第311話 ダンジョン30階層、縁があるな



そういえば、こいつ巨体のくせにジャンプするんだよな?

ありえない動きにビビッてしまったが、予備知識があれば身体が硬直することもないだろう。

気分的にゆとりがある。 

大丈夫だ。

俺はそう思い身体を確認する。

経験値を獲得しました、は聞こえるがレベルが上がらないな。

そんなことを少し考えてみた。


よし!

ヒュドラまで100メートルくらいになっただろうか。

かなりでかい。

あの巨体が飛ぶんだよな?

うぇ・・気持ち悪い。

サーペントの頭5匹分くらいはある。

器用に身体をくねらせながら近づいて来る。

その不自然な動きに油断するだろう。

前には進んでいるようだが、かなり遅い。

この巨体がジャンプするんだからな。

ありえねぇ・・そんなことを思っていると、

身体をシャクトリムシみたいに縮め、そのまま俺の方へ飛んできた。


予備知識があるので落ち着いて対応ができるが、初見なら驚いてダメだろう。

俺は横に飛んで避けた。

俺のいたところに着地。

ドーーーーーーーーーン!!!!!!!

大きな重い音と振動が発生。

ベコッと地面はへこんでいた。

いったい何がしたいんだこの蛇は?

そう思いつつも、魔法を纏わせた蒼く光る剣でヒュドラに斬りつける。

ザン!!

ヒュドラの2つの首が飛ぶ。


ギィェエエエエエエエエーーーーーー!!


怒っているようだ。

そりゃそうだろう。 

首を飛ばされたんだからな。

しかし、気になどしていられない。

いくら動きが鈍いからといって油断をしてはいけない。

それに確か毒を吐いたり、多彩な攻撃をしてくる魔物だったように思う。

だが俺は、連続で魔法剣を繰り出す。

縦、横、縦、横・・・・ダダダダダ・・・・。


ヒュドラはバラバラになり、肉片がウネウネしながら蒸発していく。

尻尾が最後まで残ってウネウネしていた。

気持ち悪い。

蛇系は気持ち悪いが、本当に相性がいいようだ。

うぇ・・。

ヒュドラの魔石を回収すると、そのまま帰路についた。

これだけあれば大丈夫だろう。

レベルはまだ上がらないな・・少し残念な気持ちになる。


ダンジョンの帰りは何の支障もなく、移動できる。

40階層クラスでは、俺とフレイア以外の人間には出会ったことはない。

30階層クラスでもなかったような気がする。

いや、30階や31階にはいたのかもしれない。

前にギルドに30階層がとんでもないことになっていたなんて騒がれていたからな。 

誰か見たのだろう、俺のスーパーノヴァの跡を。


俺は移動のみに専念している。

普通、冒険者がいても見捨てている。

自分の力量に合わないものは、それは仕方ないだろうと思う。

そんなのをいちいち助けていたら、キリがない。

いや、キリはあるだろうが俺の柄じゃない。

ただ、今30階を突っ切っているのだが、この赤い砂漠の何もないエリア。

視界がいいんだよ。

俺の視界に入るものがある。 

冒険者だ。

知らない冒険者なら見捨てるが・・見たことがある。


俺は移動速度を一気に落としてゆっくりと近寄ってみる。

プローメスだ。

あのギルドでよく声をかけてきてた、色っぽいねーちゃん。

別に嫌な感じの人じゃなかった。

パーティメンバーを募集していて、人を選ぶみたいなことを言っていた記憶がある。

どっかのおっさんは俺は選んでくれないとか言ってたような気がするが、そんなことはどうでもいい。


プローメスを中心に4人が正方形のような感じで広がっている。

前2人は戦士系だろうか。 

大きな剣を持っている。

後ろ2人は補助魔法系なのかな? 

おそらく回復系も用意しているだろう。

プローメスが魔法を使って攻撃と防御をしているみたいだ。

パーティメンバーの居る位置は、入り口から結構離れている。

戻るにしても、全員でとなるとしんどいだろう。

何といってもパーティの前面にバジリスクが2体。 

後ろからも1体迫って来ていた。

レベル31×2、レベル30×1の3体だ。

・・危ないんじゃないか?

隠れるところもないしどうするのだろう。

俺はそう思い見ていて、そして迷っていた。


仮に俺が割り込んでいくと、経験値の横取りなんて言われて恨まれたら嫌だしな。

しばらくはかわいそうだが様子を見て、あまり時間が長くかかる様なら、気の毒だが見捨てよう。

そんなことを頭に浮かべながら近くまで来ていた。

俺の存在が気づかれることはないようだ。

・・・

なるほど、必死だな。


「ちょっとぉ、前衛のあなた! もう少しバジリスクに近寄って先にダメージを与えてもらえない? バフはつけてあるんだし」

プローメスが声を大きくして言っている。

「わかっている。 だがな、あの大きさをみたら情けないが、身体が前に動かないんだよ」

「そんなこと言ったって、もう目の前に迫ってきているわよ! どうするの?」

プローメスはそう言いつつ、後ろを振り返る。

「あなたたち大丈夫?」

「えぇ・・何とか。 しかし、それほどは持ちませんよ」

後衛の魔法使いらしい人たちも魔法をかけているようだ。

それに一人は回復系みたいだ。

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