第355話 魔弾を発射したものの・・



◇◇

<連合国side>


テツがフレアの魔弾を放った横の戦艦の艦橋。

「な、なんだ!! 4番艦がいきなり赤い球体に包まれたぞ・・うわぁぁああ・・」

・・・・・

「おい、4番艦付近の赤い爆発はなんだ?」

艦隊の中央奥に位置している指揮戦艦の艦橋にいた艦長が聞いていた。

艦隊は左から番号が割り振られている。

「わかりません。 ただいきなり赤い光が見えたと思ったらそれが大きくなっております」

見えたままを報告しつつも、広がっていく爆発光を見ていた。

そのうち、艦隊に揺れが伝わる。 

振動波のようだ。


「うお! かなり揺れるな。 大しけの海のようだ」

艦長の横にいた人が、顔は引きつりながらも落ち着いた雰囲気で言葉を出していた。

「か、艦長! この艦艇は大丈夫かね?」

行政官だろう人が揺れに耐えながら、声を大きくして言う。

「問題ありません。 ご安心を」

艦長は落ち着いて声を出す。

ここで指揮官が動揺していては士気に関わる。

しかし、艦長も心穏やかではない。

いったいなにが起こっているのか理解できない。

ただ、いきなり赤い光の球が広がって艦艇が揺れている。

・・・・

・・

爆発の余波も収まってきた。


フレアの放ったところを中心に、艦艇が4隻消滅していた。

その周りの4隻ほどの戦艦も中破している。 

側面が焼けただれたり、艦首や艦尾が消失していた。

近くにいた他の艦艇もゆがんだりしている。

地上部分では、アニム王国の兵士は防御魔法でどうにか怪我をしないで済んだようだ。

連合国の方は、フレアの下にいた戦車や装甲車などは、地面ごときれいに消失していた。

地面は赤くドロドロとまるで溶岩のように見えるところもある。

離れたところでは地面は黒く、キラキラとガラス化しているところもあった。


その周りの戦車や装甲車なども歪んでいるものがある。

生き残った人たちのうめき声が聞こえていた。

「・・熱い、熱い・・・」

「・・た、助けてくれ・・」

・・・・

・・

指揮戦艦の艦橋内は揺れが収まると沈黙。

「・・・・・」

艦長が口を開く。

「・・被害を報告しろ」

「・・は、はい。 4番艦を中心に3番、5番、6番艦がしょ、消滅。 2番艦、1番艦、7番艦、8番艦が中破・・」

・・・・

情報を処理しているオペレーターが報告をしていた。

地上部隊の被害も報告している。


さっきまでの楽観的な発言は消えてしまったようだ。

その状況を聞きつつ、行政官たちが艦長の方を向いていた。

艦長はそんな視線は無視し、爆発のあったところの艦隊の再編を指示している。


◇◇

<アニムside>


テツは地上から状況を見ていた。

「こ、こりゃダメだな。 密集したところでは使えない。 敵味方関係ない・・」

いたずらっ子がいたずらをして、バツが悪そうな感じでゆっくりと後ろを振り向いてみた。

!!

「うわ!」

目の前にフレイアがいた。

「フ、フレイア、びっくりするじゃないか!」

「びっくりするじゃないわよ。 テツ、あのね・・あなたバカなの?」

呆れた顔を俺に向け、当然フレイアから注意を受ける。

「いや、その・・銃で魔弾を撃ってみたんだが・・」

段々と小声になりながら俺はつぶやいた。

「はぁ・・まぁ、こちらの方もなんとか間に合ったから良かったけど、味方まで殺す気?」

フレイアが可哀そうな子供を見る目で俺を見る。

「・・・」

俺には言葉がない。

俺が下を向いてジッとしていると、フレイアの後ろから声がした。

「いやいや、テツ殿、すごい魔法ですね。 最上級魔法をご習得されていましたか。 王様が自由にさせるように言われるわけです。 ただ、魔法を行使する前には一言声をかけてもらえると助かります」

一気にそこまで話しながら、スバーハが近寄って来る。


俺はどんな顔をしていただろう。

頭に片手を置いて頭を下げる。

「隊長・・すみません」

俺はそういうしかできなかった。

「いえいえ、謝らないでいただきたい。 むしろこちらとしては感謝しているのです。 ただ、タイミングが難しいですな」

スバーハは責めるでもなく、普通に話してくれていた。

それが余計につらいが。


◇◇

<連合国side>


連合国では混乱が起こっていた。

「・・なんだあの攻撃は・・魔法なのか?」

「ミサイルなんて飛んでこなかったぞ・・」

「敵の魔物の接近もなかった・・」

「・・は降下していなかったのか?」

・・・・

・・

いろんな言葉が飛び交っていた。

ただわかっていたのは、戦艦が消滅したということだ。

まさか敵勢力にあれほどの攻撃力があるとは思ってもみなかった。

これほどの魔法があるとも知らなかった。

艦橋にいる人間が、異世界人を見つめる。

「・・ま、魔法による攻撃のようですが・・我々もあれほどの強大な魔法を見るのは初めてです。 ですが、例の部隊が出動しているのではないですか?」

ぼんやりとした表情をしながらつぶやいている。

異世界人を見つめていた連中は、冷めた目線になっていた。


例の部隊。 

パワードスーツのような装甲をまとった部隊。

鎧などの防具とは違う。 

魔核を埋め込み加工したものだ。

人型ドローンのように見えるが、人が中に入っている。

ただ、魔核のレベルを超える能力は付与できないのだが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る