第370話 戦闘終了
◇◇
<連合国side>
連合国側の旗艦に搭乗している艦長の指示で国務長官たちは退却をした。
それを確認すると前方を見つめ、艦長は決断を下す。
「全艦隊に指示。 状況を見つつ撤退、もしくは降伏せよと」
艦長の指示に皆一度艦長を見たが、無言で自分の仕事をこなしていく。
これは、戦いなどと呼べるものではない。
ワンサイドゲームだ。
まさかここまでの力の差があるとは思ってもみなかった。
相手の戦力は人間だけだった。
誰が想像できただろうか?
無理だろう。
もし、頭で理解したとしても、誰でも自分たちの戦力を考えれば同じ結果になったに違いない。
いや、そう考えること自体が間違いの始まりだったのかもしれない。
とにかく、今生き残っているものだけでも無事に帰還させてやりたい。
艦長はそう思い、機関の停止及び白旗の掲揚を命じていた。
ただ、少し遅い決断だったが。
・・・・・
・・・
結局残ったのは旗艦と数隻の戦艦。
武装ロイド10機ほどだった。
◇◇
<アニムside>
フローラの前に、1機の武装ロイドが現れた。
左腕を損傷しているようだ。
前方で停止すると、人が降りてくる。
セーラだ。
ゆっくりとフローラの方へ近寄って来て降伏の意思を伝える。
「フローラ殿、よろしくお願いします」
「はい、わかりました。 セーラさんもお疲れ様でした。 後はご安心を」
フローラがそう答える。
「フローラ殿、レア殿がおられないようだが・・」
セーラが聞く。
「・・レア様は今、少し休んでおられます」
そういって、後方のセレネーの方を見る。
「そうですか・・ご面会したかったのですが・・」
「そうですね、セーラさん。 レア様のところまでどうぞ行かれてください。 そろそろ目を覚ます頃だと思います」
フローラが告げる。
セーラは驚いた顔を見せた。
まさか、こんな戦闘中に寝ていられるのか。
全く・・初めから戦闘ではなかったわけだ。
セーラは自嘲気味に笑うとフローラに礼を言う。
セーラは左腕を押さえつつレアのところへ向かって行く。
フローラはセーラの背中を見送ると、現場の処理を始めていた。
生き残った人を集め、負傷者の振り分け、武装解除などなど。
セレネーの前方からセーラが近づいて来る。
レアが目覚めたようだ。
「う、うぅん・・」
辺りを見渡し、セレネーを見て言う。
「セレネー・・戦闘は終わったようですわね」
「はい」
「セレネー、
セレネーは無言でうなずく。
「そうですか・・おや? あれはセーラさんですわね」
レアがそういうと、セーラが左腕のところを右腕で押さえながらレアの前に来た。
「レア殿、この度は・・何と言いますか、申し訳ございません・・」
レアを一度見つめ、下を向いてセーラが言う。
「セーラさん、もう済んでしまったことですわよ。 それよりも・・セレネー」
セレネーがセーラに回復魔法をかけた。
セーラの身体の傷はすぐに癒え、左腕が再生した。
!!
セーラは自分の身体を何度か確認して、レアに言う。
「レア殿・・これは・・」
「セーラさん、戦闘は終わりました。 後は同じ人ですわよ。 お戻りになってお伝えください。 負傷者がおられれば、今からエリアヒールで回復いたしますわ。 それに身体で欠損されている方がおられましたら、こちらへお連れくださいな」
レアがそう言いながらセレネーを見る。
セレネーもうなずいている。
セーラはすべてを理解できたわけではない。
だが、とりあえずレアたちにお礼を言って部隊へと帰っていく。
セーラは帰路、思っていた。
我々とは次元が違う。
敵である自分の回復を、戦闘後即座に何の敵意もなく行う。
そして、同じ人だと言った。
それに比べて我々はどうだろう?
そういったことができるのか。
できはしないだろう。
休戦、停戦してもすぐに約束を破る。
騙し合い、化かし合い、そんなことで小さな利益を得ようとする。
・・・
いったい、何のための戦争だったのだ。
セーラの頬に自然と涙が流れていた。
我々は、もしかすると、より高い次元への進化の過程に直面しているのではないだろうか?
それを受け入れられる種族との選別を受けているのではないのか?
セーラはそんなことを考えながら移動していた。
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