第2章-4 小鳥遊 凪
もう学校に用はないからさっさと帰って、あの子に話す内容をじっくり考えようと下駄箱に差し掛かった時、私のクラスの下駄箱付近から男女の会話が聞こえてきた。
男の方は2人いるらしい。
「なぁ、あんた可愛い顔してんじゃん。これからカラオケ行かない?おれめっちゃ歌うまいからマジで。ねぇ行こうよ」
「すみません、これから用事があるので」
「大丈夫だって、俺がおうちに電話かけとくから。ほら、番号教えて?」
「すみません、通れないので道をあけてくれますか?」
「行くっていうまで帰さないよ?」
ま~たナンパか。別にナンパはいいけど、私の下駄箱付近でやられると靴を変えようと近づいたときに、一瞬無言になって私の方を向いてくるのがどうも気に食わない。やるなら堂々とやればいいのに、根性なし。いつものように知らんぷりして靴を履き替えよう。そう思い角を曲がる。でも、私には素通りできない理由があった。
「ねぇ、その子、行かないって言ってるじゃん。帰してあげなよ」
私は何をしているんだろう。こんなチンピラまがいの奴らに自ら声を上げるなんて。三年間、音沙汰のない平穏な日々を送るはずだったのに。
「なに、誰お前。邪魔なんだけど」
「だから、帰してあげなって言ってんの。その子、困ってるでしょ」
私は助けられたから、私を助けてくれたから、私に勇気をくれたから。
「俺、お前に用ないんだけど、黙っててくれる?」
「困ってるでしょその子。あんたがしつこすぎるから」
今度は私が、勇気を与える番!
「そんなこたぁねぇよなぁ?かわいこちゃん」
「...だ」
「ん?」
「いやだ!」
よし!よく言った!
「チッ、くそが。おいチビ、どうしてくれんだ、あ?」
そう言いながら私の方に男の1人が近づいてくる。そして、私のリュックを強引に奪い取り、ファスナーを勢い良く開ける。
「どうせガリ勉だろ?お前。しょうもねぇ人生歩んでんだろ?そんなしょうもない奴には教科書なんて必要ねえよなぁ?」
そう言いながら私のリュックをひっくり返して、中身を地面にたたきつけるように吐き出させた。
「やめて!どうしてそんなことするの!サイッテー!」
「あぁ、可愛い子にそんなこと言われたら傷ついちゃうなぁ。あ?なんだこれ」
そう言って男は教科書の中に紛れていた扉を手に取った。
「お前こんな趣味もあんのか。ご立派な芸術じゃないか。俺が壊すまでを含めて」
そう言って男は扉を思い切り地面に投げた。
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