第329話 レアの報告と情報の修正


「・・なるほど。 それは良いことをされましたね。 ですが、少し不安要素も感じます」

アニム王が言う。

「ええ。 わたくしも感じますわ。 審議官でも連れて行って会議すれば、よくおわかりになりますわよ」

レアがツンツンとした感じで話している。

余程イライラしたと見える。 

アニム王はそう思って聞いていた。


「レア姫。 君の感じたままでいいのだが、その地域の地球人とは仲良くできそうかね?」

レアがゆっくりと首を横に振る。

「無理でしょうね。 フローラが魔核の使い方などを説明しても、どうもこの星の武器関連との連携ばかりを考えているようでしたわ。 生活に役立てようという感じではないですわね。 わたくしの勘ですが、おそらく衝突することになるでしょう」

レアの言葉に騎士団長とエレンが驚いた。

アニム王は静かにうなずいている。

「なるほど・・君の勘は当たるからね」

アニム王は顎に手を当てて何やら考えていた。

少しして、レアに声をかける。

「ありがとう、レア姫。 みんな疲れているだろうにすまなかったね。 帝都ホテルに部屋を用意してある。 ゆっくりしてくれたまえ」

レアはゆっくりとうなずいていた。

そして、席を立とうとしたがルナの言葉を思い出していた。

「そういえば、ルナ様。 初めに調査員のことを話されているとかおっしゃられていましたね」

レアがそういうと、アニム王がうなずいて答える。

「あぁ、テツのことかな?」


レアが少し驚いたような表情をする。

「その方はこの星・・地球人ですの?」

アニム王は大きくうなずく。

そして、言葉を出そうとするとルナが先に発言する。

「レレよ、テツにちょっかいを出すなよ。 あれは、私のお気に入りだ」


ルナの言葉にピクッとしたが、余計にレアに興味を抱かせたようだ。 

フローラたちも驚いていた。

「珍しいこともあるものですね。 まさかヴァンパイア、夜の王ともあろうあなたが人間、しかもこんな星の下等種族などに興味を持たれるとは、驚きですわ」

レアが言う。

ルナは笑いながら答える。

「フフ・・下等種族か、なるほどな。 だが、この地区の住人はレアの話を聞く限り少し違っているようだぞ」

そういうとウルダと一緒に席を立って出て行った。

その背中を見送り、アニム王にレアが聞いていた。

「アニム王、何があったのです? 帝都付近の住人は、わたくしたちの転移した先の住人と種族が違いますの?」

「そうだね、レア。 確かにこちらの星の見方でも少し種族は違うようだ。 だが、この地区の住人は、我々異世界人を分けて考えていないみたいだ。 それに、テツは興味深い人間なのだよ」

アニム王は微笑みながら話す。


レアは思う。

その笑顔を見ただけでわかる。 

信頼されていると。

「テツ様ですか。 わたくしもお会いしたくなりましたわ。 また機会を作ってくださいましね。 それからアニム王、飛行船に使われている魔核ですが、もの凄くよい感じを受けます。 余程素晴らしい錬金術師をお雇いになっておられるのですね」

レアがそういうと、アニム王が微笑みながら答えた。

「その方も地球人だよ」

レアは驚いていた。 

自分たちがいたところとは大きく違っている。

情報の修正をしなければいけない。

そんなことを考えながら、皆が席を立ちアニム王に挨拶をして部屋から出て行った。


エレンがまたレアたちを案内していく。 

騎士団長とアニム王だけが残った。

「アニム様。 レア姫のおられたところは、トリノがギルドマスターとして管轄しているはずです。 早速精細な調査をするように伝えます」

騎士団長はそういうと挨拶して退出する。

アニム王はうなずいて見送った。

テツ・・この星の住人とは仲良くしたいものなのだがね。

アニム王も政務に戻って行く。


◇◇

<ドワーフ国のギルド>


俺はココと一緒に飛行船に乗船していた。

飛行船の2階席にいる。

窓際の席に座り外を眺めていた。

時間は20時を過ぎている。

エスペラント国を出てからそれほど時間が経過しているわけではない。

「ココ、お疲れさんだな。 俺、帝都に着くまで横になっているよ。 おやすみ~」

俺はそう言うとシートを倒して休息に入る。


「あ、テ、テツ、よくこんな状態で寝れ・・」

ココはそこまで口にすると、やめた。

全くこの男、どういう風に考えているのかしら?

あんな嘘つきの連中の中で疲れてしまったわ。 

それにテツのレベルにも驚いたけど・・地球人でしょ?

いったいどうやったらあれほどのレベルを獲得できたのかしら?

そんなことを考えていたら、ココも寝てしまっていたようだ。

・・・・

・・・

「間もなく帝都に到着いたします」


◇◇


テツがエスペラント国を去り、しばらくすると北米の移動空母や戦艦が完成し、世界に向けて静かに発進していた。

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