第1章-3 扉

 例のごとく、段ボールの中に入っているものを見ようとしたが、段ボールは2つともガムテープで閉じられていて、開けるわけにはいかなかった。ちょっと不満に思いながらもひょいと持ち上げると、下に積んでいた方の段ボールの底のガムテープの強度が甘かったのか、ふたが開いて中に入っていたものが落ちた。それなりに重いものが入っていたみたいで、ドンと低い音が響いた。落ちたのはだいたい横幅30cm、縦幅60cm、厚さ5cmくらいの木造の額縁のようなもの。まずいと思い、損傷がないか確かめようとそれを拾い上げて床に接触した面を見た。傷はなく、ほっとしたが、何より気になるのはその見た目。私が見ていたのは裏側だったようで表側から見れば、まるで扉のようなものだとわかった。さらにそれにはお札が一つ貼ってあり、そのお札には大きな文字で

”之扉”

と書いてあるのがわかる。「之」より上にも何文字か書いてあるけれど、字の癖が強すぎて解読が不可能。昔の文字かもしれない。これって何かを封印してあるのかな。お札って何かを封印するときに使うんじゃないのか、となけなしの知識で考察する。今まで見てきたものとは違い、なぜかそれに強く興味がある。この謎の物体のことを解き明かしてみたい。

まず、お札に「扉」と書かれている以上、扉としての機能があるはず。でも扉を開けるようなハンドルやレバーはない。それ以前に、扉の正面にはほとんどを覆い隠すくらいのサイズのお札が貼ってある。お札の上だけが止められているわけではなく、お札全体がぴったりとくっついている。破るしか方法は無いのかな。でもそんなことできないよね。う~ん。

「菜緒ー、結構かかってるねー、手伝おうかー?」

「うん、大きいの下ろすから来てー」

そんなことは後、先にやることをやらなきゃ。


 その後、お母さんに手伝ってもらい、大きな段ボールを下した。扉のことについてお母さんにきこうとしたけど、勝手に梱包を解いたことを怒られるかもしれないと思い、結局きかなかった。遺品整理は終わり、家に戻ると、晩御飯を食べ、お風呂に入り、十分に髪を乾かした後、自分の部屋に戻り、鍵をかける。おじいちゃん家に行ったのがちょうど学校帰りだったことも幸いして、いつも学校で使っているリュックに扉を入れて、誰にもバレることなく持ち出すことができた。興味のあることにひたすら没頭するのは昔からのこと。もしや、これは超貴重な物だったりして?

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