第322話 シュナイダーに案内されて



シュナイダーの家の前に到着。

そのまま庭へ入って行くと、向こうからシュナイダーが歩いてきた。

「テツさん、わざわざありがとうございます。 ここからは私がご案内いたします」

シュナイダーはそう言うと軽く顔を動かし、女の人は去っていった。


「どうぞ、こちらです」

シュナイダーが俺のやや前をゆっくりと歩いて先導してくれる。

歩きながらシュナイダーはいろいろ話してくれた。

自分のいた国での生い立ち、苦労して今の財産を手に入れたこと。

やっと安定して生活ができるようになり、自分と重なる子供たちの支援をしていたことなど。

・・・

・・

だが、いきなりこの世界になり何をしていいのかわからない。

使用人たちの中にこの状況に対応できるものがいた。

その者の知識を得て何とか脱出できた。

どの街も魔物が発生し、ほとんどの住人が消えてしまったそうだ。

特に人の多い都市部ではひどい状況だという。

軍も出動してくれたがあまり役に立ちそうもない。

せめて軍が魔物の足止めをしてくれている間に、動けるものは着の身着のまま逃げた。

シュナイダーも自分の私設軍隊というのではないが、それに近いものを持っており守られながらこの地域にやってきた。

すると小さな集落がある。

近寄ってみると、なんと資産家仲間がいるではないか。


彼らと情報を交換しながらこの辺りで拠点を作ろうとなった。

初めは小さな掘っ建て小屋程度の集落を作っていたが、どうやら魔法が使えることがわかってきた。

仲間で建設できるものがいる。

そういったものが城壁を作り街を囲ったりしていると、どんどん人が集まって来る。

それに応じていろんな能力者が出てきたという。

そういった人たちと協力するうちに、異世界人が転移してきた。

それから一層街が堅牢に作れるようになり、現在に至っているという。

・・・・・

・・・

「・・とまぁ、そんなわけで、まだまだ完成している街とはいかないのですよ」

シュナイダーが苦笑いしながら言う。


「シュナイダーさん、これだけの街を作れるのは凄いものだと思いますよ」

それは俺の正直な感想だ。

「いやいや、ありがとうございますテツさん。 それから我々はこの街に、エスペラント国と名前を付けております」

シュナイダーはそう言いながら建物の入口に来た。


俺はそれを聞いて答える。

「エスペラント・・あの世界共通語とかいうやつですか」

「よくご存知ですな、テツさん。 まぁ、人間が協力して生きて行ける場所と思い、皆で命名したのですがね」

シュナイダーは微笑みながらドアを開けてくれた。

俺達は中へ入らせてもらう。

シュナイダーも俺達の後を入ってくる。


中でいた人が近寄ってきた。

「お帰りなさいませ。 それにお客人もようこそおいでくださいました」

丁寧にシュナイダーの帽子を受け取り、そのままシュナイダーの少し前を歩いて行く。

「皆様、もうお待ちになっております」

近寄ってきた男がシュナイダーにそう告げる。

シュナイダーは軽くうなずきゆっくりと歩いて行く。


奥の立派な扉の前にきた。

シュナイダーの前を歩いていた男がゆっくりと扉を開ける。

「テツさん、ココさん、どうぞ」

シュナイダーが手で案内してくれる。

俺達と一緒に中へ入っていった。

後ろでゆっくりと扉が閉じられる。


「シュナイダー、そちらが外から来られた方たちか」

今、俺が立っているところから見て、右側の人が話しかけてきた。

「ええロレンスさん、そうです」

シュナイダーが答える。

「シュナイダーさん、まずはお座りになられたらいかがですか」

きれいな声が聞こえる。

「ソフィアさん、ありがとうございます」

シュナイダーがそう答え、俺達を案内してくれる。

「テツさん、ココさん、こちらへどうぞ」

どうやら俺達が座る椅子もあるようだ。


俺の偏見かもしれない。

普通、西洋系の富豪はアジア人など相手にしないはずじゃなかったっけ?

昔、英国大使館の職員に俺の友人がいて、ミレニアムパーティに招待されて行ったときのことだ。

食事やダンスがあるときに、俺達日本人が前に出て行くと英国人は誰も出て来ない。

だが、俺たちが下がるとみんな出てきて踊ったり、食事を取りに来たりしていた。

それに、俺たち日本人の座る場所は通路につくられたテーブルだったからな。

まぁ、そんなものかと別に腹も立たなかったが。

そういう経験があるから、意外な感じを受けた。

意外な感じじゃなかった。


大きな半円テーブルを囲んで全員が俺を見れる位置に座っている。

裁判所か?

まぁ、シュナイダーが俺の近くに座るが後はみんなほぼ対面に近い。

シュナイダーを含め全員で10人いる。


俺は席に着いて全員をながめてみた。

ピ、ピ、ピピ・・・。

全員がレベル22~24程度。

だが、それぞれの後ろ、壁際に立ってる連中が気になる。

ボディガードだろうか。

レベルが27~28でそろっている。

結構なレベルだ。

どうやったかは知らないが、さっき尾行していた奴と同じような感じだ。

そういえば、奴は扉の外でもいるようだが。

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