第2章-2 小鳥遊 凪

 学校は、始まってしまうとそこまで長くは感じない。私自身、勉強は嫌いじゃない。オールマイティーなわけではないけど、化学と生物はだれにも負けない自信がある。中学時代はちんぷんかんぷんだったけど、専門性を増していくにつれ、とても楽しく感じるようになった。1時間目が始まり、6時間目が終わるまでは体感で3時間ほど。全然つらくもなんともない、むしろ楽しい。周りのクラスメイトが音を上げているところを見るのもまた一興。休み時間は友達なんかいなくても、片っ端から小説を読むことで暇をつぶせる。それが習慣になってしまったからか、趣味は読書になった。学校は苦手だけど、それなりに充実はしている。そんなこんなで今日も授業が終わった。1時間目の準備をしている途中で、リュックの中に扉を入れっぱなしにしているの発見した。故意ではないが、先生に聞くときに実物を見せることができるから好都合かもしれない。今日も楽しい一日だった。


「今日もお疲れ~、んじゃめんどいから号令は無しね。さいなら~。掃除忘れるなよ~。」

ただ、掃除当番となれば話は別だ。掃除はめんどくさい。これは間違いない。掃除当番の班は座席の縦列で構成される。だいたい四~五人くらい。その中に可愛らしいあの子もいる。それが唯一の救いだった。

私はだれともしゃべらないわけではない。しゃべりかけられたらちゃんと応える。でも、彼女はあまり自分から話しかけるタイプではなさそうなのでしゃべるきっかけを作れずにいる。掃除の時間なんかは典型的な話しかけるチャンスだとは思う。ほんの些細なことでも...しかし勇気が出ない。どうしたものか。そんなことを考えているうちに掃除は終わった。ごみ捨てはじゃんけんの末、その女の子になった。あぁ、また今日もしゃべりかけられなかったな、と後悔していると、彼女は優しく微笑みながら私の方を向いて

「じゃあね、バイバイ」

と、顔を覗き込むようにして手を振りながら別れを告げ、歩いて行った。今の私の顔はおそらく人生で一番紅潮しているだろう。まさか、向こうから挨拶してくれるなんて。急な刺激によって、私が脳内で思っていたことは一瞬にして書き換えられてしまった。五割は感謝の気持ちに。もう五割は可愛い、とにかく可愛かった。明日必ずしゃべりかけよう。そう思って、しばらく余韻に浸ってから、軽い足取りで教室を後にした。

 

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