第8話 朝起きたら

 

 花のような甘い香りがして俺は目が覚めた。

 ベッドの中が温かい。

 そして、いつまでも抱きしめていたい抱き枕が気持ちいい。


 ………………って、抱き枕? 俺、抱き枕は持っていないんだけど。


「まさか………なんで毎日毎日俺のベッドにいるんだ? ソマリア、ハンナ!」


 俺が両手で腕枕をして、身体に抱きついている二人に思わずため息が出る。

 毎日毎日よく潜り込んでくるなぁ。感心というか呆れるというか…。

 まあ、美少女二人に抱きつかれているのはとても嬉しいけどね。


「ハンナは……やっぱり下着姿だし。今日は黒か。うん、綺麗だ」


「お兄様? 何が綺麗なんでしょうか?」


「ひぃっ!?」


 ものすっごく低くて冷たい声が聞こえた。

 冷たい光を浮かべた青色の瞳と視線が合った。

 いつの間にか妹のソマリアが起きていたようだ。

 俺の身体がカタカタと震え始める。これは恐怖か?


「お兄様? まさかその女が綺麗だとは言いませんよね?」


 薄いピンク色の透け透けのネグリジェ姿のソマリアさんがお怒りだ。

 ちなみに、下着は薄い水色のようだ。


「あっと……いやっ……これはその…」


 俺の妹のソマリアと俺の専属メイドのハンナは仲が悪い。犬猿の仲だ。

 何かあれば二人は喧嘩する。そして、俺は巻き込まれる。


 ソマリアが怒っているから、どうやって誤魔化そうか考える。

 でも、完全に起ききっていない寝ぼけた頭が上手く働かず、いい言葉を思いつかない。


 その時、ソマリアとは反対側から笑い声が聞こえた。


「ふふふっ。ご主人様は私のことを綺麗だとおっしゃられたんですよ。ほらっ、こんなに興奮されて…えっちなご主人様ですね」


 ハンナも起きていたのか。起きて聞かれていたのか! 恥ずかしい。

 って、ハンナさん? うっとりと大人っぽく微笑んでソマリアを挑発しないでください。

 それと、朝の生理現象が起きている敏感なところを触らないでください!


 ハンナに挑発されたソマリアの髪がぶわっと怒りで逆立つ。

 透け透けのネグリジェを一気に脱ぎ捨てた。

 そして、更に下着に手をかけて脱ぎ始める。

 意外に豊かな胸が露わになる。

 ピンク色の可愛らしい蕾がツンっと立っている。


「えっちなお兄様? 私の身体を召し上がりませんか?」


「あらっ? 私のほうが雌ブ……ソマリア様よりも胸も大きくて、柔らかさも張りも感度もいいですよ? 形もいいですし、私をお召し上がりください」


 いつの間にかハンナもブラを外していた。

 ハンナの胸が綺麗だ。

 ふむ、大きさとかはソマリアと変わらないような気がするけど…。


「チッ! この泥棒猫め……あら、でも私のほうがお尻の形は綺麗ですよ」


 ソマリアがハンナにガンを飛ばし、今度はショーツを脱ぎ始めた。


「チッ! 雌ブタめ……ご主人様にお尻を振りやがって」


 ハンナもソマリアにガンを飛ばし、対抗してショーツを脱ぎ始める。

 全裸になったソマリアとハンナはベッドの上で睨み合う。

 乙女がしてはいけない顔で睨み合っている。

 まあ、二人を引き合わせるとよく見る顔だな。

 二人の可愛い顔が台無しだ。


 というか、二人とも身体を隠してくれませんかね?

 イケナイところまで見えてしまっているのですが。


「メイドが主人のベッドに潜り込むとは良い度胸ですね?」


「あらっ? ご主人様はお許しになってますよ。ご主人様は私を抱きしめることが大好きですからね。昨日の夕食の前も後も超可愛い私のことを抱きしめてくださいましたよ」


「くっ! でも、掃除も料理もできないメイドはメイドと言えるのですか? ただの極潰しじゃありませんか」


「くっ! 極潰しでもいいのです! 私はご主人様の性処理用愛玩メイドですから!」


 ソマリアとハンナがキッと睨み合う。


「淫乱!」


「ブラコン!」


「雌ネコ!」


「雌ブタ!」


「役立たず!」


「脳筋!」


「乳デカ女!」


「デカ尻女!」


「「あ゛あ゛んっ?」」


 二人が両手を組み合って、おでこをぶつけて睨み合う。

 そして、ベッドに倒れ込んだ。裸の美少女二人がベッドの上で激しく絡み合う。

 ぷるんぷるんっと胸が跳ね、お尻がふりふりと動き、イケナイところまでバッチリ見えている。

 眼福です。


 でも、毎日同じことをして飽きないのかな?

 俺は素晴らしい光景を見れて毎朝嬉しいけど。


 俺は喧嘩している妹と専属メイドを置き去りにしてベッドを降りる。

 欠伸をしながら着替えて顔を洗いに行く。


「二人とも、怪我しないようにねー!」


「「はーい!」」


 喧嘩を一時中断して仲良く返事をしたソマリアとハンナ。

 返事が同時だったことで二人は顔を見合わせ、再び喧嘩を始める。

 仲がいいのか悪いのかわからない。

 時々、二人仲良く女子会してるし、喧嘩するほど仲がいいってやつか。


 顔を洗った俺は緑茶の準備を始める。

 毎朝起きたらお茶を飲むことが俺の日課になっているのだ。


 熱いお茶。リラックスする。

 ズズズッ。あぁ~美味しいなぁ~。素晴らしい光景だなぁ。

 俺はしばらく、ベッドの上で絡み合う裸の美少女を眺めながら朝のティータイムを過ごしていた。


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