハーレムへようこそ!」
いろいろと誤解した赤黒メッシュの少女は、ジャスミンの背中を馴れ馴れしく叩いている。
ジャスミンは痛みで涙目だ。でも、頬を少し朱に染めて恥ずかしそうにしている。
少女はベッドに座るリリアーネ嬢に気づいてじっと見つめる。
「それで? 可愛らしいキミはどちら様? シラン君が拾ってきた女の子?」
「あっ、初めまして。シラン様のお屋敷に引っ越してきましたリリアーネ・ヴェリタスと申します」
「おぉ! 《
赤黒メッシュの少女が差し出した手をリリアーネ嬢は反射的に握って握手する。
少女は瞳をキラキラさせながら、握った手をブンブン振っている。
「リリアーネは初めてだし、何気にジャスミンとも顔を合わせるのは初めてか。では、自己紹介を。ボクはネア。シラン君の女で使い魔さ。趣味で服をデザインして作っているよ。よろしく!」
そう言うと、ネアはニコッと微笑んだ。
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