ウノ、ドス、トレス。

Fumi

ウノ、ドス、トレス

船乗りだった僕の祖父は若い頃世界各国をその船で何日も、何ヶ月も何年も飛び回っていたらしい。

田舎の家にはどこかの国の変わったお面や、高価そうな瓶に入ったお酒、大きな象が飛び出している絵画などが飾ってある。


「どこが楽しかった?」

「どこも面白かったな」

「言葉とか喋れるの?」

「喋れるよ・・ウノ、ドス、トレス、クアトロ・・」


とっても長生きしてくれて、震えながらなんとか病室のカーテンを抜けた先のトイレまでしか歩けなくなってしまった祖父に、東京から会いにいく。

そうして会いに行った祖父と話すたびにいつか自分も全くみたことがない景色に出会ってみたくなる。

知らない世界は怖いし、変なお面が欲しいわけでもないけれどこんなにも大切に心に残すことができるのなら・・と。

”別に言葉なんて喋れなくても大丈夫かな、じいちゃんも喋れてなかったし”

そんなことをアスファルトから離れていく窓の外を見ながらぼんやり考えている。

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ウノ、ドス、トレス。 Fumi @tadafumi_n

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