第2章-3 小鳥遊 凪
今日はなんて良い一日なんだろう。階段を下りる動作がこんなに軽快なんて、自分でも信じられない。今日のことは一生の思い出にしよう。いや、今日を踏切台にして、明日以降を宝物にしてやろう。今の私には、それだけの覚悟がある!あの子に話す話題はどうしようかな。いつも私より後ろの席だから何やってるかわかんないんだよなぁ。もし、嫌われちゃったらどうしよう。
「好きな本とかあるの?」
「んなもん読まねぇよ。」
「好きな食べ物は?」
「タメ口聞いてんじゃねぇ。」
「数学教えてくれない?」
「ggrks」
とか言われたらどうしよー。そんなことありえないってわかっていても、このチャンスを逃したくないから、いろんなシチュエーションを考えてしまう。自分の脳内でいろんなシミュレーションをしながら、日本史の先生に質問するために職員室に向かう。
「失礼します。大矢先生いらっしゃいますか~?」
「ほ~いほいほいほい、なんですかな小娘」
でた、癖強教師。
「あの、質問があった来たんですけど、これ何かわかります?」
「ナニコレ、びっくりドンキーのメニュー表?ダメでしょそんなの持って帰ってきちゃぁ」
「いや違います(聞く相手を間違えたかな)。おふざけなしでお願いします」
「う~ん、こんなもの見たこともないねぇ。だいぶ古い代物のようだけど」
「そうなんです、このお札に書かれている文字だけでも解読できませんか?」
「ん~、癖が強すぎて読めないなぁ」
あなたも一緒ですけどね。
「之扉、てのはわかるんだけどなぁ。でも多分だが、之より上は二文字だと思うぞ?」
これは有力情報か?いずれにしてもこの人と一緒にいるのは疲れるからもう切り上げよう。
「なるほど、ありがとうございました。では。」
「もう帰るのか?まぁ私の話を聞き給え。日本史はいいぞぉ~。なんせ今の日本を作ってきた先人たちの知恵の集大成が...」
その先は聞かずに職員室を出た。もうあの人に絡むのはやめよう。だが、文字数が絞れたのはとても大きな一歩であることは間違いない。確定ではないが、候補として考慮すべきだろう。教師にわからなかったということは、教科書に載るほど有名なものではないということ。次はだれに訊こうか。古い文字といえば...お坊さん?勝手なイメージでしかないけど。
壁を破ったと思えばまた次の壁にぶち当たる。それが苦でもあり、楽しくもある。たまにはこんなのも悪くないかも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます