第265話 こいつ、マジか!!


「メサイアさん、それでこれからどうされるおつもりですか?」

俺は聞いてみた。

「テツ殿、メサイアでいいですよ」

「では、俺もテツと呼んでください」

俺がそういうと、メサイアがてのひらを前にして振る。

「いやいや、そういうわけにはいきません。 テツ殿と呼ばせていただきます。 さて、これからですが正面から入って行こうと思います」

メサイアは隊員たちに指示を出していた。


「メサイアさ・・メサイア、俺たちもついていってもいいかな?」

「もちろんですよ。 心強いです」

メサイアは笑顔で答えると、早速城壁に向かって歩いて行く。

メサイアって慎重なのか大胆なのか、よくわからないな。

俺はメサイアの後ろ姿を見ながら思う。


城壁の入口に到着するとメサイアが声を上げる。

「私は、帝都騎士団第三隊長メサイアだ。 貴殿の町の上空を騒がせたのはおびする。 町への入場を許可してもらえないだろうか」

張りのある、よく透る声だ。


城壁の上には狙撃兵がこちらに銃口を向けていたが、どうやら撃つ気はないようだ。

入り口が開き、中から男が出てきた。

「こちらへどうぞ」

男は軽く頭を下げると俺たちを中へ誘導してくれる。

男はフレイアを見て一瞬変な顔をしたがそのまま中へ全員入っていった。


男はカズヤと名乗った。

「魔物に乗って来られたということは、異世界の方ですか?」

カズヤは丁寧に聞いている。

俺は注意して見た。

カズヤ:レベル26、メサイア:レベル31。

問題ないな。

そう楽観的な見方を俺はしていた。

メサイアとともに来ていた騎士団2人もレベル28ある。


メサイアはカズヤと歩きながらいろいろと会話している。

・・・・

・・・

このカズヤという男はまともな感じがする。

俺は会話を聞きながら思っていた。

この町の防衛のためにワイバーンを撃ったり俺たちを狙撃したのだろうか?

そう思っていると、建物の中から女の人が現れた。

かなりやつれているような感じだ。

フラフラしながらメサイアの方へ近づいてくる。

「あ、あぁ・・騎士団の方ですか・・良かった」

女の人は涙を流しながら、その場で座り込んでしまった。

メサイアが大声で挨拶したのが聞こえたようだ。


メサイア・・まさか、こういった状況を想定していたのか?

まさかな。

俺はメサイアを見つめる。


メサイアはその女の人に近寄って行き、片膝をつき優しく話しかける。

「どうしたのです?」

女の人は言葉にならず、ただ泣いていた。

他の建物からも同じような感じの女の人がゾロゾロと出てくる。

・・・・

皆がメサイアのところに集まって来て泣いていた。

メサイアもうなずきながら、女の人たちの背中を撫でたりしている。


「カズヤさん・・でしたか。 これは、どういうことでしょうか」

静かな口調で話すがメサイアは明らかに怒っている。

「すみません。 実は・・」

カズヤは口ごもっている。

その時、奥の建物から歩いてくる人がいた。

軽い足取りでメサイアの方へ向かってくる。

「テツ・・あいつ」

フレイアが俺に小声で話しかけてくる。

俺も黙ってうなずいた。

レベル28のやつだ。


「よう、カズヤ。 その銀色の鎧をつけてるねえちゃんは、異世界人かい?」

「キョウジさん・・」

カズヤがキョウジの方を向く。

「いやいや、ここでは隊長と呼べって言っているだろう」

キョウジはニヤニヤしながらゆっくりと近づいてくる。

泣いていた女たちが泣き止んで、おびえていた。

メサイアは一瞬で状況を理解したようだ。


キョウジがメサイアに近づいて行く。

メサイアの手前2メートルくらいのところだろう。

その場で立ち止まり、メサイアをめるように見ていた。

キョウジはニヤ~としてうなずく。

「う~ん、いいねぇ。 こんな気の強そうな女は好みなんだよ。 ビンビンくるねぇ」

卑猥ひわいな感じのする笑いを込めてメサイアをより強く見つめる。

メサイアは少し震えている。

「貴様・・どうやら話ができるタイプではないようだな」

周りを威圧するだけの圧力がある言葉で話していた。


キョウジが一歩踏み出そうとすると、メサイアが言う。

「それ以上近づくと斬る!」

その言葉を聞くと、キョウジはうれしそうに笑った。

遠慮なくメサイアに近づく。

メサイアが抜刀し、キョウジを斬りつける。

ヒュン!

キョウジが斬られた! と思った。

残像だ。

!!

マジか!

あの男、レベル28だよな。 

それに比べて、メサイアはレベル31だ。

レベル差があるのにいったいどういうことだ?

これには俺も驚いてしまった。

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