第324話 再びシュナイダーの館へ



「えぇ、まぁ・・」

俺はぼんやりと答える。

シュナイダーはその間を逃さずに声を出した。

「皆さん、テツさんのご紹介も終わりました。 それにテツさんは到着されたばかりでお疲れのはず。 そろそろこの辺りで解散したいと思いますが、いかがですか?」

シュナイダーがそう言うと、皆納得したようだ。

それぞれが立ち上がり、挨拶をし合って部屋を出て行く。


俺も立ち上がり挨拶を交わす。

「テツさん、またね」

女の人たちは軽く話しかけてくる。

おっさんたちは握手をして出て行った。


発言をしなかった男二人が俺の前に来た。

「テツさん、ハロルドです、よろしく」

握手を交わす。

「よろしくお願いします」

そういうと、ハロルドは片手を挙げて出て行った。

「マティアスです」

ハロルドと同じく握手だけして出て行った。

俺も挨拶だけはした。


年齢層もバラバラだな。

そんなことを考えていると、シュナイダーが話しかけてくる。

「テツさん、何か尋問みたいになって申し訳ありません。 よければ、私と一緒に食事でもいかがですかな」

もしかして、このシュナイダー・・ここまで計算していたのか?

まぁ、特に断る理由もない。

だが、俺はこのシュナイダーとの会食が終われば、街を出ようと考えていた。

こんなところにいたくない。


「えぇ、ありがとうございます。 お言葉に甘えてお邪魔させていただきます」

俺の返答にシュナイダーはにっこりとして案内してくれる。

建物の外に出ると、シュナイダーのところへ案内してくれた女の人がいた。

「テツさんを私の屋敷に案内してくれ」

シュナイダーがそういうと、女の人は軽くうなずいて俺を先導してくれる。

「テツさん、私は他の代表たちに挨拶してからすぐに帰りますので、申し訳ありませんが、先に屋敷でお待ちいただけますか」

シュナイダーは申し訳なさそうに俺に言う。

俺はシュナイダーを背中に、案内の女の人について行く。

やっぱり俺の目はフリフリお尻が気になってしまう。

『ギルティ!』

ココがすかさず念話と飛ばしてくる。


シュナイダーは他の代表達のところへ来ていた。

「おぉシュナイダー、彼は帰ったかね」

「えぇ、ロレンスさん。 今、休憩してもらっているところへ案内させています」

シュナイダーは言う。


「それにしてもあの武器は・・是非とも情報が欲しいな」

「ペトロフさん、同感です。 こんなことになるなら、街ができた当初に来た使者を受け入れたら良かったですな」

シュナイダーは答える。

「あぁ全くだ。 だが、あの時は、この街ができたばかりでよくわからなかった。 それに異世界人が使者との接触を極端に嫌っていたからな」

「そうですなゼーマンさん。 本当に惜しいことをしました。 しかし、これから・・あれ、マティアスさんとハロルドさんの姿が見えませんが・・」

シュナイダーが答えていると、

「あの若造どもは先に帰ったよ。 ITの成金は協調性に欠けるな・・」

「ペトロフさん、まぁ若い人たちですから・・」

シュナイダーがそう言ってなだめていた。

・・・・

・・・

さて、こんな特権意識の強い連中の相手の時ではない。

早く戻って、あの男からいろいろ情報を引き出さなければいけない。

シュナイダーは早々にその場を切り上げていた。


シュナイダーが家に帰り、中に入ると姿勢の良い男が近づいてきた。

「あの男は帰って来ているのか?」

シュナイダーは静かに聞く。

「はい、帰ってきております。 後、お館様。 ハロルド様とマティアス様、それにソフィア様、アナスタシア様、マルガリータ様がおいでです」

男の報告を受けたシュナイダーは驚いた。


まさか、あの若い連中が来ていようとは・・。

しかし、よく私の屋敷に来るとわかったな。

シュナイダーは少し警戒レベルを引き上げた。


食堂の部屋の扉が開かれる。

中から楽しそうな声が聞こえてきた。

シュナイダーは部屋に入りながら、

「これは、これは、楽しそうなお声ですな」

そう声をかけ自分の席に向かって行く。

シュナイダーが席に着こうとすると、ソフィアが言う。

「シュナイダーさん、抜け駆けは良くなくてよ」

「ソフィアさん、抜け駆けとは手厳しい」

気にする素振りも見せずに席につき、シュナイダーは微笑みながら答える。


「シュナイダーさんが帰られるまで、いろいろお話させてもらいました。 日本もそうですが、世界中で同じようなことが起きているようですね」

ハロルドが言う。


シュナイダーは壁際に立っている女の人に顔を向ける。

女の人が近寄ってきた。

「人数分の食事を用意してくれ」

小さな声で女の人に言った。

女の人がゆっくりと下がって行く。

「さて皆さん、食事が来るまでいろいろ情報を交換しましょう」

シュナイダーが言う。

この場にいた皆がにっこりとして大きくうなずいた。

無論、俺達以外だが。

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