第282話 ギルマス、ちょっと期待し過ぎなんじゃないのかな?
王宮を出て、俺はフレイアと分かれ、1人ギルドへ向かう。
ギルマスが来てくれと言っていたからな。
フレイアは家に帰って、ばあちゃんのお茶が飲みたいようだ。
さて、ギルドへ向かう少しの間に俺はライセンスカードを確認してみる。
アニム王もギルマスも、報酬がどうのこうの言ってたからな。
このシステムになってから、お金がほとんど要らないんだが確認してみる。
・・・・
・・・
アホだろう。
何だ、この額は。
ギルドからは6000万ギル。
帝都からは1億ギルが振り込まれていた。
どうとでもしてくれ。
もう確認するのがバカらしくなってきた。
そういえば、ゲームなんかでもある程度成長するとお金なんて必要なくなるしな。
特殊なゲームを除いては。
ただ、嫁に好き勝手に使われるのは嫌だな。
それがすぐに頭に浮かぶ。
ギルドに到着。
ギルドに入ると、かなりの人がいる。
大都市になったんだ・・凄いな。
受付の方へ向かって行くと、ギルマスが俺を見つけてくれた。
手を挙げている。
「テツ君、こちらだ」
そう声をかけてくれて、奥の部屋へ案内された。
部屋に入ると席に座るように
俺はそのまま着席。
真正面にギルマスが座って話し始めた。
「テツ君、今回の依頼を引き受けてくれて本当にありがとう」
ギルマスが頭を下げていた。
「い、いえ・・そんな、ギルドマスター・・顔を上げてください」
俺は焦ってしまった。
「いや、感謝しきれない」
ギルマスがまだ言っている。
「テツ君、君が行ってくれなければ、神官か政務官の誰かが行くことになっていただろう。 そして、高い確率で接触できないに違いない。 まぁ、接触できなくても、真剣に祈りを捧げると不思議と大丈夫みたいなんだが・・そういうシステムがあるのかもしれない」
ギルマスが一息ついて、続ける。
「だがね、テツ君はフェニックスの羽を持っているだろう。 俺は、これが今までとは違うと思っている。 もしかしたら、クイーンバハムートと直接接触できるかもしれない」
ギルマスの声が弾んでいた。
おいおい、ギルマス。
なんか興奮してないか?
クイーンバハムートとの接触って、それほど凄いのか?
何か不安になってきたぞ。
「ただね・・」
ギルマスが俺をしっかりと見つめ、切り出してきた。
「ただね、テツ君。 クイーンバハムートの領域に入るときには、単独で行ってもらいたいのだよ」
!!
「お、俺1人でですか?」
俺は思わず口から言葉が出ていた。
ギルマスはゆっくりとうなずく。
「テツ君、フェニックスの羽を持っているのは君だけだろう」
ギルマスが俺を見つめる。
!
俺もそれで理解した。
資格というか、不純物を混ぜると余程のことがない限り、良い反応が期待できない。
相手は、その姿すらも確認されていない存在だ。
だからこそ、俺が1人で行く必要があるのだろう。
「ギルドマスター・・あまり期待しないでくださいよ」
俺は笑いながら答えた。
ギルマスが後ろを向いて片手を挙げる。
すぐにエレンさんが入ってきた。
手にはコートのようなものを持っている。
「テツ君、せめてもの気持ちだ。 これを受け取ってくれ」
ギルマスがそう言うと、エレンさんが俺にコートを渡してくれた。
!!
とても軽い。
「そのコートは、魔法が組み込まれていてね。 ほとんどの魔法攻撃を排除する。 それに装着者の環境、つまりは体感温度だが、常に一定に保ってくれる。 行く場所が極寒の地らしいからね。 よろしく頼むよ」
ギルマスはそう言うと握手をしてきた。
俺もギュッと握り返し、コートのお礼を言った。
そのまま俺はギルドを後にする。
コートはアイテムボックスにしまった。
俺の背中を見送りつつ、エレンがギルマスに話しかけていた。
「ミラン・・テツ様はいつも大きな仕事をされますね」
「あぁ、そうだな。 だが、本人はそれを自覚していないだろう」
ミランがそういうと、エレンは笑いながら答える。
「フフ・・だからこそ、信用を得るのですよ。 あなたにしてもアニム様にしても・・」
ミランはそれを聞きつつ、これからのことを考えていた。
いろんな種族が現れてきた。
今まで通り不干渉国交で成り立つのかどうか。
成り立つなら交流もあるだろう。
・・・
だが、そうならなかった時・・覚悟をしないといけない。
そして、時間を経て邪神王の種を育ててしまうだろう。
その繰り返しから、人は脱出し成長することができるのだろうか?
同時期に、同じようなことをアニム王も考えていた。
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