第266話 この男・・なんだ?


メサイアの背後にキョウジがいた。

メサイアの髪を手に取り、思いっきり匂いをいでいる。

スゥーーーー・・!

「ん~いいねぇ・・ねえちゃん、名前は?」

メサイアも驚いただろう。

だが、即座に振り返って剣を振るう!

ブン!

またもキョウジの残像だった。

だが、キョウジの頬に赤いスジが出来ていた。


キョウジは初めの位置に戻っている。

「ねえちゃん、やるねぇ。 あぶねぇ、あぶねぇ・・」

キョウジは頬に軽く触れメサイアを見る。


俺は驚いて見入っている。

こいつ、レベルやスキルをフルに使っているのだろう。

やっかいなやつだ。

俺はフレイアに念話を送る。

『フレイア・・攻撃を受けたら戦闘開始だ』

『あぁ、わかっている』

『城壁の上に5人いる。 おそらく銃を持っているだろう・・迎撃できるか?』

『問題ない、任せて!』

フレイアが力強く言ってくれる。

俺は安心した。

俺も気持ちを引き締める。

異世界人と思われる女たちは、とりあえず放置でいいだろう。

俺は覚悟を決めて、メサイアを見ていた。


メサイアが剣を収め、キョウジを見据みすえる。

「失礼した。 貴殿の町を騒がせたことはびよう。 すまない」

メサイアが頭を下げて続ける。

「だが、この状況はなんでしょうか? とても普通の状態とは思えませんが・・」

メサイアが怒りを抑えつつもたずねていた。


キョウジは目を大きくして嬉しそうに返事をする。

「いやいや、ねえちゃん、いいねぇ。 普通じゃないのは、当たり前じゃないのか。 俺たちがこの街に来たときには、こんなものだったぜ」

キョウジがそういうと、メサイアがうずくまっている女のところへ歩いて行った。

そして、片膝をつき優しく語り掛ける。

「あの男の言うことは、本当なのですか?」

聞かれた女は、震えながらも首を横に振っていた。

言葉は出ないようだ。

「・・・・」

「おいおい、ねえちゃん・・そんな女の言うことを信じるのかい?」

キョウジは両腕を広げて、やれやれという感じだ。


メサイアがゆっくりと立ち上がり、キョウジの前へ移動していく。

「この町の隊長でしたね・・あの者たちを引き取らせてくれませんか?」

「はぁ? ねえちゃん、いきなり人の町に来て住人をかっさらうのかい? 強盗じゃねえかよ」

キョウジが言う。

確かにキョウジの言う通りだな。 

俺は思わずそう思ってしまった。

メサイアもいきなり斬りつけたしな。


「無論、タダというわけではありません。 帝都で使用できるお金ですが、一人につき1000万ギルお支払いしましょう」

メサイアがキョウジを見つめつつ話している。

キョウジはその目を見返し、少し考えるような顔をして言う。

「金ねぇ・・どうせ使うところもねぇから必要ないしなぁ。 それにこいつらが地球人に何をしたか知っているのか?」

地球人?

俺はキョウジの言葉が引っかかった。

メサイアは怒りで聞こえていないようだ。

キョウジが下を向き、ゆっくりと顔を上げてメサイアを見つめる。

メサイアが一瞬ビクッとしたようだった。


キョウジがニヤ~として片手を挙げ頭をいている。

「そうだなぁ・・ねえちゃんが俺の女になるんなら考えてもいいぜ」

そういうと頭に乗せた片腕を振り下ろした。


それが合図だった!

城壁から狙撃を受ける!

だが、俺とフレイアは準備万端だ。

着弾と同時にフレイアが矢を同時に3本放つ。

俺達はシールドを展開しているので、銃弾ははじいてくれる。

その銃弾は俺たちの周りに落ち、小さなクレーターが出来ていた。

メサイアにもシールドをほどこしていたので問題ない。


フレイアの放った矢は、白く光る航跡を残し狙撃者へ向かって行きそれぞれに命中。

パァッと光ってはじけていた。

俺の集中力はかなり高まっていたのだろう。

何か銃弾が見えるような気がしたので、飛んでくるものを切ってみた。

まさかと思ったが、それが銃弾だったようだ。

ギン!!

きれいに切れて周りで小さな爆発が起こった。

その一瞬の間に狙撃兵が3人消滅。

フレイアの放った矢だ。


遠い城壁のところから2人がこちらに向かって走ってきているようだ。

メサイアの騎士団隊員2人がそちらへ対応しに行った。

カズヤは動かずにその場でいる。

キョウジはやや驚いていたようだ。

「おいおい、狙撃兵がやられたぞ。 カズヤ、お前も戦え!」

キョウジはそういうと、カズヤが答える。

「キョウジさん・・もうやめましょうよ。 あなたが凄いのは知ってます。 ですが、こんなやり方では・・」

カズヤは震えながらしゃべっていた。

「チッ! だらしねぇ。 まぁいい。 だが、今はこのねえちゃんが大事だ。 もう我慢できねぇな」

キョウジはよだれを流すんじゃないかというほど、うれしそうな顔をしていた。


俺はもう1度、キョウジを見てみた。

・・・・

やはりレベル28だ。 

なのに違和感を感じる。

何だ?

スキルか?

俺はそう思いつつも見ていた。

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