謝罪相手の調査~進展~
村崎は謝罪相手の家の前に未だにいた。それほど長い時間いるのに適している気温とは言い難い感じだったが、それに屈せず家の前に留まっているのである。村崎の顔はこの天候に対して苦しいというようには見えず逆に楽しんでいるような、前に続く道に対して自分から進み出したような輝いた顔に見えた。これは若いから、という理由よりは初めての代理謝罪をどうしても成功させたいんだ、という思いがこれに影響をもたらしている。
村崎に謝罪相手の家の人を調べてほしいと言われた佐鳥は村崎から報告を受けつつ、その情報や佐鳥が自分で調べたことをもとに情報を整理してさらに考察をしていた。
今集まっている情報からは謝罪相手の方以外に若い女性の人がいるということはわかった。ただその女性と謝罪相手の関係性はまだ見えてきていないし、その女性が家に住んでいるのか出入りしているだけなのかどちらなのかについてもまだ明らかになっていない。
謝罪相手が七十を越えていてその女性の推定年齢は二十代から三十代で子供にしては若すぎる。親戚だとしても孫か従姪孫か再従兄弟か姪孫かその辺りに当たるのが適切であろうと考えられる。
正直に言って従姪孫や再従兄弟、姪孫は自分からとって遠すぎる親戚で周りとの関係が薄くなっている今の状況から考えて可能性は薄いだろう。とすると、孫というのが親戚であると仮定すると唯一成り立つ関係性である。
親戚でないと仮定すると話が大きく広がってしまう。ただその中でも謝罪相手の生活状況から考えて介護人であると考えて良いと思う。それが住み付きで何かしてくれている人なのか決まった時間のみの介護なのかは分かったものではないが介護関連であると思って間違いない。
親戚でもこの介護というワードはキーであることは間違いない。ここまでの情報が掴めれば使いたいものとしてはそれほど問題がない。
それほど多くはない情報からここまで考えて答えを導ける佐鳥の思考力・推理力は人並みを越えている。
この謝罪相手の家にいる人の情報は佐鳥から村崎に渡った。その情報を得た村崎は
「ありがとうございます。介護が関係ありそうなんですね。もう少し情報が欲しくない、と言えば嘘になりますが二歩も三歩も進めました。ありがとうございます。」
と何度何度も感謝の言葉を述べて真面目な顔になってこのあとの代理謝罪の計画が頭の中で立てられ始めていた。介護関係者を装うという方向に頭の中で持っていかれていた。
村崎はこの考えを佐鳥に伝え、一度戻ってきて再び話をしてその中で今後のことを決めていこうということでまとまった。
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