代理謝罪の礼
代理謝罪に村崎が挑み、結局依頼人と謝罪相手が直接二人で話してからおよそ一週間して依頼人が事務所に顔を出した。しかし顔を見せたのは依頼人だけではなかった、謝罪相手もである。
話を聞いてみると“介護”という名の元で孫に支配されているような生活で村崎が帰ってから二人で話をしているときに当の孫が帰ってきてその状況を見て“支配”ができないことを悟ったという。そのあとからは身体が動く範囲で以前よりも自由な行動ができるようになったそうだ。
「代理ではあったけどこの“謝罪”というもののお陰で私は今まで抱えていた心の重荷を解消できて気持ちが楽になったしこうやって二人で来れるようになったし嬉しい限りです。ありがとうございました。」
形式的なこともあるとは思うが、代理謝罪をした本人ではなくこの会社のトップの小西に頭を下げるのである。
「いえいえ、直接この解消に取り組んでくれたのは村崎なので私は特に何もしてませんし。」
頭を下げられた小西は実際に代理謝罪をした村崎を立てて会社としての威厳を保とうとしているのである。その村崎も村崎で自分はすることをしたまでだと謙遜していくのである。
実際のところ人と人の関係性が悪くなっているのを誰かの手を借りてでもよいから改善して良い方向に持っていこうという思いが会社の代表の小西にあり、佐鳥や村崎もその思いを理解しているのでただ関係を良好にするのに使われたいわば一種の手段であるくらいにしか思っていないのである。
「私としてもこれがなかったら今こうも簡単に外出できなかっただろうし、受ける側だったけど助けられた部分もあって感謝しなくてはと思っています。」
依頼人からの感謝のみならず、謝罪を受ける側の謝罪相手からも感謝を受けるということは滅多にあり得ない。謝罪相手からするとそこまで思っていないのに大掛かりなことをされて迷惑だ、という場合が多いからである。
しかし今回はどちらにも代理謝罪で恩恵があったのでこういうどちらからも感謝を受けるという展開になっているのだろう。
村崎にとっての初めての代理謝罪、二人から感謝されたということを鑑みると大成功と言っても良いのではないだろうか。
小西や佐鳥、村崎の代理謝罪はまだまだ続いていくのである。
㈱代理謝罪 キザなRye @yosukew1616
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