第373話 ミラン
◇◇
<ミランside>
ミランはまだ違和感を持ったまま移動していた。
確かにどこかで感じたことのある魔素だ。
しかし、わからない。
遠くに山が見える平原に出た。
近くに障害物がない場所で停止する。
ミランは辺りを索敵。
・・・・
何も引っかからない。
なるほど、アサシンの類か。
ミランはそう思い、集中力を上げていく。
針が落ちてもわかるほどに研ぎ澄まされた感覚。
!!
姿は見えないが、何かがいるのを確認。
即座にその存在部分に向けて剣を振るう。
ヒュン!
紫色の光が軌跡を描きつつ、その空間を切り裂く。
黒い影がユラユラと揺れながら現れた。
右腕を左手で押さえている。
ミランの剣がかすめていたようだ。
「さすがは英雄ミランと言ったところか・・」
アサシンはそう言いながら姿を現した。
ミランは何も言わずに相手を見つめる。
アサシンはミランを見つつ、言葉を出す。
「ミラン・・貴様だな、我が弟を・・。 この機会を与えてくださったことに感謝する!」
アサシンは片手を顔に当てつぶやいている。
ミランには何を言っているのかわからない。
そして、油断をする気もない。
注意深く相手を見ていた。
「さて・・」
アサシンはそういうと音もなくミランの周りを、一定の距離を保って移動する。
アサシンの移動を見ていると、何人もアサシンがいるように見える感じがする。
相手の視覚を狂わせる動きだ。
ミランはその対処もわかっているので、問題なくアサシンに向かって斬りつける。
「シッ!」
アサシンの残像だ。
斬ったと思ったアサシンは消えて、違う方向からニードルナイフが飛んでくる。
ミランは剣でニードルナイフを
キン!
キン!
ドッ!
「グッ・・」
一本がミランの左腕に刺さる。
ニードルナイフの影にもう1本のナイフが隠れていたようだ。
ナイフには毒が塗られているだろう。
ミランは冷静に状況を判断する。
刺さったナイフを抜くと、周りの肉を
そのまま自分に回復魔法をかけている。
止血程度なら、魔力があれば誰でも使えるものだ。
ただ、その間もアサシンから目を離すことはない。
「さすがだ、ミラン」
アサシンはそういうと、少し後ろに下がる。
魔法の詠唱をしているようだ。
ミランも一度後ろへ飛んだ。
アサシンの身体の周りに黒い煙のようなものがまとわりついていく。
それがだんだんと形になってきて、鎧のような感じになる。
!!
「それは、
ミランの口から自然と言葉が出る。
「よく知ってるな、ミラン」
アサシンがニヤッとしてつぶやく。
「・・俺は、お前のことは知らないが、お前は俺の事を知っているようだな。 どこかで会ったことがあるのか?」
ミランが問う。
「フッ、知らないか・・そうだろう。 死に土産だ、聞け!」
アサシンは鼻で笑いながら続ける。
「前の大戦で一人の暗殺者を倒しただろう」
!!
ミランはすぐに思い出した。
確かに倒した。
だが、ギリギリの戦いだった。
その顔を見たアサシンはニヤッとする。
「そう、そいつは・・そいつは俺の弟だ」
ミランは何も答えない。
「まぁいい。 とにかく死ね」
アサシンはそういうとゆっくりと動き出す。
ミランもアサシンの動きに合わせて呼吸を整える。
ミランの身体が訴える。
こいつ普通じゃない。
アサシンがゆらっと揺れたかと思うと、ミランの目の前に迫ってきた。
アサシンの右手にキラッと光るものが見える。
ミランは剣でそれを防ぐ。
ガキンッ!!
鎌のような武器だ。
ミランの剣に当たり防がれるが、その剣先がミランの身体に触れる。
ミランは表情を変えずに、一歩踏み込んでそのまま剣を横に
紫色の線が水平にきらめく。
アサシンは大きくのけ反り、ミランの剣を
紙一重といったところか。
ミランは振り抜いた剣の速度を維持したまま、その場でクルッと一回転をする。
今度は上段から剣を振り下ろす。
まるで紫色の光が躍っているようだ。
アサシンは身体がのけ反ったままだ。
その上にミランの剣が迫っていた。
アサシンは身体を左に
今までアサシンがいた空間をミランの剣が斬り抜けた。
そのまま両者が距離を取って向かい合う。
「ふぅ・・」
ミランが息を吐きながら調息。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます