第348話 トリノのギルドにて


ルナも普通の状態に戻っていた。

レアの方を一度見つめて言う。

「さてと、次のスイーツをフレイアにもらいにいかないとな」

ルナはその場から去っていった。

「テツ様、これから長いつき合いになるでしょうが、どうぞよろしくお願いいたします」

レアがそう言って頭を下げ、他の連中も俺に挨拶をしてテーブルの方へ戻って行った。


俺はその背中を見送りつつ・・いったい、何だったんだ? 

あの大きな剣を背負ってた女、力強かったよな。 

マジで戦ったら負けるかも・・俺はそんなことを思っていた。


◇◇


「アウラ、どうでしたか?」

レアがアウラに聞いていた。

「はい。 一言、恐ろしい男です」

!!!

アウラがそう答えると、レア以外の連中が立ち止まってアウラを見た。

「・・それほどですか?」

エリスが言う。

「確かに、あの力の流し方はうまいと思ったが・・」

メリッサもうなずいていた。

「あの男、私の力にも対抗できたはずです。 ですが、それをあえて流していました。 その流し方が自然なのです」

アウラがそう言いつつも額に汗が浮き出ていた。

「アウラ、嫌な役をやらせて申し訳ありませんね」

レアがねぎらっていた。

「い、いえ、レア様。 これが私たちの仕事ですから」

アウラは慌てて答える。


◇◇


会議室は、どこかの茶話会さわかいといった感じで流れていた。

たまに意見が飛び交うが、どうということはない。

時間は12時近くになっている。


入り口の方からアニム王のところに駆け寄って来る人がいた。

少しアニム王と話をしていると、アニム王がギルマスのミランを呼んでいる。

しばらくして声を出す。

「諸君、今ギルドから連絡が入ったようだ。 まずはこれを見て欲しい」

アニム王がそういうと、前面にいろんなギルドのホログラム映像がコマ割りよろしく、いろいろ表示されていた。


「このトリノのギルドとドワーフ国のギルドの映像を前面に出します」

ミランがそういうと、近くに地球のホログラム映像が同時に表示される。

ホログラム映像とリンクしてよくわかるようになっていた。

「今、この二つのギルドですが、包囲されつつあるようです」

!!!

その場の雰囲気が一瞬で変わった。


「なんだと・・」

「まさか・・」

一瞬静まり返った後、ザワザワとした雰囲気になる。

「あら、あのギルドはわたくしのいたところの近くですわ」

レアのはっきりとした声も聞こえてきた。


「今日、このタイミングで行われつつある軍事行動。 明らかな挑戦でしょう」

アニム王が言う。

ミランがその言葉を聞きながら話す。

「今のところ、まだ直接的な被害は受けておりませんが、トリノのところと会話ができます」

そういうと、画面に該当ギルドマスターが出て来た。

「皆さん、よろしくお願いします、トリノです。 後数分で使者が来る予定です。 やはり従属国になれという案件ですが、一度断りました。 そして、今日が回答する日なのですが、ギルド周辺では巨大な戦艦が多く観測されています。 また攻撃のための飛行艇でしょうか、それも多数見かけます。 つまり、武力を背景に交渉を迫ってきているのです」

トリノというギルドマスターが話していた。

こちらの会議室からも声が出ていた。

さっき俺に挨拶してきたレアとかいう女の子だ。


「トリノ様のところのギルドの近くに、街がいくつか出来ておりました。 その時に飛んでいた飛行艇と同じタイプですわね。 ただ、使用魔核がレベル23、4といったところですから、それほどご心配されることはないかと思いますが」

はっきりと明言している。

「レア。 確かに使われている魔核は大したことはない。 ただ、それを使用する魔法師などを媒体にすればどうだろう。 武器の威力は上がるのではないかね?」

アニム王がそう言うと、レアも少し考えているようだった。

わたくしがいたときからそれほど時間が経過しておりませんし、レベルのある魔物も人物もおりませんでしたが・・」

レアはやや不安そうに答える。

誰かがつぶやく。

「邪神教団や他国の魔術師の支援があれば別じゃろうし、人を媒介にすればどうかの?」

!!!

会場に緊張が走った。


その時だ!

トリノとドワーフのギルドが攻撃を受け始めた。


ギルドの周りには結界が張ってある。

相当の攻撃魔法や物理攻撃でも耐えられる仕組みになっている。

無論、魔物などの侵入もできない。

映像越しだが、その振動音は伝わる。

ドゴォーーン、ドゴォーーン・・と遠くで音が響いている。

ギルド内はまだ無事のようだ。


「ミラン、すぐに住民を帝都に避難させてくれ。 ゲートは確保してある」

アニム王がミランに向かって指示を出す。

ミランがその場を離れ、仕事についた。

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