第278話 いろいろ転移してきているんだな



「テツ・・もっと聞きたいわ」

フレイアが目をキラキラさせて、残念そうな顔をしていた。

「また、機会があったら話すよ。 まだまだいっぱいあるんだ」

俺も少し話せてスッとしたよ。


早かったな。

時間は11時45分。

これなら、移動は飛行船の方が楽だな。

ただ、新しい発見などはできそうにないが。

俺はそんなことを考えながら、飛行船から降りる。


昇降装置を使ってギルドのフロアへ移動。

ギルドのフロアにはかなりの人がいる。

受付に行くと、エレンさんが俺たちを見つけてくれた。

「あら、テツ様、おかえりなさい。 ミランは王宮へ行っております。 お話はそちらでされると思います」

エレンさんはにっこりと微笑みながら話してくれる。

こうやって出迎えてくれる人って、いいな。

俺はホッとした。

しかし、俺の後ろでは危険な感じを受けるが。

ま、そんなことよりも今は王宮へ向かおう。


俺たちは人混みを抜けてギルドを出る。

すぐに王宮に到着し、入り口で係の人に取り次いでもらった。

どうやら会議室で皆集まっているようだ。

係の人が珍しく話してくれて、かなりの時間会議室に入りっぱなしだという。

そんなに大事なことなのか?

というか、俺が行っていいのか? 

かなり不安になる。


会議室に到着し、係の人が扉を開けてくれる。

「テツ様とフレイア様をお連れいたしました」

係の人がそういうと、扉を閉め退出して行く。

アニム王がねぎらいの言葉をかけてから、俺たちに話しかける。

「急に呼び出してすまないね」

アニム王は俺たちに席につくようにうながしてくれた。


俺は座りながら、会議室のメンバーを眺めてみた。

・・・・

アニム王、ギルマス、騎士団員3名と、騎士団長。

王宮の重鎮だろう、7名いるな。 

名前は知らないが。

後は、ルナとウルダ。

ルナは、俺が席に座るときにこちらに手を振ってくれていたが、そんな雰囲気じゃないぞ。


ん?

ウルダの横にいるのって、ドワーフじゃないのか? 

2人いるぞ。

一体何があったんだ? 

変に緊張してきたな。

俺がそんなことを思っていると、ミランが話し始めた。

「では、テツ君も来てくれたので、続きを話したいと思います。 先ほども言った通り、我々のいた世界の住人たちが、それぞれの適した地域に転移してきております。 今まで通りであれば、問題なく国家同士の付き合いができると思います。 ですが、この星の住人との接触でどうなるかわかりません」

ミランはそこまで一気に話していた。

皆、黙って聞いている。


ミランは続ける。

「今のところ、調査でわかっているのはこの地域です」

テーブルの真ん中に、ギルドのフロアにあるような球体のホログラムが現れた。


ミランの言葉に合わせて、地域が赤く表示される。

「今、我々がいる帝都がここになります。 ドワーフ族がこの地域。 そして、新たに分かった魔族がこの地域、精霊族がここ、魔導国らしきところがここ。 そして、クイーンバハムートのいるところがこちらになります。 また王国と違う国の所在や存在は不明です」

そうやって説明しているのを俺も聞いていた。

地域が提示されるたびに、議場がざわめく。

「魔導国だと・・」

「あの魔導士か・・」

「クイーンバハムート・・いるのか」

「まさかな・・」


クイーンバハムートと言ったとき、一瞬皆が固まったな。

それに、魔族? 

アストーのいたところか。

そう思いつつも、ミランが魔族の地域を言った時には北米大陸が赤く表示された。

精霊族と呼ばれる地域は南米。

魔導国と呼ばれるところは、ドワーフのところから北西方向へ行ったところにあった。

次のクイーンバハムートだったっけ?

この地域は南極だ。

大雑把な見方だが、それぞれがその地域を拠点としているのだろう。


ミランが場内を見渡して、静まるのを待っていた。

「後、少数民族や国家を持たない種族は、どこに現れているのかはわかりません。 ただ、獣人などの種族は我々に隣接したところ、フェニックスの領域、ここにいると思われます」

ミランがそういうと、場がざわついた。

「フェニックスだと・・」

「まさか、神鳥が・・・」

ザワザワしてるところでアニム王が言葉を発する。

一瞬で静かになった。

「まだ、存在が確認されただけだが、これから調査団とともに交流が確立できるようにおこなっていきたいと思っている」

アニム王の横でミランが何か言葉を出しにくそうにしているようだ。


「ミラン、他に何かあるのか?」

アニム王が静かに聞く。

「いえ・・確実な情報ではないのですが、急速に街が各地域で建設されつつあります」

「ふむ、その街が我々の民族の転移か、地球の住人か、それとも共同体なのか違うのか、それがよくわからないと言ったところだね」

アニム王は表情を変えることなく言う。

「はい、その通りです。 ただ、魔族の近くの街にレイドルド帝国の住人らしき人たちがいたとの報告もありました」

ミランがそういうと、アニム王の表情が少し緩んでいた。

周りの重鎮たちから言葉が漏れる。

「転移してきていたのか・・」

「うむ・・」

ただ、目が点になっているおやじもいるぞ。

レイドルド帝国・・いろいろあるな。 

俺は気軽にそんなことを考えていた。

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