第3章-7 男の子

「本当に!?なんて書いてあるの?」

「ごめん、これに似た文字を見たことがあることは確かだけれど、憶えているわけではないんだ。確か、昔読んだ本の資料欄に載っていたような気がする。」

「とんでもない記憶力だね。その本は今どこに?」

「多分僕のおじいちゃんの家にあると思う。昔よく家に忍び込んでは本を読み漁っていたんだ。」

これはだいぶ重要な情報だ!その本を見つけ、文字を解読することができれば、謎の解明に大きな一手をさすことになる!

「その本を見せてもらうことってできる?」

「申し訳ないけど、それは多分できないと思う。」

「どうして?」

「昔、僕がおじいちゃんの家で本を読んでいたとき、かなり日が暮れてきていたからもうそろそろ家に帰りなさいって言われたことがあるんだ、まぁしょっちゅうだったけどね。でも、そのとき読んでいた本はどうしても続きが読みたくて、おじいちゃんに無断で家に持って帰っちゃったんだ。ところがその帰り道、不幸なことにどぶに落ちてしまって、その時わきに抱えていた本を完全に汚してしまってね。そのことがおじいちゃんにばれると、それはそれは鬼の形相で、二度と家から本を持ち出すなって叱られちゃったよ。あの時ばかりは、いつも優しいおじいちゃんが悪魔に見えたよ。そんなわけで一切の本の持ち出しを禁止されちゃったんだ。」

「そうなんだ、なら仕方ないね。」

「そこで僕から提案があるんだけど、この土日、僕にそれを預けてくれないかな。二日間の間に、本を見つけて解読してくるよ。君たちに恩返しの意も込めて。そのために細かいところまで見たいからさ。」

今までずっとそばにあったものを手放すのは、一生懸命育てたポケモンを交換するくらい不安ではあったが、彼なら信頼できるし、何より謎の解明につながるならそれ以上のことはない。

「分かった。いつ頃返せるかな?」

「月曜日のうちに君の机の中に入れておくよ。わかったことがあったら直接ではなく、何かしらのメモを一緒に入れておく。しゃべってるのを見られたらあれだからね。」

「やり方は石井君に任せるよ。でもいつか、周りの目を気にせずに話せるようになれたらいいね。」

「凪もそう思うよ。」

「そうだね、いつか、ね。」

「まぁ~たそんな意味深な言い方する~!」

「ハハハ、ごめんごめん。」

「またってどういうこと?」

「さっきも石井君がね...」

その後、三人で日が暮れるまで話し合った。男の子とこんなに楽しく話したのは、何年振りかわからないほどだった。私はきっと高校に入って、人と関わることの楽しさを忘れていたのかもしれない。それが凪ちゃんや石井君と出会って思い出された。だから二人は私の恩人であり、親友でもある。この瞬間を忘れないようにしよう。

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