第346話 返答の日


時間は20時前だ。

フレイアを見送り、俺も自分の家に帰る。

部屋に入って身体をきれいにし、ベッドに横たわり天井を見ていた。

戦争・・よくわからない。

俺は、贅沢な暮らしなど望んでいない。

少し美味しいものが食べられて、それほど強烈な圧力のない社会で暮らせればそれでいい。

前の世界では、それすらもできない国がたくさんあった。

だが、今の世界では無法に見えるが、アニム王のギルド網に付随する街は暮らしやすいのではないだろうか。

俺には嫁のプレッシャーはあったが。

・・・

今のこのシステム。 

どこまで考えても最高だ。

自分の行いが、すべてではないが報われる。

考えるまでもない。 

俺は、アニム王国派だ。


考えていると気持ちがすっきりしてきた。

いつもの寝る前の作業、魔弾を少し作って眠る。

・・・・

・・

朝が来たようだ。

時間は5時。

リビングへ行き、コーヒーをれて飲む。

外へ出てみるととても清々しい朝だ。

朝日も出てきている。

俺は大きく伸びをすると、そのままばあちゃんの家に行き玄関で挨拶だけをした。

嫁たちはまだ当然寝ている。

とくにやることもないので、ギルドへ向かう。


ギルドに入ってみると、日常を感じる。

ただ、リストバンドしている連中は見かけない。

受付に行くと、ポーネが俺を見つけてくれる。

「おはようございます、テツ様。 早いですね」

「あぁ、おはよう、ポーネ」

俺が挨拶を返すと軽くうなずく。

「ようやく私も記憶に残る女になったのですね」

朝っぱらからポーネが飛ばしてくる。

「・・・」

俺が答えずにいると席を勧めてくれた。


「テツ様、どうかされましたか」

ポーネが聞いてくる。

「いや、どうということはないんだが、今日だろ? 例の返事は・・」

俺がそう聞くとポーネが答えてくれた。

「はい。 ギルドマスターも後少ししたら、王宮へ行かれるはずです」

「え? こんなに早くから?」

俺は少し驚いたが、まぁ案件が案件だからな。

「はい。 テツ様もてっきりご一緒されるのかと思っていました」

ポーネがあっけらかんと言う。

なるほど。 

俺もギルマスと一緒に行けばいいな。

「そうか。 じゃあ、俺もギルドマスターと一緒に行ってみるよ。 ありがとう、ポーネ」

俺はお礼を言って席を立ち、掲示板を見に行く。


掲示板にはいろいろ情報が表示されている。

今日の返答に関する情報がある。

国民投票みたいな感じの表示になっている。

国交に対して、対等の国交を望むもの・・100%。

交渉が不調に終わった時の処理について。 

国交断絶:23% 不干渉:34% ギルドによる交流:37% その他:6%。

なるほど、ギルドを介しての交流はアリと考えているのか。 

商売魂だな。 

いや、情報が必要ということかな?

そんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。 

ギルマスだ。


「おはよう、テツ君。 俺も今から王宮へ行くのだが、一緒に行くかい?」

ギルマスが軽く聞いてくる。

俺は振り向いてゆっくりとうなずきながら答える。

「おはようございます、ギルドマスター。 よろしくお願いします」

ギルマスについて行く。

少し離れたところでエレンさんが見送ってくれていた。

エレンさん、少し眠そうだな・・ギルマス、昨日張り切ったのか?

エロい妄想を頭に描いてしまった。


「ん? どうしたんだ、テツ君」

ギルマスが俺を見てくる。

「い、いえ、何でもありません」

俺はそう答えつつ少し焦ってしまった。

「そうか。 しかし、回答は変わらないのだが相手の出方次第だな」

ギルマスは独り言のようにつぶやいている。

俺も黙ってついて行く。


王宮へ到着し、会議室へ案内された。

時間は7時前だ。

早朝だというのに、結構人数がそろっている。

会議室に入って行くと、みんなそれほど緊張している雰囲気はない。

むしろ和気あいあいといった感じだ。 

ラフな感じで接してる。

会議用のテーブルなどもない。 

なんか立食パーティでも始まるのかという感じだ。


「おう、テツ、おはよう!」

ウルダだ。

「おはようございます、ウルダさん」

ウルダは俺の肩をポンポンと叩きながら、

「人いうのは、面倒な生き物だな」

そういいながら、カラカラと笑っていた。

中央のテーブルの奥ではルナが食べ物を物色している。


アニム王は、重鎮たちだろうか、いろんな人に囲まれて話をしている。

壁際には、案内係の人だろうか、飲み物やサンドイッチみたいなものを愛想よく配っていた。

テーブルにもあるが、俺も何かもらおう。

そう思って壁際に近寄っていく。

「おはようございます。 どうぞ」

係の人が声をかけてきた。

近づいてくる人に配ってくれているようだ。

俺も飲み物をもらい壁にもたれて飲む。


それにしても、みんなリラックスしているよな。

本当に戦争になるのかという感じだ。

そう思って俺が見渡していると、黒い影が近づいて来る。

ルナだ。 

俺の近くまできた。

「テツ、スイーツを持っていないか?」

は? 

いきなり何言ってるんだ、この人は。

「おはようございます、ルナさん。 朝からスイーツですか・・」

「朝だからこそだ。 何かないか?」

俺をジッと見つめている。

・・・

俺はアイテムボックスからザッハトルテを取り出して、ルナに渡す。

ルナが大喜びでザッハトルテを受け取った。

「おお、これだ。 このチョコがおいしいのだ。 礼を言う」

そういうと、元の位置辺りに戻って行った。

ルナさん、呑気だな。

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