第356話 連合国家の横のつながり
<連合国side>
このようなレベルや魔法がある世界になる前、北米を拠点としてドローン兵器を開発。
欧州連合などとも協力して、すでに実戦レベルまで完成していた。
航空機などのドローンはすでに実戦配備していたが、人型に近いドローンは実戦には投入していなかった。
犬のようなドローンに兵器を装備して投入実験しているところもあったようだ。
だが、今回の兵器は違う。
魔法により人が搭乗したり装備したりするロボのようなものが完成した。
『武装ロイド』
そう呼ばれるものだ。
相手からの攻撃に対する耐性が飛躍的に高くなっている。
攻撃力も実験では単機で戦艦も撃破したと聞く。
だが、どうだ。
今の魔法攻撃で消滅したのではないのか?
詳細は確認できていないが、現場に動いているものはいない。
艦長はそんなことを考えていた。
そして、そんな中、艦長だけが冷静に話している。
「・・異世界人殿。 確か貴殿らに教えていただいた技術を利用した武装ロイド、防御魔法を施して相手の攻撃を受け付けないようになっていた代物でしたな・・」
艦長がそういうと、異世界人たちは恐る恐る声の方を向いて大きくうなずく。
行政官も同じくうなずいていた。
艦長は続けて言う。
「なぜ先ほどの魔法攻撃の後で、動いているものが確認されていないのでしょうな」
そう言葉を発しながら、外を眺めていた。
艦長以外のその場の人間全員の表情が固まっていた。
少しばかり攻撃力・防御力が高くなったといっても、先程のような威力はない。
結局は、それを行使する人の力に頼るところが大きい。
自分の力を高めなければならない。
安易な方法で力を得ても付け焼刃だろう。
敵の攻撃だが、見るのは初めてでも何か有効な対策をしなければいけない。
戦争などで、初めて目にする武器は脅威だ。
だが、恐れてばかりもいられない。
与えられた状況で応対しなければならない。
敵にあんな攻撃力があるとは想定外だったが。
艦長は各艦に少し後退を命じ、艦隊の再編成を指示した。
ただ、魔法で消滅した部隊には、武装ロイドが搭載されていなかったことはすぐに判明し、皆少し安心したようだ。
◇◇
<アニムside>
「スバーハ隊長、俺はまた戦艦に向かいます」
スバーハは一瞬ピクッとなったが、そのまま了解してくれた。
フレイアが残念そうな目で俺を見る。
「テツ・・いきなりはやめてよね」
そう念を押される。
「うん。 あの魔法はダメだな。 味方がいるところではできない。 もっと奥の方で放つよ」
俺がそういうと、スバーハは帰ろうとしていたが立ち止まってこちらを見る。
視線が痛い。
「ス、スバーハ隊長。 使いませんから・・」
俺はそういうしかできなかった。
スバーハは怪しそうな目を俺に向けると、そのまま元の場所へと帰っていく。
「テツ、あの隊長、信用してないわよ」
フレイアが言う。
「さ、さて、次に行きますか」
俺は軽くつぶやき、フレイアと一緒に奥の敵指揮艦隊の方へと移動する。
連合国の艦隊からは例の部隊、武装装甲をまとった『武装ロイド』が降下してきていた。
◇◇
<連合国side>
連合国では艦隊を指揮している艦長が、異世界人や行政官に質問をしていた。
「・・それで、我々の方に先ほどのような魔法を使えるものはいるのでしょうか?」
「・・・・・」
誰も答えない。
「なるほど。 その沈黙は、存在しないと理解してよいのですな」
艦長が言う。
「わかりました。 それでは、艦隊司令官としての権限で艦隊の撤退を指示します」
艦長は普通に話す感じで発言する。
行政官は驚いていた。
「か、艦長! 撤退ですか・・」
「無論です。 まだ余力が十分あるときに撤退しなければいけません」
そういって指示を出していた。
「全艦隊に撤退指示を出してくれ。 それまでは降下させた武装ロイド部隊と地上部隊に対処を任せる。 収束しつつ後退だ」
艦長はそう言うと、指揮官席に深く座り直す。
艦隊司令の艦長から撤退指示命令が出され、それを聞いた各艦長は指示に従っていた。
だが、自分に自信があるのか、従う振りをしつつ部隊を展開しようとしているものもいた。
連合国家のつながりの弱さが見て取れるようだ。
「ふん、臆病者のアメリカ人らしい考えだな。 こちらにはあの武装ロイドの兵器があるではないか。 1機で戦艦にも匹敵する兵器。 臆病者には使い方がわからないとみえる」
4番艦の最後方にいて、衝撃波の影響をあまり受けなかった戦艦の艦長だ。
この戦艦には戦車や戦闘機は搭載されていない。
だが、配下の3隻の戦艦にはたっぷりと武装ロイドの部隊が待機していた。
地上部隊が一段落したら制圧するために待機していたのだ。
それが投入されることなく撤退の指示を受ける。
そんなバカな話があるか。
どうして勝てる戦いなのに、後退しなければならない。
総司令官は、艦隊情報を提供してくれた北米の指揮官に任命されている。
だが、その司令官は少将だったというではないか。
こちらは大将や中将の位だった。
国が違えば立場が違うだろうが、無条件で従えと言われても、戦略戦術の見方が違う。
自分らの目線から見れば、今は好機だ。
4番艦のところで爆発があったかもしれないが、それがどうした。
戦わずに撤退などできるはずもない。
それに、後で私の評価もある。
今回の武装ロイドの情報を収集して持って帰らなければならない。
そうすれば元帥の席も夢ではない。
生きながらにして元帥。
この戦艦の艦長は、その考えが頭を占めていた。
自分に任されている直接の艦隊は3隻だ。
その3隻から武装ロイド部隊を降下させていた。
1隻に50機くらいはいる。
3隻からは150機強の武装ロイドの部隊が地上へと送られていった。
この左翼の戦艦群艦長の直接の指揮下にあるのは、同族系統でまとめられている。
東南アジア系かアジア系だろうか、その種族で艦隊が組まれていた。
ただ、どの艦隊も総司令官の指示には従う振りをしている感じがあった。
4番艦の近くにいた部隊は別だが。
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