第263話 キョウジ
隊長はアサシンなどという職種を選択していた。
まさに隊長のためにあるような職種なのでは? と、思ったりもしていた。
自分はハンターという職種についている。
部下達はアーチャーやハンターになっていた。
隊長の方の組員などは、忍者なんて職種を選んでいたようだ。
職種だけをみると、まるでその人のために用意されている感じだ。
そうやって数日が経過し、城壁の中では人間らしい暮らしができるようになってきた。
特に隊長の成長は凄まじく早かった。
するとある日、隊長の悪い癖があからさまに見えてきた。
そういえば、この人・・この趣味で懲戒免職になったはずだ。
ワック、陸上自衛官の女性隊員を暴行。
現役当時、小隊長はまだまだ入隊したばかりだった。
そんな時、隊長こと先輩はとても親切に接してくれた。
知らないことを丁寧に上手に教えてくれる。
アドバイスもとても適格で、模擬戦闘なんかでも他を寄せ付けなかった。
昇任試験でもすぐに昇任したが、その性格がダメだったようだ。
小隊長は、よくしてくれた先輩を最後まで慕っていたが、今にして思えばどうということはない。
自分も階級が上がり後輩たちに接するようになると、先輩の真似をしているような感じがする。
ただ、部下を指導する能力は先輩の方が上のような気がした。
都心部から脱出した時は自己嫌悪などで心が壊れかかっていて、人恋しかったのかもしれない。
正常な判断はできなかったのだろう。
偶然巡りあった人間にホッとしたのは事実だ。
それが先輩だっただけだが。
今となっては、よくこんな人と一緒に行動したなという後悔の念でいっぱいだ。
それに先輩と一緒にいる反社会組織の2人はどうも好意を持てそうにない。
だが、先輩には単純に戦闘では及ぶべくもない。
それに非常時なので、自分のレベルが上がるまで耐えていた。
ただ相手もレベルが上がり、差は開く一方だったが。
小隊長は3階建ての建物に入る。
最上階に隊長はいた。
隊長の部屋をノックする。
「小隊長、入ります!」
隊長がベッドから起き上がる。
「よう、カズヤ。 何かあったか?」
隊長はゆっくりと服を着ていた。
ベッドにはうつろな目で横たわっている女がいる。
カズヤはそれを見て思わず言葉にした。
「キョウジさん、その女は・・」
キョウジはニヤッとして言う。
「あぁ、異世界人だ。 見た目はいいんだが
隊長は服をすでに着ていた。
「あ、はい。 狙撃手が何か金色の髪を見たとかで発砲したのですが、一応報告をと思いまして・・」
カズヤはそう報告をしながらキョウジを見つめている。
キョウジはまたベッドへ近寄って行き、女の顔をグイッと引き上げて聞く。
「おい、女。 金色の髪というか、そういった魔物はいるのか?」
「あわわ・・うぅう・・」
女はしゃべるのもしんどそうで言葉にならない。
キョウジはチッ! と、舌打ちすると女をベッドに突き放した。
「役に立たねぇなぁ」
そう言うと建物の外へ出て行く。
村の住人は、俺達地球人が7名と異世界人が18名だった。
不思議と子供はいなかった。
男が15名いたが、すべて隊長:キョウジが殺していた。
魔物を倒すとレベルが上がる。
その繰り返しで、異世界人も驚くほどキョウジはレベルを上げていた。
同時に身体能力が普通ではないことを知る。
また個人個人にスキルなるものが発現。
キョウジは黙々と自分の身体に吸収させていく。
ある日、キョウジが
人を倒してもレベルが上がることを確認。
どうやら自分以外の生命体を倒すと、経験値を得られるようだ。
異世界人の女たちに特に気づかれることもなかった。
城壁の外へ魔物などの狩りに行っているときに都合よく亡くなったからだ。
キョウジとカズヤは歩きながら狙撃手のところへ向かっていた。
「カズヤ、さっき異世界人の女に質問した時に、俺を見ていたな」
「・・・」
「ハハハ・・俺が悪魔にでも見えたか?」
キョウジは笑う。
「い、いえ、そういうわけではありません。 ただあまりにも扱いが酷いんじゃないかと思ってしまいまして・・」
「フッ、カズヤ、だからお前はダメなんだよ。 あの異世界人たちが何をしたのか知っているのか? 俺たちがここに来たときに地球人は1人もいなかっただろ。 おかしいとは思わなかったのか?」
キョウジはそう話しながら城壁を登り、狙撃手の所へ来た。
カズヤもキョウジの後を追い言葉を反芻する。
確かに、この街には1人も地球人はいなかった。
たまたまだと思っていたが、違うのか?
カズヤはそこまで考えるとキョウジと一緒に城壁の外を眺める。
「おい、どこで金髪が見えたんだ?」
キョウジが狙撃手に聞くと双眼鏡で眺めていた。
「はい、あの瓦礫の辺りです」
狙撃手の報告を聞きながらキョウジはつぶやく。
「何かいるな・・俺のスキルでもはっきりと把握できないところ見ると、結構レベルのある魔物かもしれん」
キョウジは他の狙撃手にも警戒を怠らないように伝えてくれと、カズヤに言う。
カズヤはうなずき各狙撃手のところへ移動して行く。
キョウジはそのまま城壁をゆっくりと歩いて辺りを索敵していた。
◇
<テツ視点>
俺とフレイアはまだそのまま待機していた。
相手に見られているのがわかる。
動けば気づかれるだろう。
俺はフレイアに念話で話してみる。
『フレイア・・今動けば見つかる可能性がある。 しばらくこのままでいよう』
『うん・・』
フレイアが耳を赤くしながら答える。
『どうしたんだ?』
『い、いや、なんでもない』
フレイアが下を向いてジッとしていた。
◇
<キョウジ視点>
「チッ! 動かねぇな」
キョウジは城壁の上で舌打ちすると、狙撃手から小銃を借り魔力を込めていた。
「あの辺りなんだが・・」
そうつぶやきながらキョウジは迷わず引き金を引く。
ドン!!
魔法を込めた弾丸がテツの方へ向かっていく。
◇
!!
「テ・・!!」
フレイアが叫ぼうとするので俺は手で口をふさぎ、フレイアを抱きしめた。
シールド!!
俺は、自分たちを包み込むボールのようなイメージをして魔法をかける。
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