第411話 これが邪神王なのか



邪神王から放たれた光の先には、テツたちを乗せた飛行船があった。

飛行船の上部を貫通。

飛行船の中では大騒ぎだった。

「おい、いきなり山の方が光ったと思ったら、何だこれは?」

「みんな無事か?」

「おっさん!!」

「な、なんですの?」

「レア様!!」

・・・・

・・

騎士団長が指示を出していた。

「みんな、飛行船から飛び降りろ!」

その指示の直後、全員が飛行船から飛び降りた。


俺は優とレイアの手を取り、地上まで自由落下をする。

レイアが途中で風魔法をかけてくれて、ゆっくりと地上へ下りることができた。

騎士団員たちも魔術師たちによって無事地上へと運ばれたようだ。

俺たちが地上へ落下していると、また同じように白い光の筋が飛行船を貫いていた。


あのまま飛行船に乗っていたら終わっていただろう。

誰もが同じことを思う。

「みんな無事か? おそらくあの白い光の発射されたところが目的地だ。 行くぞ!」

騎士団長が声をかける。

騎士団長に声をかけられるとなんか安心するな。

俺たちは騎士団長を先頭に邪神王のところへ向かって行く。

誰も言葉を出すものはいない。


◇◇


アニム王は邪神王から放たれた白い光の第二撃の時に、邪神王の腕にレイソードで斬りつけていた。

邪神王の腕にレイソードが刺さる。

刺さるが斬り抜けられるわけではない。

レイソードをそのまま引き抜き、距離を取る。


アニム王は感じていた。

わずかにダメージらしきものが与えられた。

まったくの無力ではない。

だが、絶望に近い。

アリ一匹の攻撃でミノタウロスが倒れるだろうか。

そんな感じだ。


邪神王は何事もなかったようにゆっくりと空を見上げる。

そして両手を上に持ち上げて、口を軽く開いていた。

・・・・

・・

その状態を見ていると、地面が揺れる感覚がある。

空気も震えているようだ。


邪神王のところからだろうか、うめき声のような叫び声のようなものが聞こえてくる。

「・・オォォォォ・・・・・」

地面が揺れている時に、騎士団長たちがアニム王のところへ到着。

「アニム王!!」

騎士団長が叫ぶ。

アニム王がチラッと騎士団長たちを見る。

アリアンロッドが悲痛そうな顔を騎士団長に向けている。


「騎士団長・・」

アニム王がつぶやきながら目線を移す。

その場にいたもの全員が、アニム王の目線の先を見る。

!!

青白く光るエネルギーの塊が見える。

邪神王だ。

両手を上に向けて何やら唸っている。

・・・

地面の震えが止まったようだ。

フト上空を見上げる。


!!

月があるのかと俺は思った。

その場の全員が同じように思っただろう。

満月のようだが、何か違う。

青白い色の月だ。

その月がゆっくりと地上へと迫ってくる。

だんだんと大きくなり速度が速くなっているような感じだ。

「「「うわぁぁあ!!」」」

全員が腕で目を覆う。


シュゥゥゥ・・・・・。


腕をどけて前を見てみる。

!!

先程の青白いエネルギーの塊を吸収したのだろうか、邪神王が大きくなっていた。

サイクロプスくらいの大きさだろうか。

だが、その中身というか感じられるものは吐き気を引き起こすほどの圧力だ。

実際、優やレイアは吐いている。

「うげぇぇぇ・・・」

「ぁぁああぁあ・・」

・・・・

ダメだな。

無事とは言えないが、吐いていないのはアニム王とアリアンロッドだったっけ?

それと騎士団長と俺、後はレアとレアのロイヤルガードと神聖術師くらいか。

レアたちのロイヤルガードはフラフラだが。


そんな俺たちを見てアニム王が言う。

「先ほど、私のレイソードで斬りつけてみた。 わずかだがダメージが与えれるみたいだ。 それに今確信した。 神聖術系の術師がそれほどのダメージを負っていない。 神聖術は有効ということだ」

そして少し微笑む。

「だが、どこまでできるのかわからない。 ただ、ここで我々がどうにかできなければ、この世界は終わってしまうだろう」

アニム王はそう言って、頭を下げた。

「頼む。 わずかでも可能性があるのなら試さないわけにはいかない」

アニム王は下を向いたまま震えているようだ。


神聖術師の一人がフードを取りアニム王に向かって微笑み、言う。

「王様、我々は初めからその覚悟でここに居るのです。 何をおっしゃっているのですか?」

!!

俺は驚いた。

な、なんて美人なんだ。

一瞬だが、邪神王の存在を忘れていた。

神聖術師たちが全員フードを取りアニム王に対して微笑み、うなずく。


う~ん・・みんな美男美女だな。

おそらく、そんなことを考えているのは俺だけだろう。


アニム王は顔を上げ、大きくうなずく。

「すまない」

アリアンロッドは何も言わず、アニム王の横で微笑みうなずく。

直後、邪神王から腕が伸びてきて俺を掴むとそのまま俺を邪神王の中に取り込んだ。


!!!

「テ、テツ!!」

「テツ様!」

「テツ殿!」

アニム王、レア姫、騎士団長が叫んでいた。


◇◇

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る