第3章-6 男の子

「二人がまるで姉妹みたいだねって話をしてたんだ。」

「ついこの前までお互い独りぼっちだったのに、今では姉妹みたいにみられるって、なんだか不思議じゃない?」

「確かにそうだね。いっそ凪ちゃん、妹になっちゃう?」

「なる!」

可愛らしい返事を聞けてうれしい反面、現実性のない願いであることに気づかされ悲しくなってしまった。でも、友達だからこそ感じられることもあるのかな。そう思いつつ、頭の中で凪ちゃんとの出会いを回想していたところ、一つ良い案が思い浮かんだ。これが叶えば、私の長きにわたる悩みが解決されるかもしれない。賭けてみよう。

「そうだ、君の名前なんていうの?」

「僕は石井和輝、1組だよ。」

「1組なんだ、どうりで勉強が得意なわけだ。そんな石井君に一つ聞きたいことがあるんだけど。」

「なんでもどうぞ。」

私はクローゼットを開け、一番お気に入りの服のポケットに手を突っ込むと、その中から小さなカギを取り出し、勉強机の引き出しをそのカギで開けた。そしてその中から、今なお私を悩ませ続けているこの扉を彼と凪ちゃんの前に置いて見せた。

「あ、これ!あの時の!」

「そ、あの時チンピラに投げられたやつ。これ、私のおじいちゃんの家にあった遺品なんだけど、なんか気になっちゃって親に内緒で持ち出したの。そんで石井君に聞きたいのはこのお札に書いてある文字なんだけど、なんて書いてあるか分かる?」

「ちょっとよく見せて。」

そういって彼は扉を持ち上げてまじまじと見た。が、答えが返ってくるどころか、扉に顔を近づけたままぴたりと止まって動かない。

「どうしたの?」

そう聞くと彼はハッと我に返ったようにこちらを向いた。

「ごめんごめん、何でもないよ。それよりこのお札、破れちゃったけど大丈夫かな?」

私は目を疑った。あれだけ引っぺがそうとしてもびくともしなかったお札が、いとも簡単に破れてしまっていたのだ。

「どうやって破いたの!?呪文でも唱えた!?」

「いや、僕がこれを持った瞬間に破れたんだ。特に何をしたってわけでもないよ。」

私は彼から扉を手渡されると、まじまじとそのお札を観察した。お札はチンピラに絡まれた時みたいに剥がれているわけではなく、確かに縦に真っ二つに破れている。でも、いったいどうして?

「その文字、見覚えがあるな。」

彼はボソっとつぶやいた。お札が破れたことも衝撃だったが、明確な答えが期待できる彼の発言の方が衝撃的だった。

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