第317話 警戒されたか?



話を聞いていると、どうも何か腑に落ちないところがある・・なぜだろうか。

俺はそればかりを考えていた。

・・・

・・

何となく感じる、自己優越感、選別思想。

そんな匂いがする。

そういった連中の集まりか。

頭の中で予測を立てつつも、黙って聞いていた。

・・・・

・・・

「・・というわけで、今に至っております。 あなた・・テツというお名前でしたね。 失礼ですが、冒険者ランクなど、よろしければ教えていただけないでしょうか?」

脂ぎった男は微笑みながら聞いてくる。

俺の名前を呼ぶな!

気持ち悪いだろ。

心の声です、はい。


ライセンスカードにもあったと思うが、えて口から言わせようということか?

しかし、ギルマスが持つようなボードでもなければ、詳しく知られることはないだろう。

俺はその脂ぎった男を見ながら答える。

「はい、私はBランク冒険者です」

男はそれを聞くと目を少し大きくしたが、すぐにうなずいていた。

「そうですか・・わかりました。 失礼しましたね」

その男の横では、地球人だろうか。

ザワザワと話している声が聞こえる。

・・Bランクってなんだ、どれくらいのレベルなんだとか言っている。

はっきりとは聞こえない。


俺はそれらを聞きながら、この場の全員を注意して見た。

どうやら全員レベル的には20前後くらい・・自称異世界人はレベル25か。

それに、こいつ全然人のいうことを信用してないなとも思った。

俺はその応対の中、一つ聞いてみた。

「あの・・この国は、魔導国ではないのですか?」

俺がそう聞くと、男の顔が険しくなる。

そして続けて聞いてみる。

「実は、私は魔導国の場所などを確認する仕事を請け負っておりまして・・」

俺は反応を観察する。

ココはずっと目を閉じたまま黙って俺のそばで立っている。


相手は俺を品定めするような目で俺たちを見つめる。

・・・・

・・

「なるほど・・そうですか」

周りにいる人たちとうなずき合いながら、脂ぎった男が答えてきた。

「テツさん、この国は残念ですが魔導国ではありません。 魔導国というと、あの魔女シェルファの国ですね・・我々も警戒しております」

!!

『ギルティ』

ココが念話で俺に話しかけてきた。

一瞬驚いたが、表情には出さずにいた。


男たちはザワザワと話しながら、勝手に納得してくれたようだ。

だがこいつら、どうにも仲良くなれそうもない。


「テツさん、この国は特に何もありませんが、よければ旅の疲れを癒してください」

脂ぎった男はそういうと、横の女に顔を向けた。

『ギルティ!』

またココが念話を送って来る。


女の人が俺に近寄って来る。

「テツ様でしたね・・一応、この国に入国されるのでしたら、武器をおあずかりいたします。 よろしいですか?」

女の人が両手を前に出してくる。

「・・・・」

俺が何も言わずに女の人を見ると、俺の腰のところを笑顔で見た。

なるほど、飛燕か。

「あの、この刀ですが・・」

俺がそういって片手で刀を取って前に出す。

まだ、女の人には渡していない。


女の人は両手でその刀を受け持とうと構えている。

「あのこの刀、もの凄く重いというか・・」

俺の言葉など聞いていないようだ。

女の人はニコニコしながら早く出せという感じだ。

・・

仕方ない。

俺はそう思い、ゆっくりと飛燕を放していった。


ドサッ!

当然だな。

ドワーフのおっさんでも持ち上げられないんだ。

普通の人間が持ち上げれるはずがない。

まして、レベル20前後ではな。


女の人は飛燕に引きずられるように倒れ、前のめりでうずくまっている。

その姿と音に、その場にいた全員が驚いた顔をしていた。

「おい、何を遊んでいるんだ?」

俺に質問をしてきた脂ぎった男の横の人が言う。

そう言いながら、みんなで女の人に駆け寄る。

全員で刀を持ち上げようとするが、ビクともしない。


全員に指示していたおっさんも近寄り、

「ほんとに、あなたたちは一体何をして・・」

そういいながら、刀を持ち上げようとするが、顔が引きつっている。

「あれ? 何だこれは・・」

・・・・

みんなで、う~ん、う~んとうなっている。

綱引きじゃないんだぞ、なんて思いながら俺が近づいて行って飛燕をヒョイと持ち上げた。

みんなその場で、はぁはぁと言いながらこちらを見ている。

警戒されただろうな。


「この武器は、私専用の武器なのです」

俺の言葉に反応することなく相手がやや恐怖の色を宿した目で俺を見る。

「なんというか、その・・ドワーフに作ってもらった武器なのですよ」

俺はとりあえずそう言ってみた。

!!

男たちの反応が変わった。

それぞれが立ち上がりながら、ザワザワと小声で話している。

脂ぎった男が俺に近寄って来る。

顔を近づけるな!! 

斬るぞ!

心の声です、はい。


「テツさん! ドワーフと接触したのですか?」

男が興味深そうに俺に聞く。

「いえ、私のところのギルドとかと交流があるらしくて、それで・・なんといいますか、交流記念というか、そんなことでいただいたのです」

俺は適当に話を作った。 

少し苦しかったか?

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