第3章-5 男の子
そう言って男の子は頭を下げた。ここまで執拗にお願いされては、こちらも断るに断れない空気を感じる。ここはいっそのことこちらが折れてしまおう。
「分かったよ。私たちは月曜日、学校には来ない。凪ちゃんもそれでいい?」
「うん…」
凪ちゃんは悔しそうな顔をしていた。その気持ちは十分にわかる。
それを聞いて、男の子はさっきまでの険しい表情から一変して、柔らかく笑いながらお礼を述べた。
「本当にありがとう。じゃ、帰ろうか。」
その言葉を合図に私たちは各々カバンを持ち、階段を下りていたとき、男の子は鞄の中身をゴソゴソと漁っていた。
「あれ?僕の家の鍵がない。」
「トイレにはなかったよね。教室かな?」
「いや、教室を出たときにはあったはずなんだけど・・・参ったなぁ。」
「大丈夫なの?家入れなくなっちゃうんじゃ?」
「母さんがもう一つ持ってるから大丈夫だよ。」
「でも、20時まで帰ってこないんでしょ?私の家で待ってる?」
「お邪魔していいの?ご家族に迷惑かからないかな?」
「迷惑なんてとんでもないよ。しかも今日、お母さん帰り遅くなるって言ってたし、気を遣うこともないよ。」
「そっか、じゃあちょっとだけお邪魔しようかな。」
「凪ちゃんも来る?」
「いいの?じゃあ行っちゃおうかな。初めてだし緊張するな~。」
そして私たちは階段を下り、学校の玄関を抜け、帰路についた。
「お邪魔します。」
およそ20分ほどかけて私の家に着いた。
「ごめんね、そんなに広くはないけど。」
二人を部屋に入れた後に内心で、部屋狭いな、と思われたくなくて一応の保険をうっておいた。でも二人の反応を見るに、そんなことは特に思っていそうになかった。
「お茶持ってくるよ。ちょっと待っててね。」
そういって私はいったん部屋を後にした。
「君、名前はなんていうの?」
「小鳥遊凪って言います。菜緒ちゃんとは同じクラスで、最近仲良くなったの。菜緒ちゃんすごいんだよ!見た目がいかつい男の子に向かって物怖じしないで立ち向かえるんだもん。尊敬しちゃうよ。」
「そっか、強い人なんだね。じゃあ小鳥遊さんにとってお姉さんみたいな感じだね。まるで姉妹みたい。」
「凪、お姉ちゃんいないからなんか不思議な感じ。あんなお姉ちゃんが欲しかったなぁ。」
「きっとこれからも一緒にいれるよ。きっとね。」
「なぁにその意味深な言い方~。」
ガチャ。
「お待たせー。何話してたの?」
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