第318話 ドワーフの武器



男は女を見て大きくうなずくと、俺に話しかけてくる。

「そうですか。 テツさん、今日は旅の疲れもあるでしょう。 どうぞ、我々の街でも見ながら、ご休憩されてください」

『ギルティ!』

ココがまたも念話でつぶやく。


ここで断ったらダメな感じだな。

それに、ドワーフと言ったときに反応変わったよな。

確か、あのドワーフの国を襲撃したのって・・。

そこまで一気に頭に浮かんだが、目の前の状況に対応しなくてはならない。

「そうですか・・では、お言葉に甘えて休憩させてもらってもいいですか? あ、お金は帝都のギルしか持っていませんが・・」

俺はそう返事をすると、

「いえいえ、問題ありません。 今日は、こちらに立ち寄られた記念に私どもで接待させていただきます」

男は横を向くとうなずく。

女の人が俺たちを案内してくれるようだ。


俺は男たちに見送られながら、女の人の後をついて行く。

どうやら武器は持っていても問題ないようだ。

というか、誰もが扱いに困るみたいだからな。


女の人が、高級そうなビルに案内してくれる。

この女の人、フレイアやルナを見ていなければそれなりに美人だろうな。

お尻をフリフリ歩いている。

『ギルティ! このスケベ!』

ココからの念話が頭に響く。

ココさん、あのね・・。


建物に到着。 

2階建のようだ。

こういった建物は地球的だな。

俺はそんなことを思いながら、女の人の後をついて行く。

建物の中に入ると通路にガラスの扉があり、きれいな作りになっている。

床は赤い絨毯じゅうたんが敷き詰められていた。

俺なんかが、とてもじゃないが泊まれるような場所じゃない。

通路から少し奥の部屋の前に来ると、女の人が扉を開けてくれた。

「こちらの部屋をお使いください。 後、何かありましたら、内線がございますのでいつでもお呼びください」

それだけ言うと、扉を閉めて行った。


「ふぅ・・」と、俺が声を軽く出しながらココに念話を送る。

『ココ、表情を変えずに聞いてくれ。 おそらくこの建物は監視されている』

俺がそういうと、ココは何も聞いてない感じで俺の横のベッドに腰かけた。

「テツ、ここは殺風景ね」

ココも普通の会話を口にしながら念話を飛ばしてきた。

『テツ、監視されてるってどういうこと?』

『あぁ、ここの住人は全員信用できない。 俺がドワーフのことを言った瞬間の連中の顔を見ただろう? 欲の塊の連中だ。 それにこの部屋もどこかで見られているな。 息遣いまで監視されていると思った方がいい』

俺の言葉をココは了解してくれた。

『そうなんだ・・。 わかったわ』


「本当に殺風景だな。 この街ってどんな街なんだろうな? ちょっと疲れたし、俺少し寝るよ」

俺はそう言葉に出しながらベッドに横になってみた。

軽い軟禁状態だな。

仰向けに寝ながら、部屋を見てみる。

結構広い部屋だ。

全員のレベルは20前後といったところだった。

自称異世界人はレベル25だったよな。 

ただ、他にレベルの高いのがいるのかもしれない。

それはわからないが、アニム王に報告しておくか。

時間は13時。


アニム王に念話を送ってみた。

『アニム王、テツです』

アニム王からはすぐに返信がある。

『やぁ、テツ。 どうかな、交流を拒否した街は?』

アニム王、軽いな。

『はい、アニム王の世界の人間がいるようですが、どうも優越感というか上から目線のやからでしたね。 それに、ドワーフ国の名前を出したら表情が変わりましたよ』

俺がそういうとアニム王が答える。

『なるほど・・』

アニム王は何やら考えているようだ。


『どうかしたのですか?』

『うむ。 そういった国はいくつかあったなと思ってね。 そして、やたらと武力を持ちたがる傾向があった。 ただ、ドワーフは相手にしてなかったようだが。 とにかく無理はしないでくれよ』

アニム王が言う。

『はい。 それで今、ココと一緒に建物の一室にいて・・軟禁状態です』

『あはは・・いや、すまないテツ。 相手からすれば、疑わしい存在だろう』

俺の返答にアニム王はカラカラと笑いながら話す。

『わかったよ、テツ。 くれぐれも無茶をしないように』

そう言うと念話を切った。


『ココ、俺は寝ているふりをしておくよ。 それに今、アニム王に念話で軟禁状態だと伝えておいた』

『そう、わかったわ』

ココにそう伝えると、俺は本当に少し寝ていたようだ。


◇◇


テツたちのいる建物の隣の施設。


大きな部屋の中に椅子に深く腰掛けてくつろいでいる男がいた。

年齢は60歳くらいだろうか。

身なりの良い感じを受ける。

「どうだ、あの男たちの様子は?」

「横になったまま、眠っているようです」

見たままの答えが返ってくる。

まさか念話しているなどとは思いもしないだろう。

男は考えていた。

冒険者ランクBと言われ、ライセンスカードも提示された。

それ以外の情報はない。

異世界人に聞くと、ランクBの冒険者はベテランレベルだそうだ。


ただ、あの武器がわからない。

誰も持ち上げることができない剣。

今までの地球上の理論ではありえない代物。

異世界人の話では、ドワーフの武器にはそういうものもあると聞き、話はそこで終わっていた。

だが、この男は違った。

わけのわからない能力を付加するもの。

しかも、持ち主専用ときている。

欲しい!!

何としても、その情報が欲しい。


つい先日も、異世界人の後押しもあってドワーフのいるらしき場所に部隊を派遣したばかりだが、まだ何の連絡もない。

元軍人の隊長以下、1000人規模の部隊を送りこんだ。

良い情報を待っていた。

だが、なかなか帰ってこない。

そんな時、ふらりとこの男が現れた。

・・・・

情報では、ドワーフという種族がいて特殊な道具を作るという。

そんな話を異世界人に聞かされていた。

本当か?

疑問だったが、先ほど確信に変わった!


そんな特殊なものを作ることができるなら、是非とも自分の陣営に組み込みたい。

そして、自分の領土を拡大して帝国を築きたい。

そんなおぼろげながらも、この男は子供じみた青写真を描いていた。

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