第323話 まるで裁判所みたいだぞ



俺がそんなことを思っていると、シュナイダーが俺に話し始めた。

「テツさん、ココさん、今この場にいる者たちがこの街、いや国と言った方がいいでしょうか、代表者たちです」

全員が微笑みながら軽く頭を動かしていた。


まずは男の声で質問される。

「君は、日本人だというが日本も魔物が現れたのかね?」

俺が声のする方を向くと、シュナイダーが横から名前を言ってくれる。

「ゼーマンさんです」

俺はそれを聞き答えた。

「そうです、ゼーマンさん。 日本も魔物に襲われました」

俺の言葉に少しざわつく。

・・どこの国も同じか・・

海の向こうも・・

・・

「君は、魔導国の調査をするために移動中だったとか・・」

またまたシュナイダーが教えてくれる。

「ペトロフさんです」


「はい、そうですペトロフさん」

本当に尋問だな・・俺はそう思いつつも答えていった。

「魔導国は、異世界人に聞けば人の住める場所ではないという、そんなところを調べるのかね」

ペトロフは俺を見定めるように話してくる。

「ペトロフさん、それを調べに行くのです」

俺はそう答える。

ペトロフはうなずきながら笑っていた。

「いや、失礼したね。 もっともだ」

ペトロフが椅子に深く座り直す。


「テツさんでしたね。 アニム王国という国の冒険者ということですが、どんな国なのですか?」

またまたシュナイダーが教えてくれる。

「アナスタシアさんです」


「はい、とてもいい国ですよ、アナスタシアさん。 私のいた日本よりもいい国ですね」

俺は正直に答えた。

「まぁ、日本よりもいい国ですか・・それは素晴らしい。 私も行ってみようかしら」

「アナ、あなたねぇ・・」

笑い声が聞こえる。

『ギルティ!』

!!

俺は少し驚いたが、表情には出さない。

ココは目を閉じ念話で話してくる。


「テツさん、あなたはドワーフの武器というのを持っているようだが、見せてもらってもいいだろうか?」

またまたシュナイダーが教えてくれる。

「ロレンスさんです」

はぁ・・もうしんどいな。

俺はそう思ったが、まぁ仕方ない。

「えっと、ロレンスさんですね。 いいですよ」

俺はそう言って立ち上がる。

ゆっくりと刺激しないように歩いてゆき、飛燕をテーブルの上に静かに置いた。

見た目は普通の刀を置く動作だ。

俺は後ろに下がり、元の席に戻る。

シュナイダー以外の男たちは飛燕に近づいて行く。


女の人たちは別に興味もないようで、俺に手を振ったりしてくれていた。

俺も手を振り返す。

壁際のボディガード達は動かないな。


「こ、これは・・」

「まさか・・こんな・・」

・・・・

・・

飛燕の周りでザワザワと騒ぎ出した。

おっさんどもの顔が真剣になっている。

ビクともしないようだ。


おっさんの一人が壁際の男に目配せをした。

ボディガードらしい男が来てうなずいている。

その男が飛燕に近寄っていった。

レベルは28だ。

俺はもしかしたら動くかも・・なんて思ってみていた。

同じだった。

男は片手でつかんだが、全く動かせない。

両手で持つも結果は同じだ。


他のボディーガードも呼び寄せられて、5人で持ち上げようとしていた。

飛燕の握り手のところに二人。

つかの先に二人。

真ん中に一人で持ち上げようとする。

・・・・・

・・・

男たちの顔が真っ赤になってきていた。


そういや、白人系って顔が真っ赤になるよな。

俺はそんなことを思いながら、もしかしたら飛燕がわざと嫌がってるのかもと思ってしまった。

・・・・

どうやらあきらめたようだ。


ボディガード達は何事もなかったかのように同じ位置に戻っていったな。

おい、肩で息をしているぞ!

ここで笑ったらダメだろうな。

「「「あははは・・・」」」

女の人たちの笑い声が聞こえた。

「あなたたち、大したことないわね」

女の人たちはゲラゲラと笑っている。

男たちは椅子に座り直していた。


俺も立ち上がって飛燕を取りに行く。

俺が片手でスッと飛燕を持つと、皆が目を丸くしていた。

席に戻って座る。


シュナイダーが話し始めた。

「テツさんの持たれている武器ですが、ドワーフが作った彼専用のものらしいのです」

シュナイダーの言葉の後に、おっさんが口を開いた。

誰だっけ?

俺はすでに名前を忘れていた。

「シュナイダー、そういえばドワーフのところへ向かった連中はどうなったんだ?」

シュナイダーの顔が一瞬固まったようだった。

「ペトロフさん・・まだ、連絡がありません」

シュナイダーが苦虫を噛み潰したような顔をしている。


どうも部外者に聞かれたくない話だったようだ。

やはりこの国からの連中だったか。

俺は表情を変えることなく聞いていた。


「それにしてもテツさん。 その武器は凄いですな。 あなたしか持てないのですからな」

ペトロフが話してきた。

いや、俺だけしか持てないわけじゃないんだが。

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