第277話 嫁という、俺目線で見た女
俺の母親、みんながばあちゃんと呼んでいる人だが、フレイアも知っての通り、とても面倒見がよく気の毒なくらいだ。
俺が優くらいの時に、ばあちゃんの守銭奴の姉に
その姉は手数料が欲しくて実の妹を騙したという。
今は縁が切れて、俺もすっきりしてるけどな。
じいちゃんが定年になって、その株が50倍になっていたから老後は安心なんて言っているけど、当時はとてもしんどかったそうだ。
何が言いたいか。
俺の家はとても貧乏だったんだ。
この世界になる寸前までも裕福とは言えない。
そんなことを言っていると、フレイアが国が国民の生活と安全、教育の面倒を見るのは当然の義務だろうと突っ込んできたが、俺たちの世界ではそうなっていないようだと説明。
話を続ける。
そんなあまり裕福でない生活が続いていたので、俺も就職するのに自衛官を選んだんだ。
お金がかからないからな。
まぁ、30歳で体調を崩してやめてしまったが。
それで整体を勉強して患者さんに紹介してもらったのが、今の嫁だ。
「うん、うん。 それで?」
フレイアが少し前のめりになりながら聞いてくる。
こういった話って、女の人は好きなのかな?
まぁいい。
結婚当初は普通の嫁だったんだ。
まぁ俺もわからなかったが。
お金のこともそれほどうるさくなかった。
子供が出来て変化したような気がする。
それで子供ができるまでのことだ。
嫁の身体が
結果、ここが最悪だったが、KI病院なんて小綺麗な病院だ。
注射をいっぱい打ってやっと妊娠したが、多胎だという。
俺には知識もなく産婦人科だ。
男は関係ないと思っていたし、嫁が勝手に選んできた病院だからわからなかったんだ。
その恐ろしさが。
「え? 何が恐ろしいの?」
フレイアが言う。
「妊娠した時に、お腹の中では双子以上は苦しいみたいなんだ。 赤ちゃんの命の危険がある。 今ではそれ以上は増やさないという話は後で聞いたんだが」
俺はそう説明しながら続ける。
ちなみに産婦人科というのは女性専用の病院だとも説明。
多胎妊娠で3つ子だったんだ。
俺はアホだから、喜んだよ。
でも、ちょっと知識があれば喜ばない。
結果は全員死産になってしまったが・・。
緊急切迫早産で運ばれた大学病院で、どこの病院で治療を受けていたのかと聞かれて、KI病院といった瞬間の医者の顔が忘れられない。
絶対にダメな病院だったんだ。
俺も声もあげれない子供が次々死んでいくのを目の前で見たよ。
後で報告すると、KI病院の医者は、さも悲しそうに演技してたけど、結局はお金だったんだなと思ったね。
きっちり料金は取られたよ。
さて、ここからが今につながるんだが、しばらくして優が誕生。
大学病院に通いながら生まれた。
ほとんど自然に生まれた感じだな。
とても喜んだよ、俺も嫁も。
そしてまた、赤ちゃんのお世話がこれほど大変だとは思わなかった。
俺は、自分達の社会システムでは比較的自由な時間がある職種なんで、ほとんど子供の世話を、おっぱいを吸わせる以外はしたんじゃないかな?
そのうち颯が生まれ、凛も生まれる。
颯が生まれた辺りから、嫁が自分の仕事をやめパートなんかの仕事をし出した。
フレイアにパートって何って聞かれたが、正規雇用でない仕事だと教える。
嫁が働いてる間の子供の面倒は、ばあちゃんとじいちゃん、そして俺が仕事の合間に見たりしていたよ。
嫁がパートなんかになっても、それほど変わらなかった。
家の仕事なんか今でもそうだが、トイレや風呂掃除なんかほとんど俺がしているしな。
まぁいい。
で、凛が出来てじいちゃんが定年になり、新しい家で2世帯で住むようになったんだ。
嫁は1円の金も出してないぞ。
だが、口は大いに出す。
新しい家に住んでから、嫁は朝起きて来なくなった。
俺が先に起きる。
子どもたちが起きてきても、母親である嫁は起きてこない。
子どもたちが学校へ行くギリギリに起きてきて、パンを焼く程度だ。
見かねた俺が食事を作ったりもしていたが、それではやはりダメだろうと思いながら見ていた。
それがずっと続いている。
それで、たまには子供より早起きして、起きてきたら食事が出来ているって状況を一度くらいしたらって言ったら始まったよ。
お前の稼ぎが少ないからって。
「え? それっておかしくない? 夫婦なら一緒に頑張って生活するものでしょう?」
フレイアが突っ込む。
いやいや、もっともですがそうではないのですよ、うちの嫁は。
俺が、プライドだけは貴族なんだろうと言うと、フレイアは納得してくれた。
それで俺という媒介があって、タダで新築の家や車が手に入ったんだ。
逆算すれば、それだけのもののローンを払っての手取りだと思えば、俺の稼ぎは普通だと思うんですけどって言っても無駄だったね。
子どもにまで、パパみたいな人になってはダメだからね。
お金を稼げない人はダメだからねって、何年も毎日言われ続けてきたよ。
俺も体調崩して正規の職を辞めてから無理するとダメなんだが、新聞配達をしようと思った。
朝2時半に起きて仕事をする。
帰って来るのは6時くらい3時間位の仕事なんだけど、冬なんて凍えて帰って来てもあったかいお茶すらなく、寝ているんだものなあの嫁。
そんなのが繰り返されて、あぁ、こいつって自分さえよければいいんだって思うようになったよ。
フレイアも、うんうんと一段と目を輝かせて聞いている。
ただ、自分には遠慮なくお金を使うんだ。
車って移動する乗り物も、ランクを落とせば安く済むのに嫌だとか。
化粧品もわざわざブランド使わなくてもいいだろうと思う。
ばあちゃんなんかは、女の人はそういうものだよと言っていたが俺には理解できない。
身の丈に合った生活をすればいいんだよ。
それができないような育ち方をしたのだろうな。
お義母さんもよく似ているが、まだマシな考えを持っていると思う。
また、アイドルのファンクラブに入ったりして、たまにライブに当たったらお金をふんだんに使っていたよ。
それに友人達と平気で外食するしね。
え、俺の食事?
俺は自分で食事は作ってますよ。
夜だけは子供の残りをいただく感じです。
俺の親が建てた家で、俺が身を小さくして暮らしていましたよ。
それでばあちゃんが見かねて、少し援助をしてやろうと言ってくれたんだ。
それも当たり前のように嫁はもらっていたね。
あんたの子供の稼ぎが少ないから当然って感じだな。
・・・
「テツ、よくそんな女に耐えているな」
フレイアは興味深そうに聞きながら言う。
そして、世の中の俺と同世代のパパさんは、もっとひどい扱いを受けている人もいるだろうというと、さらに驚いていた。
でもね、ただ家の外での顔はいいんだよ。
それに子供は大事にしている。
これは本当だ。
社交的といえばそれまでなんだが、浪費し過ぎるってほどでもないから始末に悪い。
・・
そこまで話したら帝都に到着したようだ。
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