第388話 泉の街づくり
移動しつつキョウジはエレンとロディーネを見ていた。
「そうか、わかったよ。 邪魔したな」
キョウジはウインクをして泉たちの後をついて行く。
「エレンさん、助かりました」
ロディーネがホッとした顔で言う。
エレンは微笑みながら言葉を出す。
「さぁ、次のお客様の応対をお願いしますね」
ゆっくり泉たちと奥へ消えていった。
・・・・
アリアが突っ立ったまま震えている。
ロディーネがアリアに声をかけた。
「アリア、受付に戻って・・」
「・・あ、あの男・・この私が見えなかったとでも言うの・・スカがぁ・・」
アリアがやや大きな声でつぶやく。
「オホン! アリアさん!」
ロディーネが軽く咳ばらいをして言う。
アリアはハッとして受付の席に戻っていった。
◇
<ギルド受付奥の部屋>
新しくギルドマスターになったトリノがいた。
トリノは泉たちに席につくように促し、自分も席につく。
「ススム様、わざわざ足を運んでいただき、ありがとうございます」
トリノに挨拶をされた泉だが、名前で呼ばれるのは慣れていない。
ライセンスカードには名前が表示されているので、まぁ仕方ないかとも思っていた。
それに自分たちの存在を認識されて確認されている。
油断ならないな。
「いえいえ、それでギルドマスターがわざわざどんなご用件でしょうか」
泉は微笑みながら聞く。
「実は、ここでススム様とお会いしたのも何かの縁。 ススム様の街との交流や関係についてお伺いしたいと思いまして・・・」
トリノがそう話始める。
・・・・
・・
泉の街は基本、帝都に所属している感じだ。
ギルドやアニム王国としては、準国家として扱っている。
結論的には、泉の街の運営は泉の思うようにして問題ないようだ。
他にもいろいろな街、国と名乗っているところもあるが、基本的には独立しているという。
ただ、物流や情報による交換が発生するため街にギルドを設定。
通貨価値もアニム王国を基準にして使用している。
また、アニム王国も独立した街や国に対する内政干渉はしないという。
住民や周りの人などがギルドを通したりして、あまりにもひどい情報が届けられたりすると調査が入り、最悪の場合は戦争となる。
とはいえ、アニム王国と戦っても勝てるはずもないが。
そのための安全装置としてギルドがあるのかと、泉は話を聞きながら思っていた。
聞けば、一つの街の単位として大きくても20万~30万人くらいの人数が適しているという。
人が多く増えれば、単一魔素が溜まりレベルの高い魔物が発生したり、氾濫したりする恐れがあるという。
そのためにダンジョンに魔素を吸収させて運営するが、その規模も管理できる程度に抑えておかないと、街自体が崩壊するそうだ。
ほんとによくできているなと、泉は何度も思っていた。
街単体では世界で存立できるはずもなく、他の街との交流が必要なことは泉もわかっていた。
それに泉の街の住民はほとんどが地球人だ。
旧世界のシステムを身体に染み渡らせた連中だろう。
そんな人たちをいきなり新しいシステムで運営するにも無理がある。
そんな人たちとの中間接点として存続してもらえればいいだろうと、トリノ辺りは考えていたようだ。
泉も自分の思い通りの街を作れるし、この帝都との交流も問題なく行える。
何等デメリットはない。
以前のように、バカな老人政治家の作ったルールに従わなくてもいい。
新しい自分たちのルールを作っていける。
言うなれば、帝都の命令を絶対的に守らないでいいギルドマスターのような感じだろう。
また、泉のような街というか国を宣言しているところは多くあるそうだ。
泉も納得して、トリノとの会談は終了した。
時間は12時を過ぎていた。
「では、ススム様、今後ともよろしくお願いします」
トリノが挨拶をする。
泉も喜んで返事を返す。
「こちらこそ、わからないことだらけですが、よろしくお願いします」
お互いに握手を交わし、泉たちはギルドを後にした。
◇
泉たちがギルドを出て行くと、トリノとエレンが話をしていた。
「トリノさん、どうでしたか?」
エレンが聞く。
「・・わかりませんね。 見た目は良い感じを受けます。 だが、どこか信用できないところがあるのです。 言葉にはなりませんが・・」
トリノがそう答えると、エレンが微笑んで言う。
「フフ・・トリノさんは用心深いのですね。 ですが、私もそんな感じがしました」
トリノはエレンと顔を見合わせて苦笑する。
「まぁ、問題さえ起こらなければ大丈夫でしょう」
トリノは仕事へ戻って行った。
エレンも少し考えていたようだが、同じく仕事へ戻って行く。
◇
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