第371話 戦士たち



<連合国side>


セーラは指揮艦艇に行き、レアの意向を伝える。

艦長はうなずきながら指示を出していると、負傷者全員が柔らかい緑色の光に包まれ怪我が回復していく。

ただ腕や足が欠損した者は、再生してはいない。


艦長の指示により、それらの人を集めてレアのところへセーラたちに連れて行ってもらう。

一人一人にセレネーが回復魔法をかける。

すぐさま身体の欠損部分が回復。

感動のあまり、セレネーの手を握ってお礼を言うもの、思い余って頬にキスをするものがいた。

命知らずなことだ。

桃色の髪を逆立て、せっかく回復してもらったのに負傷時よりもひどい怪我をしていた。

死ぬことはなかったようだが。

セーラたちも笑いながらその光景を見ることができた。

投降した連合国の兵士たちの間では、桃色の髪の女に注意しろとの指示まで出たようだ。


北米での戦闘は終わった。

結果は、連合国の圧倒的敗北。

出撃艦隊、戦艦56隻、空母3隻。 武装ロイド560機、戦闘機350機。

残存艦隊、戦艦5隻、空母0。 武装ロイド15機、戦闘機0。

残った兵器と兵士は、帝都領域へとレアと共に移送される。

ゲートを使うことなくゆっくりと敵戦艦での移動となった。

道中、レアたちは連合国兵士のアイドルとなっていた。

ただ、レアたちにとっては戦争よりも疲れる移動となった。


<アニムside>


テツたちが敵を撃破し、ミランとの合流場所へと移動している時。

ミランたちもまた交戦中だった。

伝説の通り、紫色の光の筋が戦場を駆け巡っていた。

連合国の攻撃は、そこそこの威力はあるものの、問題にはならなかったようだ。

戦闘は早く終了し、ウルダとミランを後方に配置してテツたちの補給部隊との合流地点を目指していた。


「それにしても、ウルダ殿の戦闘はすさまじかったですな。 あの斧を振るうと地面というか空間というか、激震が走り敵が砕け散るのですから・・」

ミランの横にいた騎士団員が嬉しそうに話している。

ウルダはニヤッとするだけで何も言わない。

「ミラン殿も伝説以上に恐ろしいです。 敵でなくてよかったと、本当にそう思います」

そんなことを言いながら笑い声が聞こえていた。

騎士団側に被害はほとんどない。

そんな中、ウルダとミランが顔を見合わせ、うなずく。


「騎士団隊長、少し後方の様子が気になる。 もしかして敵の残存兵力がいるのかもしれない。 俺たちで様子を見てくる」

ミランはそういうと方向を変え、ウルダと一緒に今来た道を引き返そうとしていた。

「それと、我々を待つことなく到着地点に向かっておいてくれ。 予定時間に遅れても困る」

ミランがそう付け加えると、騎士団隊長が答える。

「ミラン殿、誰か兵士をつけましょうか?」

ミランが笑いながら首を振る。

「いや、そうでしたな。 足でまといになりますな」

隊長は慌てて言葉をつないだ。


ミランとウルダがすぐに移動する。

「ウルダ殿、気づいたようだがこの敵・・」

「あぁ、2人だ。 だが、この魔素の大きさ・・下手をすれば軍が全滅させられる。 それにえて誘っているようにも感じる・・」

ウルダが言う。

「そうですな。 我々でないと対処できそうもない」

ミランがそう言いつつ、変な顔をする。

「・・どうした、ミラン?」

ウルダがミランの表情に気づく。

「いえ、この感じどこかで・・」

ミランはそう答えつつも、思い出せないようだった。


相手の大きな魔素が2つに分かれる。

どうやら敵も気づいているらしい感じだ。

「ウルダ殿、俺はこちらの妙に違和感のある方へ向かってみる。 そちらは頼めるだろうか?」

ミランがそういうと、ウルダがニヤッとして親指を立てた。

二人はそれぞれ違う方向へと移動する。


すぐに敵と遭遇する。


◇◇

<ウルダside>


ウルダは広い平原に到着した。

どこにも身を大きく隠せそうな場所はない。

ちょうどいい。 

ウルダはそう思いつつゆっくりと歩いて行く。

!!

ウルダの前に黒い影が現れる。

黒い影は形を成しつつ、ウルダに対し右手を自分の身体の前でゆっくりと曲げ、丁寧にウルダに挨拶した。

「これはこれは、ヴァンパイアの忠犬、サキュバスのウルダ殿ではありませんか」

ウルダはその影を見つめつつ答える。

「フフ、貴様はアサシンだな。 どこにエサをもらうネズミだ」

「フ・・フハハハ!! これは手厳しい。 これから死んでいくあなたには知る必要はありません」

影は目を片手で押さえ、のけ反るように笑っていた。

「ネズミごときが大きく出たな」

ウルダはそういうと、右手に斧を持つ。

その姿を見て、アサシンも雰囲気が変わった。

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