第325話 こいつら野心丸出しだな



マティアスが初めに口を開く。

「皆さん、テツさんの武器に興味をお持ちのようですね。 私もそうです。 先ほどテツさんにも伺いましたが、何の素材でできているのかわからないということでした」

俺もうなずく。

「でも、不思議ですわね。 テツさん以外、持ち上げることもできないのですもの。 もしかしたら、本人以外触ることもできないものも作れるのかもしれませんわね」

ソフィアが言う。

「ソフィア、あなたこそ抜け駆けしようって考えているのかしら」

「あら、心外ですわねアナ。 皆さんとご一緒にと考えておりますのに・・」


おいおい、こいつら野心丸出しじゃないか。

むしろ気持ちいいぞ。

俺は黙って聞いている。


「テツさんは、魔導国へ行かれるというお話でしたね」

やや赤い髪の女の人が聞いてくる。

「はい、えっと・・」

「マルガリータよ」

「すみません、マルガリータさん。 おっしゃる通り魔導国へ向かっている途中でこの街、いや国を発見したので立ち寄らせてもらいました」

「そう。 で、テツさんの今おられるアニム王国でしたっけ? そこでは、テツさんのお持ちのような武器などはたくさん流通しているのかしら」

このマリガリータって人、的確に要点だけを聞いてくるな。


「どうでしょうか、わかりません。 ですが、街はにぎわっているので、お店に行けばあるのではないかと思います。 私の武器は、本当にたまたま偶然にいただいたものですから・・」

俺の武器に関することは、わからないで答えておいた方がいいだろうと感じていた。

「そう、仕方ないわね。 そのうちに、アニム王国とやらに行ってみてもいいかもしれないわね」

マルガリータが言う。

「マルガリータさん、その時には私もご一緒させてくださいね」

マティアスが話しかけていた。


「テツさん、よろしいですか」

ハロルドが言う。

「はい、何でしょうか?」

「テツさんは、レベルはどのくらいになられているのでしょうか? 我々はまだまだレベル20半ばですがね」

こいつ、自分のレベルを言って相手の情報を引き出すつもりか?

だが、正直に答えることなどできるはずもない。

俺は少し迷いつつも答える。

「レベル20半ばとは凄いですね。 ですが、私の所属しているアニム王国のシステム上、レベルの公表はしてはいけないのです。 すみません・・」

俺はそういって、ライセンスカードを取り出して見せた。

みんな興味深々だ。

それぞれが手に取っていろいろと眺めている。

「それは、私の所属しているギルドで発行してもらったライセンスカードです」

カードには冒険者ランクと名前、発行元くらいしか見えないようになっている。

ギルドなどで、ギルマスが持つパネルボードがあれば別だが。

なるほど、情報に飢えているんだな。


「我々のところでも、異世界人に発行させたらいいんじゃない?」

「全員分必要なわけでしょ?」

「自分たちの情報が全部知られるのかな?」

・・・・・

・・・

カードを持ったり、見たりしながら話が盛り上がっていた。

「テツさん、このカードにどれくらいの情報が入ってるのかしら?」

アナスタシアが聞いてくる。

「さぁ、私も詳しくはわからないのです。 ただ、住民はみんな持っています」

俺がそう答えるとライセンスカードを返してくれた。


「まぁ、テツさんにあれこれ問い詰めても仕方ありませんね。 我々がテツさんの国に行けばいいのですから」

マティアスが言う。

「そうですね、マティアスさん」

ハロルドがうなずいていた。

「テツさん、我々ばかりが聞いてしまいましたが、何か聞きたいこととかありませんか?」

ハロルドが聞いてくる。


「・・そうですね、皆さんの国は異世界人と一緒に作られたということですが・・」

俺がそういうとみんなうなずいていた。

俺は続けて聞いてみる。

「先ほどから不思議に思っていたのですが、この場に異世界人はおられないようなのですが、どうしてでしょうか?」

それが不思議だった。

彼らの知識は我々よりも豊富だ。

なのに、なぜ一緒に会議みたいなものをしないのだろうと思っていた。


この部屋にいる連中がクスクス笑いながら、顔を見合わせている。

シュナイダーが口を開いた。

「テツさん、我々と異世界人・・確かに見た目はそれほど変わりません。 ですが、基本となる考え方が違うのです。 街などを作るときや運営のときなどは、一緒に話し合いさせてもらったりしてますが、こういった個人的な興味というか、趣向の場面ではどうも折り合いがつかないのです」

「彼らはなぜか魔法をとても重視するのです。 私たちとしては、魔法はツールのように思っていたのですが、一種の宗教のような感じを受けて少し距離を取っています」

ハロルドが言う。


「なるほど」

俺はうなずく。 

そして、もう少し聞いてみる。

「後もう一つ。 この国の近くにドワーフ国があると思うのですが、接触はされなかったのですか?」

俺がそう聞くと、皆少し固まったようだがすぐに普通に戻った。

シュナイダーが話してくる。

「えぇ、確かに異世界人の情報では、ドワーフ国があるという話を聞いていました。 確か、調査をするとか何とか・・私もよく把握していないのです。 申し訳ありません」

「そうですか、わかりました。 私も、魔導国へ出発するときにドワーフ国近くのギルドを経由して移動してきたものですから・・」

俺は話しながら反応を見ていた。

おそらく全員ギルティだな。

俺がそう思っているとココから念話が飛んでくる。

『ギルティ!』

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