第330話 ギルマスに報告、そして・・


時間は21時30分前だ。

船内にアナウンスが流れている。

ココはアナウンスで目が覚めた。


・・え? 

私、寝てしまっていたの?

驚き急いで椅子を元の位置に戻し、起き上がった。

椅子はどうやら眠ると、勝手にリクライニングになるようだ。

またパーソナルスペースも確保してくれるみたいだった。

椅子が戻り、視界を確保してテツを見てみた。

テツは椅子に座って何やら考えているようだ。

「お! ココ、起きたか?」

そういうとにっこりとしてうなずいている。

「テツ、今からギルドに報告に行くのでしょ?」

ココが言う。

「そうなるよな・・」

テツはそう答えるが、複雑な表情だ。


俺は考えていた。

人間だけ、いや地球人を優位に物事を考えていく街。

異世界人も、どうも変な選別思想を持っていそうな感じだった。

まぁ、どっちも似たり寄ったりの連中の集まりだったが、これから先が大変になるだろうと思う。

間違いなく、どこかで衝突が起きる。

話し合いでどうにか妥協点を見いだせたら、それに越したことはない。

だが、無理だろう。

それこそ歴史が物語っている。

エスペラントだったっけ? 

もう忘れそうになる国名。

馴染めない連中だったな。

俺はココと一緒に飛行船を降り、ギルドの受付へと向かう。


昇降装置を降りて受付へ行くとギルドマスターが待っていた。

俺達を見つけて手を挙げる。

「テツ君、ココ、お疲れ様」

俺も会釈をする。

ギルマスが中へどうぞと招き入れてくれるので、俺たちは奥へと入っていった。


飛行船を降りた時点で、ココとはパーティを解消しておいた。

もう、危険はないだろうから。


ギルド受付奥の部屋でギルマスが壁にもたれながら聞いてくる。

「どうだったかね? 王国との交流を拒否した連中は・・・」

ギルマスがニヤッとしていた。

俺は事実をそのまま伝えた。

「はい、まず街の名前ですが、エスペラント国なんて付けてました。 そして、その街を牛耳っているのが・・」

・・・・・

・・・

・・

ギルマスが難しそうな表情で両腕を組み、考えていた。


「なるほどねぇ・・俺たち異世界人とは同じ水を飲めないということか。 同郷の王国ではない連中は要注意だね」

ギルマスがうなずきながら言う。

俺は黙って聞いている。

「その連中も自分たちが利用されていることくらい知っているだろう。 ただ、王国には属さないという目的だけで仲良くやっているに過ぎない。 テツ君はその何ていう国だっけ? その国の実質上の運営者と会ったのだろう?」

「自称、運営者ですけどね」

ギルマスがうなずいて続ける。

「だったら、俺たちの同郷人も同じことをやっているだろうね。 さて、要注意だなこの地域は・・」

ギルマスが同じ言葉をつぶやくと、顔を俺たちに向けて壁から離れた。


「テツ君、ココ。 本当にお疲れ様、ありがとう。 今日はゆっくり休んでくれ。 ココは帝都ホテルに泊まるのだろう?」

ギルマスが言うと、ココはうなずいていた。

俺はギルマスと握手を交わすと、ココにお礼を言ってギルドを後にする。

「ココ、お疲れ様。 そして、ありがとう」

ココはにっこりと微笑むと帝都ホテルへと向かって行った。

その後ろ姿は疲れているようだった。

ふぅ・・何とも言えない妙な感じだな。

俺はそう考えながら、家へと帰っていく。


ばあちゃんの家の明かりは消えている。

時間は23時前だからな。

俺は自分の家に入り、魔法で身体をきれいにした。

ベッドに腰かける。 

やっぱ家は落ち着くな。

そう思うと、寝る前の習慣。

魔弾を少しだけ作った。

すぐ眠くなってきたので、そのまま就寝。

・・・・

・・

ゆっくり寝れたようだ。

静かな、気持ちいい感じのする朝だった。

時間は5時前。


俺は起き上がって大きく伸びをすると、リビングへ行ってコーヒーをれて飲む。

そういえば、スーパーエイトが出来てるはずだ。 

コーヒーを買っておかなきゃ。 

そんなことを考え、とりあえずばあちゃんの家に挨拶に行っておこう。


フレイアの家兼カフェもまだ始動前だ。

そのまま前を通過する。

ばあちゃんの家に到着、呼び鈴を押す。

「はーい」

少ししてドアが開かれて、ばあちゃんが現れる。

「おはよう、テツ。 どっか行ってたんじゃなかったっけ? まぁ、お入り」

そう言うと中へ入れてくれた。

部屋の中は・・変化してないようだ。

模様替えは落ち着いたのか?

そんなことを思うと席についた。

じいちゃんも起きている。

「じいちゃん、おはよう」

じいちゃんはうなずいてくれる。


ばあちゃんが黙ってお茶を出してくれた。

俺は一口飲むと、その暖かさに落ち着く。

「ふぅ、おいしいな・・」

「テツ、優たちって学校に行ってるんだよね?」

ばあちゃんがそんなことを聞いてくる。

「うん。 通い出したみたいだね。 俺も見学に行ってみようかとは思ってはいるんだ」

俺がそういうとばあちゃんは少し驚いていた。

「あんた、おっさんが学校へ行けるのかい?」

「・・いや、ばあちゃん。 誰でも通えるんだよ。 年齢は関係ないようだよ」

俺は複雑な気分だ。

「そうなのかい。 へぇ・・」

・・・

って、それだけかよ!!

まぁいい。


俺はお茶を飲みながら、日常生活をばあちゃんに聞いてみた。

何も問題はないようだ。

王宮では丁寧に扱ってくれるし、充実している。

スーパーエイトも支店を出してくれて、買い物にも困らないそうだ。

すべてにおいて、以前の世界よりも質の良い生活ができている。

ここがまさか空中に浮いてる都市なんて思いもしない。

人間関係もいいし魔法もある。

寿命で死ぬ以外に治らない病気なんてないんじゃないの?

なんてことを言っていた。

確かにそうかもしれない。


じいちゃんは、相変わらず生産職の現場でひたすら魔核などを作っているようだ。

たまに王様から武具なんかを依頼されるそうだが、その時にはドワーフたちのギャラリーが詰めかけるという。

初めは気が散るが、打っているうちに気にならなくなって、気が付くと拍手の嵐だそうだ。

じいちゃん、あんた自分の価値がわかってないだろ!!

俺は笑い合ったりしながら、ばあちゃんたちの話を聞いていた。

時間は6時前だ。

結構長く話したな。

俺はお茶を一気に飲み、ばあちゃんの家を後にする。


さて、ギルドへ向かってみよう。

特にすることもないけど、学校っていうのがどんなものか気になる。

この歳になって通うのもなぁ・・。

でも、基本などを教えてくれるのなら学ぶ価値はあるかもしれない。

そんなことを考えながら歩いていると、ギルドに到着。

ギルドの入口の大きい扉がスムースに開いて、俺を中へ迎え入れてくれた。

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