第271話 レベル35って・・


何でも、ディアナたちは藤岡の街に直接転移してきたということだ。

辺りを見渡してみても、壊れているところがない街だったという。

街をしばらく歩いていると、住人たちが集まってくる。

見慣れない格好で、怖がられるどころか興味を持たれいろいろ話をしていたが、どうもうまくいかない。

そんな時、藤岡が現れてあれこれと調整をしてくれ、魔物たちの対策も兼ねて街づくりを開始したそうだ。

建物や城壁なんかは魔法でバンバン建つので、計画的にいろいろ建設。

そのうち帝都の調査団がやって来て、交流が始まったという。

・・・・・

・・・

・・

「なるほど・・藤岡がよく動いてくれたのですね」

俺はうれしくなった。


「うむ。 彼には感謝の言葉しかない。 それに、初めからレベルが20を超えていたからな。 この星の住人にしては突出しているので、遠慮なく手伝ってもらったよ」

ディアナはうれしそうに話している。

なるほど。

俺と一緒にレベルを調整したのが役だったんだな。

よかった、よかった。


「おっと、もうこんな時間だ。 私も寝ないとな・・テツ君、今日はありがとう。 またな」

ディアナはそういうと、奥の部屋へ移動していった。

時間は23時過ぎ。

俺も受付の女の子にお礼を言って、ギルドを後にする。


俺達は紹介してもらった宿泊施設へ向かう。

フレイアに掲示板について聞いてみた。

「フレイア、何かいい記事あった?」

「いや、特に変わったのはないけど・・ギルドにいた連中、ずっと私の方を見ていて気持ち悪かったぞ」

フレイアがいやそうな顔で話していた。

俺は笑いながら聞き流す。


少し歩くと宿泊施設に到着。

シンプルな作りだが、石造りのきれいな建物だった。

入り口のドアは手動らしく、手で開けた。

「すみませーん。 ギルドから紹介されてきた、テツというものですが・・」

俺は入りながら声を出してみる。

「はーい」

すぐに返事が返ってきて、一人の中年? くらいの女の人が出迎えてくれた。

「ようこそいらっしゃいませ。 テツ様とフレイア様ですね」

女の人は気持ちのいい笑顔で対応してくれる。

「すみません、こんな時間にお邪魔して・・」

俺は本当に恐縮した。

・・・

ん?

この感じ、この女の人・・まさか。

そう思って、注意深く見てみた。

レベル35。

俺がそう鑑定すると、女の人が荷物を持ちつつ俺の方を向いた。


「お客さん、あまり人をのぞくものじゃありませんよ」

!!

「あ、いえ・・すみません」

俺は素直に謝ることにした。

フレイアは何? って感じで俺を見ていたが、気にすることなく女の人について行く。

「さぁさ、こちらへ・・」

そのまま部屋に案内される。

フレイアとは隣同士の部屋だ。

女の人は先にフレイアを案内して、次に俺を部屋に案内してくれた。

「テツ、また明日ね」

フレイアが軽く手を振って部屋に入って行く。


俺も部屋に案内されて、女の人が荷物を置くなり俺の方を向いた。

「お客さん、いえ、テツさんでしたね・・どうして、私を鑑定したのです?」

女の人が聞いてくる。

・・・

俺は一瞬迷ったが、正直に話した。

「勝手に鑑定したことは謝ります。 すみません。 ただ、手荷物を持ってもらう時に、何か違和感を感じたので鑑定させてもらいました」

女の人は、俺の言葉を聞くと力を抜いてリラックスしたようだ。

「はぁ・・そうだったのですか。 いえ、私はまた何か盗賊の類なのかと思いましてね、警戒しました」

女の人はそう言って、笑ってくれた。

いや、笑うところか?


「いえ、こちらこそ失礼しました。 ですが、どうして鑑定したってわかったのですか?」

俺は不思議だった。

「あ、それですか。 私はスキルで自分の状態をベールで包んでいるのです。 それを突破してくるとわかるんですよ。 でも、まさか突破してくる人がいるとは思ってもみませんでしたが・・」

女の人はそういうと、俺をジッと見つめている。

「・・・・」

俺も言葉が見つからない。

苦笑いしかできなかった。


「お客さん、本当に失礼しました。 私が勝手に勘違いしてしまったようで・・」

女の人は深々と頭を下げていた。

「いえいえ、こちらこそ勝手に探るようなことをしてしまって、すみません」

俺が言葉を返していると、女の人がチラっとこちらを見て言う。

「あの・・それで何か私から見えましたか?」

不安そうに聞く。

「え? いや、レベルしか確認してませんが、何か?」

「そうですか・・わかりました。 では、ごゆっくりお休みください」

女の人はそういうと、ゆっくりと扉を閉めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る