第273話 アストー
聞けば、魔族界からの逃亡者だそうだ。
別に罪を犯したわけではない。
ただ、無理やり結婚させられそうになり飛び出してきたという。
前の世界も消滅し、この新しい場所に転移できたことでホッとしていたところ、いきなり俺が鑑定したので警戒。
そのため、
・・・
・・
「だから、俺を疑ったのですね」
アストーはうなずいていた。
俺が余計なことをして、勘違いさせてしまったらしい。
申し訳なかったな。
俺はそのことを謝り、無事に誤解も解けたようだ。
・・・・
アストーは話すだけ話したら、戻っていった。
俺も後少しは寝られるだろう。
ドアを閉め、もう1度ベッドにもぐり込む。
・・・・
・・・
すぐに朝が来た。
時間は6時前だ。
起きるには起きられたが、夜中に起こされたからな。
少ししんどい。
さて、朝食でもいただきにいきますか。
服を着て、部屋の外へ出る。
フレイアも起きてくるまではそっとしておこう。
俺はそう思って食堂のところへ向かってみる。
・・・
まだ、準備中らしい。
少し外を散歩してくるか。
外へ出てみた。
天気はいいようだ。
藤岡のところの街もかなり変わったんじゃないか?
何せ、魔法で街の景色が簡単に変わる。
こりゃ、後で藤岡の場所を聞かなきゃわからないな。
そんなことを考えながら、街並みを見て回っていた。
・・・・
やはり、帝都の街の雰囲気に似ている、そんな感じだ。
まばらに人を見かけるが、みんな元気よさそうだ。
この街は、前に来たときも魔物の被害を受けてなかったしな。
運が良かったのだろう。
だが、適応は早いな・・そんな風に思いながら俺は街を眺めている。
時間は6時30分前。
そろそろ朝食が食べられるだろう。
俺は宿泊施設に戻って行く。
宿泊施設に到着し中へ入ると宿泊者だろうか、何人かがくつろいでいた。
フレイアもソファで腰かけて何かを飲んでいるようだ。
「テツ~」
フレイアが手を振って挨拶してくれる。
その声に向かって俺は歩いて行く。
「おはよう、フレイア」
「おはよう。 テツ、どこへ行ってたの?」
俺は朝食まで散歩に行っていたと伝え、二人で食事に向かう。
朝食はバイキング方式らしく、ワンプレートの皿を持っていろいろ食べてみた。
・・・・・
・・・
「食事の後、藤岡のところへ行きたいんだが、どうする?」
フレイアに聞いてみた。
フレイアは珍しく、街を散策したいと言う。
「この街は周りに森もあって感じがいいの。 少し散歩してみるわ」
「そうか。 じゃあ、またお昼ごろにギルド辺りででも落ち合おう」
俺はそういうと食堂を出た。
部屋に戻り、忘れ物がないかを確認して受付のところへ行く。
アストーが忙しそうにお客の対応をしている。
俺たちはそれを見ながら少し待った。
・・・・
「あ、テツ様、ご出発ですか?」
声をかけられてアストーのところへ向かう。
「アストーさん、ありがとうございました」
俺はライセンスカードを出して手続きを済ませる。
アストーが俺に近づいてきて小さな声で言う。
「テツさん、あの・・失礼しました。 私のことは、できればご内密に・・」
モジモジしながら上目遣いで俺を見る。
アストー、わざとか?
その仕草・・色っぽいぞ。
「アストーさん、アニム王はご存知なんですか?」
俺は聞いてみる。
アストーはもちろんです、とうなずいていた。
それが確認できれば問題ない。
俺も、誰にも言いませんよといって宿泊施設を後にした。
フレイアが俺に聞いてくる。
「テツ、何かあったの?」
・・・・
俺は一瞬迷ったが、フレイアにだけは言おうと思った。
いきなり約束破ったな。
「あぁ、実はな・・」
アストーが魔族であること。
そして、その魔族界からの罪による逃亡者ではないこと。
アニム王も知っているということなどを話した。
・・・・・
・・
「なるほど・・私も、我が精霊に誓って他言はしない」
フレイア、重いぞ。
「そうか・・ありがとう」
フレイアと別れてギルドへに向かう。
時間は8時前だ。
ギルドに入り受付に行く。
ディアナを呼び出してもらう。
待ち時間もなく、すぐにディアナが現れた。
「おはよう、テツ君。 昨日ぶりだね」
・・・
「おはようございます」
もしかして、ギャグなのか?
「で、今日はどんな要件なのかな?」
ディアナが聞いてくる。
「はい、ディアナさんならご存知だと思いまして、実は藤岡の住んでるところを知りたいのです。 今の街は、私の知ってる街並みと全然違っているもので・・」
「あぁ、知っているとも」
ディアナはそういうと、ボードパネルを取り出し地図を表示させる。
なるほど・・エレンさんが使っているのと同じだな。
「テツ君、ここがギルドだが、ここから歩いて・・」
ディアナが説明してくれた。
立体的に街並みが見えて、どうやら歩いて5分も行けば到着できそうだ。
「わかりました、ディアナさん。 ありがとうございます」
俺はお礼を言ってギルドを後にする。
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