第366話 さて、やるべきことをやるだけですわ!



<アニムside>


「セーラさん、魔核レベルを超える強さは得られない。 つまり、その程度の魔物の集まりということですわ。 なんの問題もありませんことよ」

レアがセーラを見ながらゆっくりと言う。 

そして続けて、

「セーラさんこそ、どこか被害を受けないところで待機されることを望みますわ」

セーラには意味がわからない。

「レ、レア様、いったい何をおっしゃっているのでしょうか・・」

セーラは確実に混乱していた。

フローラが代わって説明をする。

「セーラさん、この場は私たちだけで十分対処できると申し上げているのです」

セーラがフローラの方を無言で向く。

今、何と言った?

レアたちだけで十分対処できると言ったのか?

この艦隊をか? 

何を言っている。 

武装ロイド10体くらいを相手にするんじゃないんだぞ。

この武装艦隊、戦艦にして50隻以上。 

空母も3隻もある。 

武装ロイドは500機は超えている。 

それに各艦艇には魔法使いなどもいる。

それをたった5人の人間で応対するとレアは言っている。

いったいレアの頭の中ではどんな景色が浮かんでいるのか。

セーラはしばらく放心状態だったが、レアたちに敬礼をし無言でその場を去った。


セーラの背中を見送りつつ、フローラがつぶやく。

「レア様、あの人は本当にわかっているのでしょうかね?」

レアが微笑む。

「さぁ、どうでしょうか。 わたくしたちはするべきことをするだけですわ」


◇◇


<連合国side>


セーラからの報告を受けた、旗艦戦艦に搭乗している人物にジェームズがいた。

「・・そうか、せっかく命を助けてやろうというのに、退去する気がないと来たか」

不敵に笑うと、艦長の方を見る。

「艦長、あの街は完全に消去してもらいたい」

艦長はうなずく。

「さて、警告も済んだ。 これで義理は果たしたな」

ジェームズはそう言うと、艦長を見て大きくうなずく。


艦長が前を見て指示を出す。

「全艦隊につぐ。 前方の街に対し5秒間の一斉射撃を行う。 準備を整えよ」

オペレーターが調整をして、艦長に準備完了の合図を出す。

艦長の片手が振り下ろされた。

この空域にいる全戦艦から一斉攻撃が始まった。

上下、前後左右きちんと距離を取り、それぞれが邪魔にならないように配置してある。

全艦隊からの砲撃。 

凄まじい火力だ。

街の防御壁に衝突し、虹色の輝きと共に爆発音やら衝撃波などが空気を震わせる。

土埃も舞い上がる。


各艦艇の艦橋から搭乗員たちがその光景を眺めていた。

皆、その攻撃力に軽い興奮状態になっているようだ。

「・・ものすごい攻撃だな・・」

「今まで見たこともない。 ハワイ諸島など、この攻撃だけで消し飛ぶんじゃないのか?」

「・・これは核爆弾数十個分の破壊力があるだろう・・」

それぞれが勝手なことをつぶやいていた。

・・・・・

・・

爆発光が膨れ上がり、太陽とまではいかないが大きく発光していた。


実際には、防御壁に当たった砲弾などが爆発し、それに続けてさらに砲弾や魔法攻撃などが着弾。 

相乗効果で爆発が大きく見えているだけだったが。


◇◇


<アニムside>


レアの前面にはギルドに張られている防御壁よりも強力な魔法壁が作られていた。

「トリノ殿、あなたはギルドから帝都へとゲートを使って移動してくださいませ。 そして、ご報告をお願いします」

レアがそういうと、トリノがすぐに返答してきた。

「い、いえ、レア様。 私も戦います。 これでも私もレベル39で・・」

レアはトリノを見ながら言葉を続ける。

「トリノ殿! 時間が惜しいですわ。 ご報告に向かってください!」

レアがきっぱりと言うと、トリノもわかったようだ。

自分がいては邪魔になると。

トリノはうなずきつつも、きちんと言葉は残した。

「レア様、そして皆さま、ありがとうございました。 お気をつけて」

そういうと、街の中へと消えて行った。


「さて皆さん、持てる力を出し惜しみすることなくお願いいたします」

レアはそう言うと微笑む。

「「「「ハッ!!」」」」

セレネーはレアのそばで待機。


レアから見て右側から、アウラ、フローラ、メリッサ、エリスの位置になり、それぞれが放射状に広がって行く。


◇◇


<連合国side>


一斉射撃が終わり、その状況を観測していた。

土煙などが落ち着いて薄くなってくる。

街から遠い位置にあるところほど、視界が早く回復してくる。

見えてくると地面が大きくえぐれている。

隕石でも落ちた後のような感じでへこんでいるところがある。

だんだんと街のあった辺りまで視界が回復していた。

「どうだ、観測班」

どの艦艇でも同じような質問をしていた。

「はい、砲弾などの着弾した周囲は地面がかなり損傷しており、崖のようになっています・・標的の街は・・」

艦橋内は変に静まり返っていた。

観測班の言葉だけが響く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る