第286話 白いうさぎ?



俺はコートをまとい準備をする。

時間は17時30分を過ぎていた。

飛行船が南極のギルド施設らしいところに到着した。

ここのギルドは大きくはない。

そりゃ、交流が存在しないからな。

ただ、拠点として存在意義があるのだろう。


飛行船から降りると、誰もいない静かな空間が広がっている。

基本的な施設だけが設置されたようだ。

発着場と階層で分かれていない。 

人の行き来がないからそんなものか。

通路を歩いて行く。

通路の先にはギルドの受付施設だ、誰もいないが。

なんか、寂しいな。

こういったモヤモヤした寂しさ。

まぁ、時間とともに薄れていくが、心がつぶされそうだ。

俺は、ふぅ・・と息を吐き外の景色を見た。

ブリザードだ。

猛烈な風のようだが。


えっと、クイーンバハムートの居城は確か・・このギルドからまっすぐ行けばよかったはずだ。

ライセンスカードを出して、マップを表示させてみた。

カードの上にホログラムのように現れる。

自分のいる位置を中心に、マップが広がっている。

クイーンバハムートのいるであろう居城を軽くタッチして、その方向性を確認。

ライセンスカードを見ながら、ギルドの建物の外へ出る。

猛烈な風が吹いている。

だが、コートのおかげだろう。

俺の身体周りは穏やかなものだ。

寒さも感じない。

これはありがたい。


俺はマップに表示されたところへ向かって歩いて行った。

これって、普通だったら歩ける状態じゃないな。

南極観測隊なんか、大変だっただろうな。

そんなことを思いながら歩いて行く。

10分くらい歩いて行くと、氷の城壁がいきなり目の前に見えた。

俺は驚いた。

吹雪の中、視界がほとんどないからな。

城壁に沿って歩ていると、入り口らしきところが見えた。

目の前に来ないとわからないが。


「おじゃましまーす」

俺は一応言葉をかけて入っていく。

城壁をくぐると、中の景色は一変した。

風も雪もない。

俺はライセンスカードを収納し、辺りを見渡す。

氷の景色だ。

城壁は氷でできているのか、凍っているのかわからないが凍結している。

街のような感じはない。


城壁から500メートルくらい離れたところだろうか。

居城が建っていた。

ちょうど、城壁の中心に城があるような感じだ。

大きな城ではない。

人のビルでいえば、二階建てくらいの大きさだろうか。

俺はそれを目指して歩いて行った。

ゆっくりと歩く。


!!

ウサギか?

まさかな。

白い、小さな動くものが見えた気がした。

索敵をしてみる。

・・・

何も引っかからない。

気のせいか。


すると、俺の真横に颯くらいの白い服を着た子供がいた。

!!!

「うわ!!」

思わず、声が出た。

びっくりしたぁ。

俺はその子を見つめる。

その子は、気にするでもなく俺の周りをテクテク歩いて回っている。

手を後ろで組んだり伸ばしたりして、俺を見ながら歩いている。

俺もその子をずっと見ていた。

・・・・

初めは驚いたが、見ているとかわいらしい感じがする。


その子が立ち止まって、俺のお腹に触れた。

何やら、うなずいている。

ニヤ~としたかと思うと、俺のお腹を軽く殴ったようだ。

ドン!!!

!!!

俺はありえない衝撃を感じた!

そのまま城壁まで吹き飛ぶ。

うめき声すら出ない。


な、何だ・・いきなり殴られたのか?

いや、しかし・・この衝撃・・ありえねぇ。

いったいどれくらい飛ばされたんだ?

俺は動けなかった。


城壁まで吹き飛ばされたのか?

300メートルくらいはあったはずだ。

じいちゃんの防具・・付けてるよな。

なのに、何だこれ?

身体が動かせない。


俺が城壁の瓦礫がれきにうずまっていると、先ほどの子供が近寄ってくる。

俺のところまできて、しゃがみこむ。

「キャハハハ・・・」

子どもの声だ。

笑いながら俺を起こして、座らせてくれた。

俺の方を見ながら、片手をゆっくりと出してくる。

デコピンをするような手を作ると、そのまま俺にデコピンをした。

ドン!!!

俺はまたも吹き飛ばされる。

今度は城の方へ飛ばされたようだ。


城の壁にめり込んで、そのまま動けない。

意識はかろうじてある。

だが、どうすることもできない。

なんだ?

それだけしか考えれなかった。

俺は動けないまま、また近づいてくる子供を見ていた。

まともな感情が沸き起こってこない。

ダメージが半端でないようだ。

ステータスを見る余裕すらない。

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