第412話 邪神王の中
◇◇
アニム王が神聖術師たちに対応しているときの邪神王の中。
フレイアにはすべて見えていた。
見えていたというよりは感じていた。
邪神王の中では、感覚が強調されるようだ。
邪神王が思う。
『あの男が現れてから、この新たな種子の女が騒がしい』
そして、テツが神聖術師の顔を見た瞬間の行動でざわついていた。
邪神王はその原因であるテツを引き寄せたようだ。
◇
<テツ>
確か、邪神王から何かが飛んできて俺を掴んだと思ったのだが。
真っ白というか何もないというか、考えられることは、どうやら俺は死んではいないらしい。
そして考えたくもないが、頭に浮かぶ言葉がある。
・・・
邪神王の中ではないのかということだ。
食べられたのか?
なんとも言葉がない。
だが、おそらく間違えていないだろう。
アニム王と神聖術師の会話を聞いていたが、一瞬でこの空間に収納されたというか放り込まれたわけか。
う~ん・・傷も痛みも何もないが、ただ感覚が妙に敏感になっている感じがする。
妙に外の状況というか、アニム王たちのことがわかるような気がする。
ん?
!
フレイアの感覚がある。
さっきまでは何も感じなかったのに。
俺は放り出された白い空間を歩いてみた。
見えないが、外ではアニム王たちが何やら心配してくれているのがわかる。
試しにフレイアへ念話を送ってみる。
『フレイア・・』
!!
驚いたことにフレイアから反応があった。
『テツ? テツいるの? どこなの?』
『フレイア、無事だったんだな。 どこなのって・・わからん。 真っ白い空間にいるのだが』
俺がそう答えると、フレイアが言う。
『そう・・おそらく邪神王の中よ』
『・・・』
フレイアの返答に俺は答えれない。
『テツ? テツ!』
フレイアが強く語り掛けて来る。
『あぁ、聞こえてるよフレイア。 しかし、邪神王の中とは・・で、フレイアはどこにいるの?』
俺の方こそ聞いてみた。
『私も邪神王の中だけど、動けないのよ』
フレイアはそう答えるが、俺はこの空間に来てからフレイアを感じることが出来ている。
その感覚の強い方へとゆっくりと歩いて行った。
!!
俺の目線の先に白く光るものが見える。
近寄って行くとフレイアがいた。
急いで駆け寄って行く。
ガン!
何か見えない透明な壁に激突した。
危うく意識を失うところだった。
「痛ってぇ・・なんだこれ?」
俺はそう言いながら、フレイアとの間にある透明な壁を手で探っていた。
フレイアとは会話できるようだ。
「テツ! 無事だったのね。 良かった」
フレイアがボロボロと泣きながら言う。
いやいやフレイアさん、泣かなくても。
「フレイアこそ無事だったんだ、良かったよ」
俺はそう言いつつも、キョロキョロと目線を動かしていた。
フレイアが不思議に思ったのだろう。
涙を拭きながら聞く。
「どうしたの、テツ。 調子悪いの?」
「・・いや、あのね・・その、フレイア・・真っ裸だよ」
俺的にはごっつぁんです!
胸がでかくなってるのが、やっぱりいい。
!!
急いでフレイアが胸を抑え、足をそろえてしゃがみ込む。
!
その仕草もグッとくるのですが・・心の声です、はい。
フレイアが俺をキッ! と見て言う。
「なんですってぇ! 胸がでかくなってるのがいいですってぇ? それにグッとくるっていったい何?」
??
「え? 俺、そんなこと言ってないぞ!」
俺は焦ってしまった。
言葉にして発していないはずだ。
なのになぜ?
!!
もしかしてこの中の空間って、俺の思考がダダ漏れか?
やばいじゃないか!!
おそらく人生で最大の危機だぞ、これって。
俺がそう思うと、フレイアが笑っていた。
「アハハ・・テツ、人生で最大の危機ってことはないでしょ?」
!!
あ~!!
やっぱり俺の思考が読まれている。
・・無心だ、無心・・ダメだ。
フレイアはニコニコしている。
「でも、本当に良かった。 テツが無事だったから・・」
フレイアが満面の笑みを浮かべて言う。
俺にはとてもうれしい言葉だった。
「ありがとう、フレイア。 それにしても、この見えない壁というか、脱出できないのかな?」
俺が透明な壁をトントンと叩いていると、フレイアがにっこりとして聞いて来る。
「ねぇ、テツ。 こんな時になんだけど・・私のことどう思っているの?」
!!!
はぁ?
何ですか、それ!
よりによってこんな時にですか?
フレイアさん、それって反則ですよ。
こんな思考ダダ漏れの状態で・・あぁぁぁぁ!!
俺がパニックになろうとしていると、変な声が頭に響く。
『なるほど、貴様は種子のつがいにいいかもしれぬな』
!!
誰だ?
俺は辺りを見渡す。
何もいない。
『恐れることはない。
はぁ?
何言ってんの、我って誰?
『貴様は新たな世界の始まりになるのだ』
・・・
・・
どうやら邪神王の念話らしい。
この空間・・職を変更した時に遭遇した空間に近いのかと俺は直感的に思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます