第328話 レアの帰還



テツが帝都を出て調査に出掛けているとき。

帝都の飛行船の発着場に到着したレアたちがいた。

時間は15時頃だ。

「レア様、ここが帝都のようですね」

フローラが話す。

「そのようですわね。 アニム王国とよく似てますわ」

昇降装置に向かいながらレアが言う。

「結構人がいるんですね、レア様」

アウラがキョロキョロしながら移動している。


昇降装置に乗ってギルドのフロアに出た。

他の乗客と一緒の移動だったが、特に注目を浴びることもない。

昇降装置を降りてギルドの受付に向かって歩いて行く。

「おお、ここは受付が3つありますよ」

アウラが興味深そうに見ている。


レアが受付に行くと、待ち時間はないようだ。

受付にライセンスカードを出し椅子に座る。

「ようこそギルドへ、どのようなご用件でしょうか」

受付はアリアだった。

レアが微笑みながら聞く。

「あら、あなたは見かけたことのない受付ですわね。 エレンさんはおられませんの?」

アリアは驚いたようだ。

初めて見る顔の女の人がエレンさんの名前を知っている。

ライセンスカードはBランクだ。 

詳細は確認していない。

アリアがそう思ってパネルにカードを触れさせようとすると、奥からエレンが出てきた。

レアの声が聞こえたようだ。


エレンは焦る風でもなくゆっくりとした動作だが、足早にレアの横にやってきて深々とお辞儀をしていた。

アリアは驚いてエレンを見ていた。

まさかエレンさんがこんなに丁寧な応対をするとは・・誰?

言葉が出ない。


「これはレア様、よくぞご無事でいらっしゃいました。 ようこそ帝都ギルドへ」

エレンはにっこりとレアを見つめる。

「エレンさん、ごきげんよう。 わたくしたちの転移した付近の街と連絡船がありましたので伺いました。 それにその転移先でのこともお伝えしようと思いますの」

レアはそういいながら、アニム王のことを聞いている。

・・・・

・・

エレンが王宮まで案内するということで、アリアに軽く挨拶しギルドを出て行こうとした。


アリアが不思議そうな顔をエレンに向けている。

エレンはアリアにそっと言った。

「彼女は、レイドルド帝国皇女のレア様ですよ」

そういうとギルドを後にする。

・・・・

アリアはエレンの言葉を口で反芻はんすうして固まってしまった。


時間は15時30分くらいだろう。

エレンがレアたちを帝都王宮に案内していた。

王宮の入口でエレンが挨拶すると、問題なく中へ入れてくれる。

エレンに続く女の人たちを何気なく見ていたが、レアだとわかると皆その場で固まっていたようだ。

レアは別に気にするでもなくエレンの後をついて行く。


大広間に入っていった。

アニム王が席を立ち、レアたちの前に歩いて来る。

レアはきちんとアニム王に挨拶した。

「アニム王、レア・レイドルドただいま帰還いたしました」

レアの横に並んでフローラ、アウラ、エリス、メリッサ、セレネー達も片膝をついていた。

「レア姫、よくぞご無事で。 それにフローラ、アウラ、エリス、メリッサ、セレネーも無事でなにより」

アニム王はそれ以上言葉が続かなかった。

頬を見ると涙を流していた。


レアがそっと立ち上がり、アニム王にハンカチを差し出す。

アニム王は素直に受け取り涙をぬぐう。

セレネーは感動して大粒の涙を流していた。

みんな涙ぐんでいる。

「こんなフロアではなく、奥の部屋へ移動しよう」

アニム王がそう声をかけ移動する。

奥の部屋には騎士団長、そしてルナとウルダもいた。

騎士団長は入り口でレアたちに挨拶をして、エレンとともに席につく。

レアがルナを見て少し驚く。

「これはルナ様、どうしてここに?」

も無事で何よりだな。 今、アニム達と調査に向かった者の話をしていたのだ」

ルナがそう答え、奥にアニム王、その左側にレアたち6人、右側にルナとウルダ、入り口の付近に騎士団長とエレンという感じで席についていた。


ルナの言葉にレアは少しピクッとなりながらも姿勢を正す。

そして、ルナをしっかりと見つめる。

軽く咳払いをして言う。

「えへん。 ルナ様、毎度申し上げますが、レアです。 レア・レイドルドです。 レレではありませんわ」

レアはそういいながらにっこりとしている。

ルナもニヤッとして言う。

「だから言っておるではないか。 レア・レイドルド・・つまりはレレなのであろう」

・・・

変にピリピリと空気が張り詰める。

騎士団長の額に汗が流れていた。

決して暑くはない。


「さて、レアも無事戻った。 いろいろと聞きたいものだね。 その前に何か飲み物でもどうかね」

アニム王がそういって横を見ると、すぐに飲み物が運ばれてくる。

レアは運ばれてきた白いきれいなカップを手に取り、スッと口に運ぶ。

少し目を見開いてつぶやく。

「これは、おいしいですわ」

レアが言う。

「ありがとう、レア姫。 実はこの星のお茶という飲み物だよ」

アニム王が説明する。

「そうですの。 素晴らしいですわ」

レアは上機嫌のようだ。

ルナも普通に戻っている。


ふぅ、全く・・周りの迷惑を考えろよな、この女ども。

騎士団長の心の声です。


そんなレアをアニム王が微笑みながら見ている。

レアもゆっくりとお茶を飲んでいた。

少ししてレアが話し出す。

「アニム王、わたくしたちが転移してきたところですが・・」


帝都発着の飛行船は帝都と街とを1つの経路でつないでいる。

寄り道などはしない。 

街同士は相互に連絡しているのだろうが、それは街ギルドが行えばいい。

直通なのは帝都に出入りする飛行船の履歴が把握しやすいからだ。 

いつ、どこから来たのかすぐにわかる。 

何かあった時に対応が早い。

レアがどこから来たのかはわかっている。

こちらの言葉では北米だ。

その地域で、レアがしてきたことをいろいろとアニム王に話していた。

街を作ったり、システムの使い方をいろいろ教えたりなど・・。

・・・・・・

・・・

時間は17時を過ぎていただろう。

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