第341話 ようやくレベルアップか
子どもたちの元気な姿を見れれば問題ない。
「よ、嫁さん、ほんとにちょっと寄ってみただけだから、またね」
俺はそういうと嫁の家を後にする。
なんか妙な感覚だ。
俺の嫁さんだろうが、もうどうでもいいという感じがどこかにある。
あれほど金、金と言われ続け、本気で嫌いになったと思う。
だが、こんな世界になり、お金も気にすることもなくなった。
俺の生きる目標というと大げさだが、日々やることが仕事になり充実している。
何て言うのかな・・俺の心の中で嫁という領域が小さくなったのは間違いないだろう。
・・・
深く考えるのは、今はやめておく。
今日はそのまま家に帰ろう。
玄関を開けて中へ入る。
いつもならフレイアの声が聞こえていた。
こんな世界になる前には、凛や颯のおかえり~が必ず聞こえていた。
嫁のおかえりは聞いたことがないな。
身体をきれいにして寝室へ行く。
いつも通り魔弾を作り、眠る。
・・・・・
・・・
朝5時。
シルビアのレベル上げを行いつつ、ガルムのおやじに魔石を売る。
シルビアに魔石のお金のお礼も言われた。
・・・
こういったことを繰り返して数日経過。
一気に攻略してレベルを上げさせても良かったが、シルビアも1日中ダンジョンというわけにはいかないらしい。
日によって1時間位で帰って来ることもあった。
ダンジョンで、やはりしんどかったのはタイタンだ。
どう考えても、魔物とは思えない。
ビームやロケットパンチのような攻撃。
シルビアの濃い紫色の矢が刺さらなかったからな。
何とか攻略できたからよかったようなものの、俺が倒してしまった。
というわけで42階層に来ている。
時間は9時前。
ここはヒュドラがいたはずだ。
シルビアもレベル39になっていた。
俺はまだ上がっていない。
まぁ、ほとんど倒してないしな。
さて、索敵をしてみよう。
ピピ・・。
なるほど、やはりサーペント:レベル37×2、ハーピー:レベル36×3、ヒュドラ:レベル41がいる。
後は無視できるレベルだ。
「シルビア、サーペントが2体、ハーピーが3体、それにヒュドラが1体いる」
俺はそう言ってみる。
「ヒュドラがいるのか。 やっかいだな・・」
「いや、問題ないぞ。 俺、蛇苦手だけど相性はいいみたいなんだ」
「テツ、ヒュドラと戦ったことがあるのか?」
シルビアは驚いていた。
俺は軽くうなずくと、何やら尊敬のまなざしを感じる。
「ま、まぁ、どうにかなるから・・」
俺はそういいながら前を向く。
俺達の前面にハーピーが飛び交っている。
その下にサーペントが2体ウネウネしている。
ヒュドラはサーペントの近くでどっしりと構えているようだ。
距離的には、ハーピーまで400メートルくらいだろうか。
「シルビア、言っておくがヒュドラって近づくと飛んでくるからな」
俺がそういうと、シルビアは固まっていた。
「と、飛ぶのか・・ヒュドラが・・」
「シルビア!!」
俺は思わず声を出していた。
ボーッとしている場合じゃない。
ハーピーが迫って来る。
シルビアがすぐに矢を放つ。
濃い紫色の軌跡を描きながら飛んでいき、見事にハーピーに命中する。
3匹ともシルビアが倒していた。
「やるな、シルビア」
俺の声を聞き終わらないうちに次の矢を射っていた。
サーペントに向かって飛んでいく。
トシュ、トシュ、トシュ!
3本刺さり、続けてもう3本矢を放つとシルビアが片膝をつく。
そうだった。
連続で10本くらい矢を放つとダメだったんだ。
だが、威力が上がっている。
サーペント1匹に対して3本の矢で倒せたようだ。
俺はシルビアに魔力回復薬を3本ほど渡すと、1本を一気に飲んでいた。
その間に、ヒュドラが身体をくねらせてジャンプをしてくる。
忙しいな。
俺はそう思いつつも、シルビアを見ると予備知識があっても反応できていないようだ。
まぁ、あの巨体が飛ぶからな。
俺はシルビアを抱えて、ヒュドラから距離を取る。
!!
俺の目の前にシルビアの胸が・・くぅ、たまらん!!
このまま一気に頭をうずめようか!
いやそれどころじゃないだろ!
シルビアを横に降ろすと、俺の方が息が荒くなっていた。
「テツ、大丈夫か? それよりもありがとう」
「あ、あぁ・・」
俺は軽く返事をする。
こちらこそ、ごっつぁんです!
!
見ると、シルビアは弓をめいいっぱい引き絞っていた。
ん、さっきまでとは違うぞ?
シルビアの顔が真剣な表情になってヒュドラを見つめている。
ヒュン!
矢が放たれた。
だが、その矢は濃い紫色の軌跡を描くがいつもよりかなり太い。
ヒュドラに向かって飛んでいき、そのままヒュドラの首を
俺は思わず、
「シルビア、すごいじゃないか!」
そう口から言葉が出た。
続けて同じように大きく弓を引き絞り、第2矢を放つ。
太く濃い紫色の軌跡の矢が放たれる。
1度の矢で首が2つくらいは吹き飛んでいる。
もの凄い威力だ。
シルビアは動くことなく同じ動作を繰り返す。
顔つきがかなり険しくなっていた。
歯を食いしばりつつ弓を引き絞る。
矢を放つ。
同じように矢が飛んでいき、ヒュドラの本体に当たりヒュドラがバラバラに砕けていった。
しばらくして魔石だけが残り、光っていた。
シルビアは、魔力をかなり使ったらしくその場で倒れるように横になった。
自力で動くのはしんどそうだ。
俺はシルビアに近寄り、魔力回復薬を飲ませてやる。
頭を軽く支えて、口にゆっくりと流し込む。
・・・
すぐに回復したようだ。
シルビアは、バッと身体を起こした。
「テ、テツ! レベルが上がったぞ。 これで私もシャドウエルフになるんだな?」
俺の方を見ながら聞いてきた。
びっくりしたぁ。
しかし、俺に聞かれてもわからんよ。
シルビアもフレイアと同じく、転職などしたことがないのでわからないらしい。
フレイアの時と同じように、ステータス画面の職のところをタッチしてみろと言うと、転職できるようだった。
シルビアは迷うことなくパッと転職をした。
あのね、少しは迷えよ。
軽すぎるだろ。
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