第349話 使者たち
トリノのところに使者がやってきたようだった。
映像越しに見える。
5人組だ。
1人がトリノに話しかけるのが聞こえる。
「どうですかな? 我々と提携していただけますか? お返事次第では、すぐに平穏が取り戻せますが」
相手は全員武装していた。
「あなたたちは力を前面に、他国と交渉をするのがスタイルなのですか?」
トリノが落ち着いて答える。
「いえ、時と場合によります。 ただ、今はそうなっているだけですな。 何せ、すべてにおいて対等な関係というのは、存在しないものごとですから」
使者はそう言う。
「・・そのできないと思われるものごとを、お互いが協力して行うところに道が開けるでしょうに。 とにかく、我々は対等の関係でない限り、交流はありえない」
トリノがそう答えると、使者はゆっくりと首を振りやれやれというポーズをとる。
自分達の会話が、帝都で見られているとは思ってもいまい。
「そうですか、わかりました。 あなた方は、我々の最大限の好意を受け取らずに、人として扱われる身分を放棄したいわけですな。 では、力で従えるしかありません。 この星のルールに
使者が首をクイッとすると、横に控えていた武装した集団がトリノに近づく。
「その者を捕らえろ」
使者が言う。
トリノも無論、捕まる気はないだろう。
トリノはレベル39。
捕まるはずもないと誰もが思っていた。
使者を除く全員が一斉に襲いかかる。
当然、トリノには余裕で
躱されるのを前提で攻撃しているようだ。
突然、トリノの動きが止まる。
トリノの足に、
隷属の首輪の類のようだ。
トリノの顔が
「グッ!」
使者がゆっくりと歩いて行き、トリノの首にもう一つ隷属の首輪をかける。
「これでおとなしくなったでしょう。 さて、後の方々ですが・・」
使者はつぶやいていた。
帝都の重鎮たちは黙ってみていた。
アニム王も何も言わない。
ただ、表情からは笑顔が消えていた。
騎士団の誰かがつぶやくのが聞こえる。
「・・あのギルマスって、レベル39だったよな? 何故、戦わなかったんだ?」
「隷属の首輪って、効果あるのか?」
「・・いや、レベル差があれば効果がないはずだが・・」
「違うぞ、あれは
いろんな意見が飛び交っていた。
そういえば、そうだ。
迫って来る相手をそのまま倒せばよかったじゃないか。
・・って、そうか!
まだ戦争状態になっていないから遠慮したんだ。
優しいというか、真面目というか。
気の毒な人だな。
俺はそんなことを思いながら見ていた。
ドワーフのギルドも攻撃を受け始めている。
その映像を見ていると、ミランが帰って来た。
「アニム様、住民の移動は完了しました」
ミランが報告をする。
「そうか。 ありがとう」
アニム王がそういうと、一人の男がアニム王に近づいて行き何やら話している。
時間は13時少し前になっていた。
「諸君、使者が来られたようだ。 相手の行動によっては即時対立になるかもしれない。 よろしく頼む」
アニム王が皆に頭を下げていた。
すぐに使者が会議室へとやってくる。
7人いるようだ。
ん?
一人見たことあるぞ、と俺は思って見ていた。
確か、あのシュナイダーのところにいた若い奴だ。
名前は・・忘れた!
ゾロゾロと案内の人に連れられて入って来る。
案内の人が下がると、会場の人たちは壁際にそれぞれ引き下がっていった。
アニム王までの通路が確保される。
7人の使者は身じろぐこともなく、悠然と歩いて行く。
アニム王の前に来ると、アニム王も立ち上がり出迎えた。
「ようこそ、我が王国へ」
使者の代表だろう人が一歩前に進み出て止まる。
アニム王を見て言う。
「王様、早速ですがご返答はいかがですかな?」
落ち着いた口調だ。
「前にも申し上げた通り、我々は対等な交渉ならば良き隣人になれるでしょう。 そうでなければ、お互いに干渉せずにそれぞれの国づくりに専念すればよいでしょう」
アニム王は、はっきりと答える。
使者は大きくゆっくりうなずく。
「そうですか、それは残念ですな。 対等な交渉といっても、我らが領土に許可なく国を
低い声でそう言った。
「ギルティ!!」
ココの声が会場に響く。
全員がその声の方を向いたが、特定できなかった。
「・・今のはいったい?」
使者たちも驚いたようだ。
アニム王が微笑みながら話し出す。
「そうですか。 こちらこそ残念です。 まずはこちらの映像をご覧いただけますかな?」
そういって、先程のギルドが攻撃された映像を映し出した。
・・・・・
・・・
明らかに使者たちは
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