第387話 帝都ギルドの受付奥で


<帝都ギルド>


昇降装置で受付フロアに降りて来た。

キョウジが歩いていると、年配の女の人がキョウジに当たってよろける。

キョウジがサッと手を出して年配の女の人を支える。

「大丈夫かい、ばあさん」

「ありがとう・・だけど、まだばあさんじゃないよ!」

年配の女の人はそういうとキョウジに軽くお辞儀をしてその場を去っていった。

「気を付けなよ、おばさん」

キョウジは後ろから声をかけた。

小野がそれを見ていてつぶやく。

「意外ね・・キョウジさんがお年寄りに、いや人に親切にしてるなんて・・」

キョウジは笑いながら答える。

「小野さんよ、まるで俺が悪魔みたいな言い方だな。 俺は子供と年寄りには敬意を払っているんだよ」

そう言いながら、ギルドの受付に行く。

受付のパネルにライセンスカードを泉がかざす。

どうやら3番目らしい。

掲示板のところへ3人で歩いて行く。

キョウジがキョロキョロとギルド内を見渡している。


「泉さん、あの男・・本当に飼ってよかったのですか?」

小野が小声で泉に聞く。

泉はにっこりと笑いながら、無言でうなずく。

・・・

片腕を失って、フラフラと歩いて自分たちの街に入って来た男がいた。

満身創痍・・キョウジだ。

街の中で一応治療してみるが、腕は再生しない。

傷は良くなり体力も戻って来た。

そんな時に、戦争の話を聞く。

どうしようかと思っているうちに、戦争は終わったようだ。

いったいどうなっているのかわからない。

余りにも情報が少ない。

キョウジからアニム王国の情報は聞いていた。

そういえば、前にテツという人物と出会ったが、彼もアニム王国に所属していたことを思い出した。

それに斎藤の代わりが必要だ。

このキョウジという男・・斎藤よりも使い勝手がよさそうだった。

そんなことを思い出していると、泉の順番が来たようだ。


受付に行くと、ロディーネが応対する。

「ようこそギルドへ。 どういったご用件でしょうか?」

「えぇ、実は先ほど帝都に到着しまして・・」

泉はそう言って、目線をキョウジの方へ向け、またロディーネを見る。

「彼の腕をどうにかしてあげたいと思いましてね。 確か帝都では優秀な治療者がいるとか・・」

泉は微笑みながら聞いていた。

ロディーネも疑うことなく教えている。

「はい、神殿に行かれるとよろしかと思います」

ロディーネのところへキョウジが近寄って来た。

「ねぇちゃん、美人だねぇ・・いいねぇ」

ロディーネを上から下まで舐めまわす感じで見る。

「・・お客様、ここはそういった場所ではありません」

ロディーネはきっぱりと言う。

「いいねぇ、気に入った。 あんた名前は?」

キョウジがにやにやしながら言う。


アリアが奥から出てきて、ロディーネの状況を即座に理解。

これは応対しなければいけないと、正義感が増してくる。

ロディーネの近くまで来ると、ロディーネがチラっとアリアを見て、またキョウジを見ていた。

「お客様、これ以上は営業妨害として対処しなければいけませんが、お引き取りを」

アリアがキョウジの前に出て言う。

キョウジはアリアがいることなどお構いなしにロディーネに話しかける。

アリアは全く目に入っていないようだ。

「ねぇちゃん、俺は今帝都に着いたんだよ。 ちょっと腕を治療してもらってくるから、時間つくって街を案内してくれないかな?」

アリアを全く無視して、キョウジは話していた。

「お客様、ご遠慮申し上げます」

ロディーネがそう言うと、キョウジはますますうれしそうに笑う。


奥からエレンが出てきた。

キョウジがエレンを見て、

「おいおい、帝都ってところはいい女がいっぱいいるな」

うれしそうにエレンに近寄って行く。

エレンがキョウジの前に来て丁寧に対応する。

「お客様、当ギルドはパブではありません。 それに他のお客様のご迷惑になります。 それよりもススム様、奥でギルドマスターがお話があると言っております。 お越し願ってもよろしいでしょうか」

エレンが泉に軽く頭を下げ見つめる。

泉はエレンを見て少し驚いた顔をしていた。

自分は初見なのに名前で呼ばれた。

このライセンスカードなのか?

・・

なるほど・・情報はすべて筒抜けというわけか。

よくできたシステムだ。

泉は軽く微笑むとうなずく。

「わかりました。 よろしくお願いします」

エレンに案内されて受付奥の部屋へ移動する。

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